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建物の生涯のCO2排出量を可視化 清水建設や阪急阪神不動産も導入
2025.03.24 10:53
不動産分野のCO2排出量は日本全体の排出量の3分の1を占める。この排出量を削減していくために、オペレーショナルカーボン(運用中のCO2排出量)削減だけでなく、資材調達時や建設時に排出するエンボディードカーボンや廃棄時など建物のライフサイクル全体での削減が必要になっている。
そのなかで大手ゼネコンなどにツール導入を進めるのがゴーレム(東京都千代田区)だ。同社は2022年に創業して、CO2排出量計算ツールの「GORLEM CO2」を展開。展開してから3年ほどになるが、清水建設や鹿島、大和ハウスグループ、阪急阪神不動産など大手ゼネコンから大手デベロッパーにまで広がりを見せている。
「GORLEM CO2」は資材調達・製造から解体までライフサイクル全体のCO2排出量を見積内訳書などを読み込むことですぐに算出することができる。排出量の計算は日本建築学会が定める「建物のLCA(Life Cycle Assessment)指針」などに準拠する。
ゼネコンやデベロッパーのメリットは大きい。世界的に脱炭素の取り組みが進むなかで、上場企業に対してはCO2排出量の開示を課す流れがある。特にISSB(国際サステナビリティ基準審議会)の基準に沿って国内のSSBJ(サステナビリティ基準委員会)は3月に「サステナビリティ開示基準」を公表。東証プライム上場企業などは、自社やバリューチェーン全体でのGHG排出量の開示が求められることになる。
ここで問題となるのは、算出の手間だ。野村大輔社長は「自社の排出量を算定し報告するために、これまで膨大なエクセルデータを集計してひとつひとつ手作業で算出を進めていた」という。「GORLEM CO2」を使用することで、この多くの時間と人的リソースを割いてきた膨大な作業の大幅な効率化を図ることができる。
くわえて、ゼネコン同士での競争が始まるカーボンニュートラル設計の技術力のアピールにも活用することが可能だ。大型建築物の木造化はもとより、昨今ではCO2を固定化したコンクリートなどの技術競争も激化する。こういった独自の脱炭素技術によって既存の工法と比べてどれだけライフサイクルでのCO2排出量を減らせるかを示すこともできる。
施主となるデベロッパー側にとっても脱炭素の流れや開示基準の策定により、一層のCO2排出量削減に向けた取り組みが求められる。喫緊の課題となっているのは「算出の効率化」であり、「GORLEM CO2」が果たす役割は大きいものがある。
ゴーレムとしては、この「GORLEM CO2」をスタートラインにしたい考えだ。野村社長は「CO2排出量算定以外の業務や改修工事や土木工事においても、デジタルツールを用いて業務効率化ができる余地が大いにある」と話す。同社としては建設・不動産業界向けの業務効率化支援のツールを総合的に展開していくもようだ。