不動産トピックス

過熱する投資市場の現場から

2006.05.22 16:25

<AM会社インタビュー>エスグラントコーポレーション代表取締役副社長兼COO川田秀樹氏
 米系投資ファンドのDBZCOと共同で不動産ファンド設立 自社開発マンションなど組入れ5年後目処に1000億円規模に
 デザイナーズマンション分譲などを展開するエスグラントコーポレーション(東京都目黒区)は、米系投資ファンドのDBZCOと共同出資で不動産ファンドを設立する。同社の不動産ファンド事業を統括する代表取締役副社長兼COOの川田秀樹氏に方針を聞いた。

―1000億円規模のファンドを目指すそうですが、投資方針は。
川田 当面の目標としては、3年間で500億円の投資を考えています。当社の開発するデザイナーズワンルームマンションが50%、外部から取得するオフィス・商業ビルなどの収益物件が50%の割合でポートフォリオを構築し、5年後を目処に資産規模1000億円を目指します。
―投資対象地域は。
川田 開発物件に関しては首都圏が中心で、駅から徒歩5分〜10分圏内になります。外部から取得する物件に関しては首都圏の他、全国主要都市を考えています。ただし、今後は関西エリアへの進出を検討しているため、関西での自社開発物件をファンドに組入れる可能性もあるでしょう。
―なぜ、DBZCOをパートナーに選んだのですか。
川田 不動産ファンド事業には2年ほど前から参入を検討してきましたが、投資資金の調達およびファイナンス面でのノウハウ強化が必要という判断がありました。DBZCO代表のDanielB.Zwirn氏は、ドイツ銀行で不動産ファンド運営の経験を積んで2001年独立し、現在、全世界で42億米ドルの運用資産を有する不動産や企業再生、未上場株式などを対象とする投資ファンドを運営しています。この分野で経験豊富な同社と組むことで、投資資金の調達およびファイナンス面での強化を図り、当社の持つ開発ノウハウ・アセットマネジメント能力を補完することで国内不動産投資における収益機会の拡大を図る目的がありました。また、他のファンドからも話はあったのですが、DBZCOが、当社の開発物件を高く評価してくれたことと、共同出資によるファンド運営というスタイルを採れたことがパートナー選定の理由です。
―都心部のワンルームマンションは増加傾向ですが、今後の見通しは。
川田 他社と同じような物件を開発していれば、早晩厳しい状況が訪れるかもしれません。当社の物件と他社物件との相違点は、デザイナーズ物件であること、ホテルライクな内装設備など、外観はシンプルでもこだわる部分には徹底してこだわっています。賃貸物件は現在98・8%の稼働率を達成しているなど競争力が高いため、今後の開発にも自信を持っています。
―収益物件についても売買価格が高騰しています。物件仕入れが困難になっているのでは。
川田 たしかに、都心部では投資適格物件が少なくなっています。しかし、当社では新規開発の他にもワンルームマンションのリノベーション事業で培ったノウハウがありますので、競争力の低下した物件を取得してリノベーション後ファンドに組入れることが可能です。また、昨年末に名証セントレックスに上場したことによって、かなりの物件情報が寄せられるようになりました。情報を整理しながら有望な物件には積極投資していきます。なお、中目黒に保有するテナントオフィスビルなど保有物件の拠出も考えています。
―その他の事業については。
川田 ワンルームマンションに特化したリノベーション事業が好調です。この事業については今後の更なる拡大を目指して、現在、リノベーションマンション購入者に向けたローンを準備しています。中古物件はこれまで購入者の資金調達が困難でしたが、金融機関と提携してローン設定を可能にすることで販売促進につながるでしょう。また、様々な情報が集まる不動産仲介店舗も現在の7店舗から更に増やしたいと考えています。

セキュアード・キャピタル・ジャパン 中国不動産などアジアの不動産にも投資 第二号ファンドの後継2690億円規模のファンドを組成
 セキュアード・キャピタル・ジャパングループ(東京都港区)は、米国大手年金基金等の海外投資家向けに、2005年4月に組成した総額約700億円の第二号ファンドの投資が順調に進捗したため、後継ファンドの組成を行う。
 後継ファンドの規模は総額約2690億円(ノンリコース・ローンによる資金調達額を含む)とし、そのうち約1390億円を主として第一号及び二号ファンドの投資家を対象として本年5月中に第一次クロージングを行い、その後既存投資家以外の国内外の新規投資家を対象に6ヶ月以内を目途として約1300億円の追加クロージングを行う予定だ。
 今回組成する後継ファンド(SCJREPAsiaファンド仮名)は基本的には第二号ファンドと同様の投資戦略により運用され、オフィスビル、商業施設、居住用不動産、ホテル及びその他スペシャル・シチュエーション(多種類の資産の一括売却案件など特別な投資案件)等に分散投資される。今回の特色としては、ファンドの約25%を主に中国不動産などアジアの不動産にも資産配分を行うことだ。
 同社では2005年1月に上海に設立された中国不動産アセットマネジメント会社に資本参加し、中国不動産の運用のための橋頭堡を築いてきた。今回の決定は、アジア地域の不動産に分散投資を行う「リージョナル・ファンド」への第一歩といえる。

ジャパンリアルエステイト投資法人「仙台本町ホンマビルディング」を完全取得 従来投資を合わせて総額31億7400万円
 ジャパンリアルエステイト投資法人は、ケーエムエックスワン特定目的会社(東京都港区)から、2億5000万円で「仙台本町ホンマビルディング」の土地所有権の共有持分と建物の区分所有権(1階店舗部分・賃貸可能面積412㎡)を取得した。
 同投資法人は同ビルの信託受益権(93・39%)を保有しており、本年6月28日付けで、同物件にかかる持分を現物にて再取得後、追加信託して100%の信託受益権を保有する予定だ。
 取得決定に際しては、1棟全体を保有することにより、資産価値の向上及び建物運営管理の効率化が図れることや、立地条件の良さを評価。建物は、平成3年11月竣工の、SRC造陸屋根付11階建で、延床面積は8247・50㎡、地震PMLは、東京海上日動リスクコンサルティングが1・93%と評価している。
 なお、これまでこのビルの取得に要した費用と、今回の取得金額を合計すると31億7400万円になる。

ジェイ・エス・ビー 1号・2号ファンドを合わせ130億円の資産規模を目指す 学生マンションファンド第2号運用開始
 学生専用マンションの企画開発・仲介・運営管理を行うジェイ・エス・ビー(京都市下京区)は、2005年4月に運用を開始した「STAF」に続き、私募型学生専用賃貸マンションファンド「STAF2」の運用を開始した。
 「STAF2」は、仙台・名古屋・京都に同グループが保有する学生向け賃貸マンション「グランエターナ」シリーズを含む、5棟を信託受益権化し、不動産運営を目的として設立したSPC(有限会社J・アセット・セカンド)へ売却して組成したもの。運用期間は4年、運用開始時の資産総額は約49億円となる。今後「STAF」と「STAF2」を合わせて、130億円の資産規模を目指す。
 なお、同社では、昨年4月にPM事業部を開設し、現在、AM会社9社より、19棟1494室を受託しているが、「STAF」の4棟275室、今回の5棟388室を加え、総受託数は28棟2157室となった。今後、2008年までに、約5000室のPM契約受託を目指すという。

DAオフィス投資法人「ダヴィンチ御苑前311」を巴コーポレーションに譲渡 譲渡価格と帳簿価格の差額は4億8000万円
 DAオフィス投資法人(東京都中央区)は、東京都新宿区新宿二丁目に保有する「ダヴィンチ御苑前311」の信託受益権を建築・不動産業などを手掛ける巴コーポレーション(東京都中央区)に譲渡する。
 不動産売買市場の動向などを総合的に検討した結果、譲渡価格が妥当であることや相対的に小額物件であるなどポートフォリオの最適化を目的に譲渡を決定した。譲渡価格21億8000万円で、平成18年3月31日現在の帳簿価格との差額は約4億8000万円。6月20日に譲渡する予定だ。
 なお、ダヴィンチ御苑前311は、昭和61年11月竣工のSRC・RC造、地下1階地上9階建、延床面積2855・35㎡のオフィスビル。7件のテナントが入居し、稼働率は100%となっている。

GMACCHアジア ジェフ・クラム氏を招聘 不動産ファイナンス部門を統括
 GMACコマーシャル・ホールディング・アジア(東京都港区、以下GMACCHアジア)は、同社マネージング・ディレクターにジェフ・クラム氏を任命した。クラム氏は不動産ファイナンス部門グループを統括することになる。同氏は香港および東京のアジア・パシフィック・ランドにて不動産投資事業に従事。その後、新生銀行の不動産ファイナンス・サブ・グループ、ストラクチャード・プロダクツの共同統括者として、海外投資家向けのノンリコース・ローンや開発ローンを担当した。GMACCHアジアのCEOであるスティーブ・リン氏はこの人事に関し、「日本のレンディングビジネスで大いなる実績を作り上げたクラム氏を招聘できたことで大変期待している。同氏の経験とリーダーシップによって、レンディングと証券化事業を私達の戦略ビジネスとして大きく成長させることができると考えている」とコメントしている。




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