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森記念財団 東京の「都市力」は世界3位 世界の都市総合力ランキング発表

2024.12.16 11:01

 森記念財団(東京都港区)都市戦略研究所は今月10日、「世界の都市総合力ランキング」の2024年版を発表した。
 同調査は2008年より行っているもので、今年が17回目となる。世界情勢の変化やライフスタイルの変化に合わせて新規指標の追加や指標の更新などを実施。今年は「経済」、「研究・開発」、「文化・交流」、「居住」、「環境」、「交通・アクセス」の6分野、26の指標グループ、70の指標で評価された。
 調査の結果、世界の都市総合力の1位はロンドン、2位はニューヨーク、3位が東京、4位がパリ、5位がシンガポールとなった。昨年からトップ5に変動はなかったが、東京、パリ、シンガポールの3都市は大きくスコアを伸ばし、ニューヨークとの差を縮めた。
 東京は「研究・開発」、「文化・交流」、「交通・アクセス」等の分野が成長した。特に「文化・交流」は前回の5位から3位に浮上し初のトップ3入り。「外国人訪問者数」を伸ばしたほか、レビュー数より満足度を評価する手法に変更した「観光地の充実度」、「ナイトライフ充実度」も躍進している。加えて従来の課題とされていた「ハイクラスホテル客室数」も上昇した。
 一方で、「経済」分野においては「世界トップ500企業」、「上場株式時価総額」の指標がトップ3入りしているものの、円安の影響で東京の強みであった「GDP」、「一人あたりGDP」が大幅に下落。市場規模や市場の魅力の低下が見られた。また、通信速度も評価対象に加えたことで「ワークプレイス充実度」が前回22位から28位に下落。「賃金水準の高さ」が27位、「優秀な人材確保の容易性」が39位でともに下落し、ビジネス環境面での苦戦が窺える。
 「居住」分野を指標ごとに見ると、「小売店舗の多さ」が2位、「飲食店の多さ」が4位。生活利便性の高さにより分野3位を維持した。一方で、オフィス回帰の傾向やリモートワーク率の低下が起因して「働き方の柔軟性」は39位とさらに低下。今後は、欧州各国で進むリモートワークを含めた柔軟な働き方の法制化や、欧州各国に後れを取っている「ワークプレイス充実度」、28位の「ICT環境の充実度」の向上が求められる。
 東京の都市力向上の鍵である「経済」分野の課題について、賃金水準や働き方の多様性といった高度人材を惹きつけるビジネス環境の整備、高い法人税率等のビジネスの困難さが挙げられる。森記念財団理事 明治大学名誉教授の市川宏雄氏は「ニューヨークがコロナによる活動停滞から回復していない一方で、東京はコロナが明けて全体的にスコアが少し上がっている。特に円安が『文化・交流』のスコア上昇に大きく貢献しています。一方、トップ4都市の中で最も『交通・アクセス』の順位が低く、経済や開発、金融の分野では弱みの指標が多い。東京に滑走路を増やすことや、人材育成促進の環境整備が今後求められてくると考えています」とした。




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