不動産トピックス
クローズアップ 防滑特集
2007.07.09 14:36
梅雨になり、突然の雨が降る季節となった。夕立に降られ、革靴やヒールで滑った経験がある人も多いはずだ。ビルの敷地内で転倒した場合、以前は自己責任と取られてきたが、最近ではオーナーの責任とされている。今回はリスク回避のためにも、防滑方法をみていこう。
アルテック ウレタン系樹脂と骨材で滑り止め 2液混合で硬化を早める色や形をアレンジ自由に
アルテック(東京都目黒区)が施工する「ALLGRIP」シリーズはペイント型の滑り止めである。
ドイツのメーカーと業務提携し開発されたペイント材は2液混合方式。ウレタン系の樹脂と骨材の2液が入った各ボトルをドライガンにセットし、トリガーを引いて出てきたそれぞれの液剤が、内部がらせん状になったノズル部分で混ざり合う。
施工は清掃、目荒らし、脱脂を最初に行い、次にマスキングをして形を取る。その上から液剤をペイントして、ヒーターで乾燥させる。塗布する厚みにもよるが、約30分で硬化するという。
「ALLGRIP」シリーズは全7種類に展開。通常タイプの液剤はRAL基準に対応した210色の液剤が調合可能だ。蛍光塗料を使用した蓄光タイプは2種類の発光色から選択可能で、滑り止めだけではなく注意喚起の面にも配慮している。
また、よりデザイン性を追求する顧客に向けて、様々な形のオーダー展開をしている。施工時は段鼻と呼ばれる階段のふちに棒状にペイントするのが一般的な形だが、元来不定形のため、カッティングシートを用いて水玉や花びら、文字やロゴなど様々な形にアレンジが可能だ。
「この製品はアレンジの幅が広いのが特長です。液剤で施工した床面の上にも同時利用が可能なため、より顧客のニーズに合った施工を提供しています」(代表取締役小野義昭氏)
補修時の欠けた場所への一部施工が可能だ。
ステップ 石材の光沢をそのまま残せる防滑施工 安全性の高い製品使用人体への影響配慮する
ステップ(東京都中央区)が施工する「BOUKATU防滑工事」は、大阪府のメーカーとの業務提携により開発した液剤、「スーパーΛ(ラムダ)」を使用している.
「この液剤は、十分な滑り止め効果を保ったまま、中性のph6・5という安定性を実現しました。開発するにあたっては、従来品よりも高度な技術力が必要でした」(代表取締役丹治永氏)
同社の方針で、施工時は必ずパッチテストを行う。素材に合わせて液剤の濃度を調節し、施工時間に差を作らず丁寧な施工を一定して提供する。
「パッチテストは1分刻みで施工時間を変えるなど、精密に行っています。しかし、実際にはテスト通りの施工に技術力を要するのです」(丹治氏)
大理石や黒みかげ石のように傷みやすく吸水性が異なる石材は、同じ種類でも実際の床面をチェックする必要がある。
このような綿密なテストの結果、適切な濃度で施工するため、光沢を保ったままでの施工が可能である。
顧客の中には、石材が傷んでツヤを失い、白く濁ることを恐れて滑り止め用マットを敷いていたというオーナーも多いのだという。しかし、転倒防止のはずのマットのふちにつまずく、景観を損なうといった弊害もあるため、同社では床面への施工を薦めている。
タイルのヌメリも1回の塗布で施工 食品添加物を使用主成分はクエン酸
トムドゥ(東京都中央区)が開発した「足元安心」は、個人で施工するための液剤である主。にタイルなどの石材に使用し、床面に残ったせっけんや汚れによるヌメリも取ることができる。
使用法は15分放置し、その上でこすり洗いをするとのこと。
「使用上の注意としては、時間を守る以外には特に注意点はありません」(営業部福島力氏)
主成分には洗浄力と除菌力のあるクエン酸を使用。従来品のように、劇薬である塩酸などの無機物を使用せず、食品添加物でもある有機酸を使用して、安全性に配慮した。
「足元安心」は、ph値が人間の肌と同じ弱酸性のため、安心して利用できる。
従来は専門業者に依頼する必要があったが、一般にも使用可能な液剤を開発し、低コストを実現した。
「従来品は塩酸、フッ酸使用でph1〜3の強酸のものが多かったため、扱いに注意を要したのですが、この『足元安心』が発売された平成12年以来、顧客にも喜ばれています」(福島氏)
通信販売が主なルートのため、パッチテスト用に無料サンプルを配布している。メンテナンス上では、日常はクレンザーなどで洗浄するとのこと。時間が経過すると効果が弱くなるので、その場合はメンテナンス用洗剤を使用する。
メンテナンス用洗剤は「タイル用ミュープラス」と「石材用ミュー3000」の2種類があり、どちらも通信販売で購入可能だ。
メンテックカンザイ 使用液剤は米国メーカーと共同開発 弱酸性でミクロンの穴石材により時間を調節
メンテックカンザイ(東京都港区)が開発施工している「ノンスリップマスター」は、床面塗装にランダムな3〜7ミクロンの穴を開け、その穴に溜まった水の表面張力を利用して防滑する。
施工の際使用する液剤は、米国メーカーと共同で開発したもので、性質は弱酸性。施工する材質によって塗布する時間が異なり、柔らかい大理石などは約1分で洗浄して施工終了だ。
石材の中でも大理石は柔らかく穴が開きやすいため、素人では時間をかけすぎてツヤをなくしてしまい、その結果もう一度磨き上げるという手間と費用がかかるケースも見られたという。
「大体、100㎡の床を5人で施工するのに、約半日というのが目安です。洗浄が終わってしまえば、塗料と違って床面を乾燥させる必要はなく、すぐに上を歩くことができます」(メンテックカンザイ事業部長中川利雄氏)
液剤の使い方によっては、光の乱反射によって床の色に変化が生じるが、通常は電子顕微鏡レベルの非常に細かな穴のため、大きな変化はないそうだ。
「顧客への説明に、御影石でできたボードの半分に塗布し、半分は何も塗布しない状態で変化を見せますが、通常施工の状態だとほとんど差が見られません」(中川氏)
現在は大手商業施設や病院など、通行量が多い場所からの依頼が多い。