不動産トピックス

クローズアップ 消火設備編

2007.05.21 14:01

 普段自分の身に起こるとは考えづらい火災。一般的にあまり知られていないことだが、各消火設備に適応する火災の種類がある。価格ばかりに気を取られずに、オフィスに適した消火設備を用意する必要があろう。今回は油性の火災ではなく、紙や樹脂火災向きの、水を使用した消火設備を紹介する。

ボネックス 環境重視した簡易操作の投てき式消火用具 食品添加物使用で人体や環境にも配慮
 ボネックス(東京都千代田区)が開発した「投げ消すサット119」は、投てき式簡易消火用具である。軽量で、火元に投げ込むだけという簡単操作が特徴だ。
 この製品は、特殊樹脂製のボトルに、510ccの青い消火剤が満たされている。納めるケースは、壁に備え付ける形と持ち運びしやすい肩掛け用があり、移動が簡単なため、初期消火だけでなく避難時の退路確保にも活躍するという。
 特殊樹脂は化学物質アレルギーを引き起こすフタル酸を使用せず、低い位置から投げても割れやすいように耐衝撃性が非常に低い。
 しかし、現実に火災が起きればパニック状態で強く握ることがしばしばあるため、圧迫には75まで耐え得るという。
 人体、環境に優しいことを前提に開発された消化剤は、食品添加物を使用するため、誤って口にしても害がないそうだ。
 「もともとはホテルからの依頼で開発しましたので、デザインにも配慮しています。国内製品には青い色を使っていますが、中国や韓国向けには赤が喜ばれるので、色を変えています」
 従来は難しかった車椅子での消火器の使用を簡単にし、全国脊髄損傷者連合会推奨品に指定。また、日本消防検定協会の「性能鑑定」に合格しNSマークを取得している。
 「使用可能なため、韓国では、備え付ける消火器の半数を投てき式にする法律が6月に施行されます」

宮田工業 パソコンデータへの被害を最小限に 火災復旧にスピード対応IT時代の純水消火器
 「クリーンミスト」は宮田工業(神奈川県茅ヶ崎市)が開発した、純水ベースの消火器である。消防法上では普通火災と電気火災に適用しており、絶縁性が高い薬剤のため、感電しにくい。
 この製品の大きな特徴は、消火剤によるパソコン内データへの2次災害の防止にある。近年IT化の波が押し寄せる中で、パソコンに頼らないオフィスは数少ない。そのため、実際に火災が起きた場合、粉末消火器では薬剤による腐食や固化によってHDDが損傷し、データ復旧が滞る二重の被害が起きる。
 「1994年にそれまで一般的だったハロンガスが、環境破壊につながることから製造中止になったため、それに代わるものを探していました。現在の日本のオフィスのニーズには、純水ベースでパソコンを害さない製品が最適と考えます」(防災事業部・統括営業部部長吉田勝氏)
 成分が純水使用のため、噴霧したパソコン内部に塩素などの不純物が残らず、水分が蒸発した後にパソコンの立ち上がりが可能という実験データを得ている。
 「確かに粉末のものよりはコストがかかるかもしれませんが、オフィスにパソコンが必須の時代ですので、データの損失を考えれば、ITに特化したクリーンミストの需要は、これからも増え続けると思います」
 現在は、病院や美術館、工場など精密機械や早期復旧が必要とされる場所に設置されている。IT系企業からも問い合わせが来ているそうだ。IT化が広がっていることから、これからも市場の拡大を図る構えだ。

ニッタン 微粒子の水を高圧力で放出して消火 少ない水で大きな効果を発揮
 ニッタン(東京都渋谷区)が製造する「ウォーターミスト」は、直径35のヘッド部から超微粒子の水を放出する消火設備である。
 スプリンクラー設備と決定的に異なるのは、散布される水粒子の細かさだ。
 「ウォーターミストは、高圧方式という発生方法で、水粒子を平均的なスプリンクラー設備の約12分の1にまで細かくしております。そのため、圧力に耐えうるステンレス管での施工を勧めていますのでコストはかかりますが、消火効果と復旧速度が違ってきます」
粒子が細かいことのメリットは、表面積の増加で火災の熱吸収の効率が高まること、水蒸気に気化し温度と酸素濃度の低下を引き起こすことで消火速度が上がることがある。それによって放水量が少なく済むそうだ。
 「実験データでは、平均的なスプリンクラーの半分の水量で済みました。実際にスプリンクラーや屋内消火栓設備など他の水を使用する消火設備では、ウォーターミストに比べ大量の水を使用するため原状回復に時間がかかります。施設にかかるコストより原状回復の遅滞による損害のほうが大きいでしょう」
 現在は、大勢の人間が集まるような大型施設や火災リスクが高い工場に施工している。




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