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三菱地所レジデンスの「Reビル事業」地方初・博多のビルでリノベ完了
2019.02.04 14:18
新聞社保有の印刷工場をオフィスに
三菱地所レジデンス(東京都千代田区)が取り組む、築年数の経過した中小ビル等を再生して賃貸する「Reビル事業」。1月31日、地方初の事例となる「ザ・パークレックス 博多」のリノベーションが完了した。
空室率1%台で推移 あえて好調の博多で
福岡市ではオフィスビルの空室率は1%台で推移しているとされ、貸床の不足が顕在化している。なかでもザ・パークレックス博多が立地する博多区は九州における経済の中心地として確固たる地位を誇り、オフィス市場環境は非常に好調といっていい。
さらに福岡市は国家戦略特区である「グローバル創業・雇用創出特区」として指定されている。多エリアに比較して起業支援が充実しているためスタートアップ企業も多い。三菱地所レジデンスではこうした現状を背景に、これまで供給したReビル物件でIT関連業やデザイン業などのスタートアップ企業から得てきたノウハウを活かし、福岡市での事業展開に至った。
借りたビルをリノベ 価値上げて貸し出す
Reビル事業は、建物を三菱地所レジデンスが賃借し、耐震補強工事などを含むリノベーション工事を実施。建物を再生させたうえで賃貸物件として供給するスキームで、2014年5月から展開している。これまでオフィス、住宅など22物件を事業化(うちリノベーション完了したのは17物件)している。2017年4月には三菱地所(東京都千代田区)及び三菱地所設計(東京都千代田区)にも専門部署を設立し、グループ全体でビルリノベーション事業を強化してきた。今回も三菱地所設計も設計に関わり、グループ3社協業のもとで事業化した。
オーナー使用部分残したままで賃貸
今回リノベーションが完了したザ・パークレックス博多は敷地面積1996㎡、延床面積8514㎡、地上7階地下1階で、新聞社が自社ビルとして保有する。印刷工場として使われていた特徴的な建物で、そのうち地下1階と地上1階の吹き抜けを持つ旧輪転機室(印刷工場)を、12・6mの天井高をもつオフィスとして再生した。1階には飲食店を誘致し、街の賑わいを創出。外構部分は輪転機に絡み合うように配されていたインク管をモチーフとし、新聞印刷拠点の面影を残したデザインとした。建物を所有する新聞社がリノベーションしていない部分を引き続き使用するため、テナント専用エントランスを設置するなど複数導線も確保した。
三菱地所レジデンスは、今後も東京のみならずますます増え続けるであろう「既存ストックの有効活用」という社会的要請に柔軟かつ積極的に応え、倉庫・ホテル・商業ビルといった異なるアセットタイプへの展開を図るとしている。