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敷金減額サービスの日商保 不動産売買仲介事業に本格参入
2024.11.18 16:43
敷金減額サービスを展開する日商保(東京都港区)は10月21日、不動産売買仲介事業へ本格参入。同サービスによる物件の差別化、独自のリーシングデータ分析による賃料査定等で売却時・購入後の物件価値最大化に繋げる。
2011年創業の日商保はこれまでオフィス入居時の敷金を「保証」と置き換えることで、半額~最大0円まで削減する敷金減額サービスを展開してきた。利用料は削減した敷金額の年間5%。ビルオーナーは万一の際に日商保から支払いを受けることで、現金として敷金を預かることなく損失発生に備えることができる。北は北海道、南は九州と全国で展開しており、ベンチャー・スタートアップをはじめ成長著しい企業の利用が多い。またこれらの企業はイニシャルコストを抑える目的で、セットアップオフィスに入居する傾向がある。セットアップオフィスをはじめとするオフィス移転の動向等もリーシングデータとして収集・蓄積。敷金減額サービスと一緒に、オフィスの早期リースアップ、テナント送客、バリューアップ支援などで活用してきた。
同社は保有不動産の売却を見据えた不動産オーナーからの相談が増加していることを受け、物件のバリューアップ提案から売却までを一気通貫でサポートできる不動産売買仲介事業に参入することを決定。営業本部の丸山裕起氏は「不動産オーナーや仲介業者、デベロッパー、ビル管理会社などの不動産業界関係者だけでなく、敷金ゼロ物件を希望するテナントとのネットワークも保有しています。取引先社数は8000社を超えました。その中で、およそ2年前に福岡で事業用不動産の売買仲介業を行ったことがあり、ここで手応えを感じて、さらに準備を重ねての本格参入となりました。当社は前述のネットワークに加え、敷金減額サービスを活用した年分のリーシングデータを活用することができます。『最適な募集条件を分析した賃料査定』や『早期高額売却』の実現が可能です」と自信を見せる。
日商保の強みは「保証」事業を軸に蓄積してきた様々なデータを活用し、物件価値向上を多様な面からサポートできること。一般的なオフィスマーケットのレポートやリーシング調査とは違い、通常オフィスに加えて居抜き、セットアップ、敷金0円とそれぞれ異なるマーケット分析を提供できる。保証導入による利回りアップ事例では、五反田に立地する1988年竣工の既存ビルがある。通常敷金はカ月分であったが敷金ゼロで募集開始したところ、7区画中5区画が成約。敷金ゼロと一部セットアップが物件の差別化に繋がり、早期契約(早期収益化)と単価60%増の賃料アップを実現した。物件の想定利回りは3・70%から5・49%へと上昇した。また昨年恵比寿で竣工したビルの事例では、敷金ゼロで募集開始したところ半年で満室。敷金ゼロとフルセットアップにより物件の差別化が実現し、エリア相場との比較で坪単価が1万4000円高く成約できた。物件の想定利回りは3・3%から5・56%へ上昇している。
丸山氏は「5年前のセットアップと最近のセットアップではリーシングの反響等が大きく異なります。エリア・ターゲット・予算に合わせてセットアップオフィスの企画設計に役立てることができ、敷金減額サービスと一緒にリーシングを行うことで早期満室稼働や高額売却にも繋げることができます。土地建物の購入時やリーシングマネジメントにも活用が可能です。初年度は20件の実績を目指します」と語った。