不動産トピックス
クローズアップ 防災設備編
2007.02.12 13:50
建物を保有し管理する際、その内部にいる人たちへの安全管理は欠かせない。だが実際には、ビル火災の背景として、防火管理者の日頃の意識や行動が原因となっていることが多く見られる。普段はその恩恵を感じにくい設備であるが、各社の防災設備への取組みを概観し建物にあった設備と対策を紹介する。
ニッタン 遠隔試験機能により外部からの試験可能 湯気と煙を判断誤作動報を防止
ニッタン(東京都渋谷区)が開発・販売を行っている2波長光電式感知器「2KW―P」は、非火災の誤作動防止が考慮されている感知器である。
汚れや劣化、周囲環境の変化等による誤作動で、火災ではなくとも警報が鳴ってしまうという、これまで各メーカーが苦慮してきた改善策の一環として、まず1点目として特に多い水蒸気(湯気)による誤作動を防止する設計がなされている。2点目として、感知機内に塵や埃などの汚れが混入することによる誤作動に対しても、1日単位で自動補正し、正常な作動を維持していく。
遠隔試験機能も装備しているため、シャワールームの湯気で誤作動が多いホテルの客室などでも外部から試験を行うことができ、内部に立ち入りにくいプライベートな空間への設置にも効果的だ。
火災の通報をパネルに表示するR型受信機には、煙濃度と感知機内の汚れを判断し、誤作動を制御する装置が組み込まれているが、端末となる感知器自体にこの装置が組み込まれているのが、この製品の特徴。1万以下用のP型受信機にはこの機能が組み込まれていない場合が多いので、中小規模のビルにP型受信機とこの端末を組み合わせることで、R型の機能を組み合わせつつコストダウンを図ることも可能だ。
「消防署にとっては大事ですが、ビル保有者にとっては、意識しづらいのが防災設備です。今までの火災による死亡事故には多くの要素が絡んでいますが、その中の1つとして自動火災報知装置器の連動システムの電源を切るケースも多く見られています。それというのも、誤作動による警報が鳴ることを嫌っての行為のようです」(窪寺氏)
能美防災 大型表示とタッチパネルガイダンスで操作性向上自動試験機能で常時正常動作を確認
能美防災(東京都千代田区)が開発し平成18年5月より販売を行っている、中・大規模建物用自動火災報知設備、複合GR型システム「R24C」は、利用者により分かり易く、使い易い高機能性を追求した火災報知受信機である。
従来製品との大きな違いは、10・4型カラーLCD(タッチパネル式)を採用した大画面に、大きな文字と大きなスイッチを表示している点。分かり易さ・使い易さを向上させた「ガイドモード」と、火災や端末装置の作動状況を確認しながら遠隔制御や作動機器の一覧表示などができる、作業性を向上させた「作業モード」を設けている。加えて警報発生時には、「行動ガイド」のガイダンスに従って緊急時の操作が表示されるので、不慣れなユーザーでもスムーズな対応が可能となる。
「防災設備は頻繁に新製品が出るものではなく、各社はデザインと操作方法で違いを出しています。中から大規模ビル向けのR型は熟練者向けの操作板となっておりますが、このガイドモードを設けることにより、不慣れなユーザーと熟練者とで表示モードを切り替え操作することが可能となります」(毛利氏)
また、同社の特徴の一つとして、R型・P型共々「自動試験機能」が備わっているという点がある。感知器、電源、電路に故障や回線の切断が無いかなどの点検が常時自動に行われるため、器具の故障が報知設備にダイレクトで伝わる。加えて週一回の週間試験においては感知器等が正常に作動するかの試験も自動的に行われる。これによりP型からR型にシステムをリニューアルする際も、耐熱電線に配線変更するという工事の必要がなく、大掛かりな配線工事の手間が省略される。
沖電気防災 自由なレイアウト100回線に対応 警報箇所を地図で表示し一目で判断
沖電気防災(東京都港区)が開発し、販売を行っている自動火災受信機、P型1級複合受信機「HUMAP受」は、これまで文字で表示板に記されていた警報箇所を、LED発光による点滅や点等を用いて地図上で表し、どの場所で警報がなされているのかを一目で分かるようにしている。これにより、文字で表示された場所と防災管理図を見比べて対応する手間を省くことができ迅速な対応ができるようになる。
地図はパソコンで作成するフィルムカラープリントで、従来表示板に使われていたアクリル素材に比べ、大幅にコストダウンが図られている。フィルムにカラープリントされた地図の位置にあわせて裏側にLED配線を配置するため、ユーザーの要望にあわせた自由なレイアウトと表示が可能となっている。特に1級型は壁掛け100回線を実現しており、感知器を設置した100箇所いずれの場所で発火が起こったかが地図上に現れるため、複数階層のビルや広い敷地内でも容易に場所が特定できる。機体サイズもA4からB0サイズまで用意されており、大型LEDを選択することにより、大学キャンパス内などの広い地域の地図表示も可能となる。
受信機に接続されている火災感知器には、それぞれ個別のアドレスが割り振られているため、精密な場所の特定ができるという仕組みだ。
同製品のP型2級複合受信機は、火災地区をエリア別に地図上で表示するシンプルな操作性により、テナントビルや小規模建物などに手頃な設備となっている。
松下電工 共用部に設置してもいたずらしにくい頑丈設計 操作部をカバーで防護再鳴動して確実に報知
松下電工(大阪府門真市)が開発・販売を行っているP型2級受信機「シンプルP2シリーズストロングタイプ」は、複合用途ビル向けの受信機で、特に管理室が無いなど特殊な環境の下でも火災の早期発見がなされる機能を維持し、発揮できるよう、配慮された設備である。
中小規模のオフィスや店舗ビルなどの複合用途ビルで、管理室や管理者が置かれていない場合、不特定多数の出入りが多い共用部に設置された受信機はいたずら被害に遭いやすく、また受信機が警報を発していても対応できる人がいなければ事態は悪化してしまう。そこで、同製品は操作部や内器部をカバーでフルマウントし、ケースの板厚も従来の約30%増の厚板を採用。防災管理者などの関係者以外はみだりに操作できない構造となっており、不用意な誤作動の問題を軽減している。また、地区音響を一旦止めても、一定時間経過もしくは新たな火災信号を感知すると、再び鳴動して確実に建物内部にいる人間に火災発生を伝えるという機能をも供えている。感知器配線断線やヒューズ断線なども常時監視している自己診断機能も保有しているため、設備トラブルを直ぐに感知できるのも心強い。
P型2級受信機は5回線内器だが、P型1級受信機である「シンプルP1シリーズ」は10回線内器で、ビルの規模にあわせて選択ができるようになっている。