不動産トピックス

クローズアップ ユニバーサルデザイン編

2007.10.08 16:07

 ユニバーサルデザイン(以下本文も含めUD)を適用した各種設備や機器類は、全ての人々がより利用しやすくなるよう、デザインや操作性が工夫されたものである。ビルにおいても、エレベーターやトイレなど、UDの製品を導入できる場所は多い。これらの設備を導入し、ビルのイメージアップを図るのも一法ではないだろうか。

イトーキ 天板が上下しサイズ調整可能なデスク 個々人にあわせた仕事環境を提供
 イトーキ(大阪市城東区)が販売する「インクルード」は、UDの大きなテーマである”すべてを含む”を由来とした、その人に最適な労働環境を提供するデスクである。
 天板の高さが650〜850mmの範囲で体格にあわせて調整できる、ハンドル式天板昇降タイプ。通常規格のデスク高ではフィットしない、車椅子利用者にも柔軟に対応する。上下昇降の天板にあわせ上下するレベルアップワゴンはサイドテーブルとしても利用可能。ワゴンの引き手は左右全幅にわたってあり、どこに手をとってもスムーズに開閉でき、またオーバーヘッドキャビネットは引き手を軽く引くだけで開閉できるため、座ったままで楽に出し入れができる。小物や共有物を置けるセカンダリー天板は本体の天板が上下しても高さが一定に保たれるため、隣り合うデスクの一体感を損なわない。
 「今後のオフィスビルは、下肢障害の方にも対応した開発プラン、そして運営方法を検討していく必要があるでしょう。健常者・障がい者双方にとって使いやすいデザインをどの程度盛込んでいくのか、コストパフォーマンスとの兼ね合いで必要な部分には導入というやり方が望ましいと思われます。まずは、通路の幅、垂直の高さ、扉、家具などで必要な部分に導入されていかれてはいかがでしょう」(中山氏)

クネット・ジャパン 手首やひざへの負担を軽減する曲線 波型が目にも楽しい選択の幅広がる素材
 「波形手すりクネット」はクネット・ジャパン(長崎県佐世保市)が開発した、UD手すりである。
 波打った本体は人間工学に基づき設計された角度と太さによって、体を支える際にかかる手首への負担を軽減する。直径は32mmと35mmの2種類から選択可能。
 色のラインアップは約10色で展開しているが、今後は13色に拡大する予定。カラフルな色は、保育園や子供部屋に続く階段、塾などにも好まれ、ポップな外観で目にも楽しい。また、自然な握り心地を提案する木材加工品はUDを必要とする高齢者の手肌に優しく、好評を得ているという。
 「高齢者の顧客には自然素材を使用した製品が喜ばれています。また、現在おすすめなのが楓の木を使用したクネットで、使用者には自然素材が提供する雰囲気と握りやすさを気に入って頂いているようです」(池田氏)
 このクネットは元来、階段の段差に合わせた角度に加工すると言うアイディアから成り立っている。現在は改良を重ねて、角度が急だった従来品と比較して、よりなだらかな曲線を描く構造となった。
 それにより、握り手の手首の角度もより自然なものになり、昇降時にかかる膝や手首への負担が軽減。また、落下しそうになった時にとっさに掴む場合にも握りやすい。

岡村製作所 障害物検知機能で挟まれる事故を防止 円弧状のドアを採用し体をよけずに開閉可能
 ビルのリニューアル時に、トイレの改修も行うケースは多い。その際、UDのトイレを導入する事でテナントへの印象も向上させられるのではないだろうか。
 岡村製作所(神奈川県横浜市)では、トイレの個室ドアを開けやすくした「ウェイブレットリニアード」を販売している。
 この商品は、ドアの駆動部分にリニアモーターを使用し、スムーズかつ静粛性にすぐれた自動開閉が可能となっており、わずかな力を加えるだけで自動開閉装置が作動するようになっている。
 また、このドアは「アークスライド方式」と呼ばれる円弧状にふくらんだデザインを採用しており、使う人のまわりを取り巻くようにスライドして開閉する。つまり、通常のドアのように前後には開かないので、使用者がドアをよける必要がない。
 個室の内外でこのメリットが活用できる。例えば車椅子の使用者ならば、通常は専用の広い個室でなければ利用しにくかったが、このドアならある程度の広さがあれば十分利用できる。
 また、挟まれた時の安全対策として、障害物に接触すると直ちに開閉動作を反転させる機能や、障害物を自動検知し動作停止させる機能などもある。円弧状のドアのデザインは見た目にも優しいイメージで、利用者の印象を良くするだろう。

アトリエユニオン 握りやすいステンレスレバーシリーズ 設置場所を選ばないシンプルなデザイン
 アトリエユニオン(東京都中央区)で販売しているレバー商品は、2000点から3000点に及ぶ。
 その中でも新しくUDに対応する商品として発売されたのが、ステンレスレバーハンドルとドアハンドルのラインだ。
 レバーハンドルはノブと異なり、力の弱い使用者やかさばる荷物を持っている使用者でも操作しやすい。
 ドアハンドルはその形状が縦に長いため使用者の身長を選ばず、大人子供にかかわらず使用可能だ。長さが選択でき、ステンレスのラインは扉の景観を損ねない。
 「当社から発売している商品群の中で引き合いが多いのはシンプルな商品です。今回発売となったこの商品はステンレス棒を曲げて製造するもので、工程を簡略化しているため、装飾性の高い従来品に比べお手頃な価格になっているのも人気の理由の1つでしょう」(富正一氏)
これらの製品は、同社のグループ企業であるユニオン(大阪市西区)でデザイン、製造されている。シリーズはいずれも断面が台形にデザインされており、握りやすい。
 また、シンプルだが横から見たフォルムがアーバンな雰囲気で、設置場所の雰囲気を選ばない。ステンレスミラー、ヘアラインが全8種、レバーハンドルが2種用意されている。

杉田エース 前後どちらからも開閉可能なドア 省スペース可能で狭い空間に特効
 杉田エース(東京都墨田区)は、両側から押し開けることが可能なドア「ラクオス」を販売している。両手が塞がっていても容易に開けることができるのが特徴だ。
 ドア中央部に設置されたアルミ製センターポールが折れて開く構造となっているため、開閉スペースは従来の扉に比べ半分以下。狭い廊下や荷物が多い部屋、トイレの個室などに導入すれば、省スペース化をはかることができる。床レールを必要とする引き戸やドアと比べ、床に段差も生じない。
 同社は完成品を取りつけるだけの「ラクオスユニットセット」と、14個の部品からなる「ラクオス部品セット」を販売しており、ユニットセットのカラーは5種類、部品セットは2種類。部品を使いオリジナルのドアを組み立て、設置することも可能。
 「従来のドアは、1mの幅があれば周辺に1メートルの余地が必要でしたが、『ラクオス』は3分の1の余地で済みます。ただ、UDで今求められていることは、機能とデザインを兼ね備えているということ。ユニットセットには5色のカラーバリエーションを用意し、また部品セットを使ってカスタムできるのも利点です」(黒圖氏)

東芝 ボタンを工夫し視覚障害持つ人々に対応 多数の意見取り入れ操作性の向上図る
 東芝(東京都港区)では、車椅子使用者、視覚障害者、聴覚障害者などの人々も使用しやすい、UD仕様のエレベーターを販売している。
 「スペーセルEX」と呼ばれるエレベーターで、操作性の向上を果たすことで、障害を持つ人々に配慮した。
 まず操作ボタンの位置や大きさを工夫し、身長差がある場合や車椅子の使用者に対して操作をしやすくしている。
 視覚障害者に対しては、点字だけではなく、凸面表示になっている文字や記号を用いて触覚による操作を容易にし、色覚障害や白内障、弱視の人々にも見えやすいよう、オレンジ色の点灯ボタンやインジケーターを採用した。
 また、聴覚障害の人々に対しても配慮がなされている。「満員お知らせ灯」では、視認性の良い位置に満員を知らせるイラストと文字を点灯させる。「降車お知らせボタン」では、ボタンを押すことで本人に代わって他の人に降りることを伝え、「お知らせドアサイン」ではドアの開閉時にかご内の専用ドアサインが点滅し、開閉を音と光で知らせる仕組みだ。同社広報室の國本厚治氏は「開発段階から様々な意見を取り入れ、誰にでも使いやすいエレベーターを目指しました」と語る。




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