不動産トピックス
クローズアップ 太陽光発電編
2007.08.27 10:41
太陽光発電は、現在のところビルにとっては導入コストと省エネ効率を考えた場合、まだ割高で導入には簡単に踏み切れない感がある。しかし性能は確実に進歩しており、単なる発電装置としてだけでなく、外観を向上させる要素にもなりえる。今回は最新の太陽光発電装置にスポットを当てた。
旭硝子ビルウォール 太陽光発電装置付きルーバー建材一体型で意匠性に優れる 曲面設計で風切音の抑制にも効果発揮
ビルの外壁や窓には、ルーバーが取り付けられていることも多い。
ルーバーとは細長い板状のものを一定の間隔で取り付けたもので、直射日光を遮りつつも、外気を取り込みたい場合に使われる。また、室外機などをルーバーで隠し、外観を良くする目的もある。
旭硝子ビルウォール(東京都文京区)では、このルーバーにも太陽光発電の機能を持たせた建材一体型の太陽光発電ルーバーを販売している。
同社の景観材料事業部エアロフレームグループ、グループリーダーの山田聡氏は「建材一体型太陽光発電ルーバーの特長として、意匠性に優れ、デザイン面や機能面、または構造面での設置の自由度があります。それらを調整することで、出力を最大限に発揮することができます」と語る。
また、他の特長としてはルーバー本体にも通気孔を設けることにより温度上昇を抑制し発電効率を上げることができる。さらにルーバー本体の曲面設計により、風切り音の発生を抑制する。
建材と一体化しているので、別途に太陽光発電を導入するよりはコストダウンも実現できる。
これまで同製品が使用された実例としては、例えば「武蔵野研究開発センタ研究棟」や「ドコモ九州大分ビル」「旧渋谷小学校跡地ビル」などがある。
導入費用として、ソーラールーバー1列式(最大出力21・6kw)がkwあたり330万円からとなる。同社では設計段階から相談を受け付けているとのことである。
MSK 発電効率だけでなく外観重視のビルにも最適 太陽発電と採光を両立 サンシェードの役割も
MSK(東京都新宿区)は各種の太陽電池の製造販売及び輸出入を行う。
同社が取り扱う「ライトスルー(LIGHTTHRU)」は、太陽光エネルギーを集めるセルの部分が、ある程度光を透過させるよう、隙間をあけて配置させてある。このライトスルーだが、次のような特徴をもつ。
日陰を提供する、サンシェードとしての役割。ある程度の光を透過しながら、直射日光をやわらげることができる。
製品のサイズやセルのタイプをある程度自由に設計できる。サイズの自由度は設置場所の範囲が広がり、セルの調整は発電効率や透過させる太陽光の量を調整できる。
また、同社のセールス・マーケティング本部の黒田弘道部長は「この製品は、ビルの建材の1つとしても、有効だと思われます。設計自由度が高いので、例えば人がよく集まりそうな場所に設置し、サンシェードとしての役割を発揮させたり、最も発電効率の高いところにピンポイントに設置できます。これからは発電効率のみならず、デザイン性を高め、外観をよくするのも、太陽電池の役割ではないでしょうか」と語る。
同社ではビルの設計段階からの参加も可能とのことである。
三菱電機 変換効率は13・2%サイズも各種を用意 耐蝕性を高めた太陽電池 塩害地域でも設置が可能
三菱電機(東京都千代田区)は塩害地域での標準設置を可能にした、ハイバリア太陽電池モジュールを生産している。サイズは幅1580㎜、奥行800㎜、高さ46㎜の大型で高出力タイプ(PV-MG167W)の他、3タイプを揃えている。
PV-MG167Wの公称最大出力は167Wで、太陽光エネルギーの電力への変換効率は13・2%である。
塩害地域の設置を可能にしたのは、フレームやネジ類、取り付け部分の材料にも耐蝕性に優れたメッキ処理を施しているからだとしている。また、モジュールそのものについても、耐候性、耐湿性、密封性が高められている。
また、同社は塩害地域の設置について、以下の点について注意を促している。取り付け部材には同社の推奨品を含む、同社製品を使用すること。
パワーコンディショナなどは屋内へ設置する(ただし、隠ぺい部や湿度の高い場所への設置はしない)こと。ちなみに、パワーコンディショナとは、太陽電池で発電した電気を変換し、家庭やオフィスなどで使えるように電力系統につなぐ機器のことである。この機器は精密機械であるため、塩害は要注意ということだろう。
これらの条件を満たせば、塩害地域でも太陽光発電の設置は可能だ。ただし、海岸より飛散した海水が直接かかる「重塩害地域」においては、設置は不可能としている。
シャープ 太陽光エネルギーの変換効率を大幅に向上 従来の設備で生産可能製品の低価格化に貢献
太陽電池生産量で7年連続世界1位(2007年3月号のPVNEWSによる)のシャープ(大阪市阿倍野区)では、太陽光エネルギーを電力に変える変換効率を8・6%から10%に高めた太陽電池の量産技術開発に成功した。
この製品はトリプル型薄膜太陽電池と呼ばれ、従来のアモルファスシリコンと微結晶シリコンの2層構造から、アモルファスシリコンを2層、微結晶シリコンを1層にすることで、合計3層構造にした。
アモルファスシリコンや微結晶シリコンとは、太陽光を吸収するための膜であり、アモルファスシリコンは微結晶シリコンに比べてより多くの光を吸収することができる。
このアモルファスシリコンの2層化によって電圧が大きく高まり、その結果として業界トップクラスの高変換効率を実現した。
しかし通常、3層構造にする場合は生産設備の増加を伴うが、同社によると従来の2層型と同一設備での生産が可能であるとしている。
つまり、新規の生産設備に高額な費用をかけずにすみ、ワット単価(モジュール価格を発電容量で割った値)の低減も可能になったという。ただし、現時点では製品の価格は未定となっている。また、この製品は建材一体型のシースルーモジュール(太陽光の一部を透過するタイプ)やLEDとの一体型モジュールなどにも適用でき、応用範囲の拡大が期待されている。
この製品は今年の秋より生産される予定とのことである。