不動産トピックス
クローズアップ 照明器具編
2007.03.12 16:52
照明器具は建造物にとって身近であり、かつ重要な器具である。日進月歩で新製品開発が進む分野でもあるが、今注目されているLED以外にも新たに平面発光という技術も製品化されてきた。今回は照明器具における新技術、そして省エネルギーに焦点を当て、各社各団体の取組みと製品を紹介する。
レシップ 狭い空間にも貼り付け設置面から均一に発行する照明 厚さ約3㎜平板薄型平面発光灯
レシップ(岐阜県本巣市)は、「平面放電灯」を開発し、販売を行っている。
この商品は厚さが約3㎜の薄さの平面発行灯。一枚のガラス板の様な形状で、表裏より発行する。2枚の薄いガラス板の間に、極めて狭い放電空間を設けてその中に放電ガスを封入・発光させるため、この薄さが可能となっている。
外面に透明の電極を設け、2枚の透明電極間に高周波電力を供給することで発光する。蛍光体や注入するガスを変えることにより、電球色やRGB色にも対応している。放電空間に電極を持たないため、放電時間が4万時間という長寿命。熱陰極蛍光ランプのようなフィラメントを持たないため、フィラメント切れの心配もなく、瞬時点等が可能となっている。無水銀・無鉛ガラス仕様で環境への負荷を軽減している。マイナス30℃から80℃の高温までフラットに光を出力し、温度変化や照度で劣化することがなく、点灯の回数で消費することもないのも特徴。現在適用ランプはA6サイズとA3サイズがある。
「バックライトや照明器具では薄型化が求められています。その中で、3㎜の薄さで均一に発光できるのが、この商品の魅力です。奥行が取れない場所などにも、貼り付け設置をすることが可能となっています。環境を考慮した作りで水銀が入っていない分、多少効率は悪くなりますが、その点は今後研究を重ねて改良していくつもりです」(営業本部S&D営業部担当主任黒木政裕氏)
(財)有機エレクトロニクス研 発光層膜厚0・1ミクロンの平面発光 更なる薄型化目指す平面体各社で製品化が進む可能性
「有機EL」とは、通電すると発光する有機色素材料を使用するもので、発光層膜厚は約0・1ミクロン。LEDと同様に半導体光源で、水銀の様な有害物質が含まれていない。
機能面における大きな違いは、LEDは点で発光するが有機ELは面で発光するという点だ。ガラス基盤に透明電極と金属電極を貼り、サンドイッチ状態にして電圧をかけるという仕組みで、面発光するパネルの厚さはガラス基盤の厚さとほぼ同程度になるため、更なる薄型化も可能と見られる。
(財)有機エレクトロニクス研究所による照明用高効率有機EL技術の研究開発などがなされており、今後製品化が進むことが見込まれる。
「3年以内の製品化を見込んで、各社有機ELを用いた照明の実用化に取り組まれています。壁に貼れるので内装加工の手間が無く、改修をせず後付け設置も可能です。有機材料を組み合わせ、発光色を調整し基本的な色を出すこともできますが、紫など波長の短い色は難しい点もまだあります」(プロジェクトマネージャー(兼)有機デバイス研究室長小田敦氏)
現段階におけるランニングコストなどは、白熱球と同程度。「ただ、用途によっては白熱球と同程度でも利用価値は様々。このレベルで実用化を図る場合は、実現への開発年数は2〜3年後程度でしょう。今後は蛍光灯のコスト・効率を上回るように改善を進めていくことを考えていますが、その改善を踏まえた上での商品化は10年以上先になりそうです」(松下電工照明技術戦略企画室インキュベーショングループ主任伏見竜氏)
松下電工 高効率で約6万時間の長寿命メンテフリーでコストダウン 水銀灯に替わる大型蛍光灯技術
松下電工(大阪府門真氏)が開発し販売を行っている長寿命光源「エバーライト」は、水銀灯に替わる高輝度光源。道路照明器具やモールライト、投光器やダウンライトなど、外部灯を含む広い範囲で利用されている。長寿命光源というだけあり、約6万時間の点灯時間が想定されている。1日10時間利用の場合、16年間の継続利用が可能になる計算だ。高効率なので、従来の水銀灯の明かりに対して40%から50%のワット数で同程度の輝度が確保される。例えば、水銀灯400W形で2万2000lmに対し、同輝度でエバーライトは240Wで済む。
これだけの長寿命が可能となったのは、このライトが無電極方式の蛍光灯だからだ。
「そもそもライトの寿命が尽きるのは、電極が消耗するからです。しかし、このライトはガラス玉の中にコイルを封入し、電極を介さずそのコイル部分にのみ電気を流すので電極の消耗という問題が発生しません。16年という寿命設定については、電子ユニットの寿命がその程度と見込んでいるからです」(施設・屋外照明事業部事業企画グループ主事宮井伸貴氏)
復帰まで10分以上かかる水銀灯と異なり、蛍光灯の特性である、瞬時始動と瞬時再始動が可能となるのも魅力。光触媒膜付きの防汚コーティングが施されており、表面に付着した汚れは太陽光や光りエネルギーにより有機質汚れを分解。清掃やメンテナンス費用のコストも抑えることができる。
(社)日本照明器具工業会 初期設備投資分を省エネランニングで回収 機器の寿命は約10年が目安 早期点検でトラブルから回避
建造物のエネルギー消費量に占める照明用エネルギーは、平均して約25%。エネルギーの利用効率や省エネルギーランプや照明効き、また照明制御システムを採用することで、無理なく省エネルギーに繋げることができる分野でもある。
「リニューアルなどで照明を変える際、ラピッド式器具から高効率Hf照明器具に変えることにより約29%、初期照度補正Hf器具で更に約15%の省エネになります。また、センサ付き照明で自動消灯式にしたり、システム制御を導入することにより、全体で約61%の省エネが可能となります。年間の電気代にして、ラピッド式器具が37万260円だとすると、これらのシステムを取り入れれば14万5369円になるという計算です」(専務理事赤塚美津雄氏)
初期照度補正とは、照明の新品時等に照度が高すぎ、余計な明るさが出ない様に、自動的に適正な照度に調整するもの。システム制御は大型建造物内において有効で、余分な照明コストを自動制御するものだ。機器導入に際するイニシャルコストがかかるのは勿論だが、各社メーカーの製品を検討し工夫することにより、負担が軽くなったランニングコストで回収することもできる。
「照明器具は、10年経ったら点検した方が良いでしょう。ものによっては15年持つものもありますが、30℃の気温下において定格で使用した際、適正交換時期は約10年と見ています。照明機器の劣化は外からは見えないので、場合によってはテナントが使用しているフロアの照明から煙や匂いが、ということもあります。そうならない前に、早い時点でチェック&チェンジをお勧めします」(同氏)