不動産トピックス

クローズアップ 石材メンテナンス編

2007.08.06 14:24

 湿気が多く、気候が変化しやすい我が国では、石材の状態も変化しやすいといわれている。また、伝統的に大理石を多く用いてきた欧米諸国に比べ、いまだに石材のメンテナンスが一般に拡充していない背景もある。バブル期にノーブルな印象を求めて多用された石材が、現在では汚れや劣化が目立つビルも多い。今回は、清掃管理会社だけではフォローしにくく、専門的であるとされる石材のメンテナンスについて取り上げる。

湿度の高い日本国内で美観が損なわれる理由
 石材は硬いため、一度施工すれば恒久的にメンテナンスが必要ないと考えるオーナーも多いが、一見滑らかに見える石材の表面には多数の穴が空いており汚れが詰まるなど、実際には細かな管理が求められている。
 日本国内で建築物に使用される石材は、御影石が多いといわれる。硬く傷つきにくいとされるのがその理由だが、他にも欧米では一般的に多く用いられている大理石が、非常に酸に弱い特質を持つことが挙げられる。
 国内で特に着目すべきなのは、その湿度の高さだ。石材に付着した粉じん状の排気ガスが湿気を帯びて酸性の溶液に変化し、大理石を溶解させる。加えて、酸性雨など石材を傷める要素には事欠かない。
 また、白い年輪状の「エフロ」は、水分に含まれたカルキなどが硬質化したもので、洗剤では落とすことができず、またドライバーなどで引っかいても削れないほどに硬い。
石材を傷めずに美しさを取り戻すには、専門知識と技術を必要とするという。

マリン 石材の研究に渡来 総合メンテナンスを提案
 マリン(東京都北区)は石材の保護、染み抜き、再生を柱とした総合メンテナンスを行っている。
 「当社は平成2年頃から石材のメンテナンスに携わっています。当時は国内に石材のメンテナンスという意識が広まっていなかったため、海外に石材のメンテナンスについての勉強に行きました。日本に比べて安定した気候のニューオーリンズでは、トラバーチンと呼ばれる凹凸の多く傷みやすい石材を通りに敷き詰めていました。驚くとともに、環境や求められる美観に応じて石材を施工する重要さを学びました」(木戸氏)
 海外の技術を導入した同社のメンテナンスは、段階に分けて「マリン・メンテナンス用品」で施工するという。薬剤を用いることもあるが、基本的には石材を傷めにくいポリッシュで研磨する方法を推奨している。
 「当社では、できる限り薬剤を使用せず、少量の水で磨き上げるように心がけております。石材の研磨に必要とされる高度な技術が当社の強みです」(木戸氏)石材の状態にもよるが、清掃から始まって、しみ抜きや再生、保護までを1つの流れとして施工する。石材の状態が、汚れ、劣化、傷みの3つのどの段階にあたるかを判断し、それぞれに応じた施工を行う。
 メンテナンスのコストは、1回の出張料金が1万5000円で、段階に応じた工事費を加算する仕組みだという。また、自前でメンテナンスを行う顧客のために、専用の薬剤販売も行っている。

エムシープランナーズ 石材の特殊クリーニングで美観回復 個人差を減らしてムラを軽減
 エムシープランナーズ(東京都江東区)は、石材の特殊クリーニング施工会社である
 「当社が提供するメンテナンスサービスでは、張替えないで石材工場出荷時の美しさを取り戻すことを目標に掲げています。張替え工事になれば、多大な手間と時間、費用がかかるため、できる限りクリーニングの延長線上で考えるよう施工しています」(畠山氏)
 デパートやホテルなど、濡れたようなツヤを出すために用いられるのが「ダイヤモンド研磨」と呼ばれる施工技術である。石種や置かれた環境、傷の深さなど様々な要因によって変化するが、1度の施工で約5回から7回の工程を経て、丁寧に磨き上げる。
 また、同社が開発した「スライド研磨システム」では、加重をかけるのが難しく、職人によって仕上がりが変化するという難点がある壁面の研磨作業において、専用の足場に研磨機をセットし、ムラや個人差の少ない施工を実現した。
 更に、石材でよく問題となるのが石材に付着した染みである。同社では染み抜き剤を塗布後、ポリビニールシートで覆い、人通りが多いところではその上から歩行性が良いカーペットを敷き詰める。一晩かけて染みの部位に反応させ、洗浄。乾燥を待つため、再度カーペットで覆ってから汚染防止処理を施工する。
 「ブルーシートでは湿気が抜けず、歩行性においても劣るため、当社では歩行部に養生が必要な顧客にはカーペットを使用することを提案しております」(畠山氏)
 丁寧な施工で定評のある同社は、大型高級ホテルやオフィスビルなどでも施工しており、石材の状態などによっても変化するが、大理石で5000円前後、御影石で8000円から1万円。

アートストーン 軽量化と材質の強化を実現した複合石材 天然石の質感を持つ新しい建材石材のリニューアルに利用可能
 アートストーン(横浜市鶴見区)が販売及び施工している超薄型合成装飾材「ライトストーンパネル」は、天然石を薄く切り、各種素材と合成した複合板である。開発にあたっては中国の大手石材メーカーと共同開発し、生産委託しており、大きく分けて4種類に展開している。
 1つ目がオニキスノーブルと呼ばれる、オニキスとガラスで構成されるパネルだ。光を透過するため、パネル後方にライトを入れ、独特の丸みを帯びた光を楽しむことができる。
 2つ目がアルミハニカムである。天然石とハニカム構造のアルミ素材で構成される。無垢の石材に比べて重量が3から5分の1と軽量で、ハニカムの特長である強度補強や、熱効率、施工性の向上を実現している。
 3つ目がセラミックパネルである。天然石とセラミックで構成され、ラインアップの中でも最高の接着強度を持ち、収縮に対する変形も少ない。
 4つ目は樹脂パネルで、天然石と樹脂板で構成される。ラインアップの中で最も薄い形状での施工が可能で、下地を取ることができない場所での施工などに適する。
 「この『ライトストーンパネル』は天然石の質感を保ちながら、同じ厚さの天然石に比べて軽量で、丈夫です。下地加工しにくい場所にも施工が可能で、マンションなどのかまち部分にも滑らかな曲線を再現することができます」(小林氏)
 通常の床だけでなく、エレベーターの床にも使用されており、案件によって変化するが1基につき17万円から18万円ほどで施工が可能だ。




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