不動産トピックス

クローズアップ メンテナンスフリー編

2007.11.26 17:03

 ビルオーナーが管理・運営にあたって頭を悩ませるのがメンテナンス費である。初期コストを削ったために、ランニングコストが増加することも多い。そこで今回は清掃や修理だけでなく、長期にわたって建築物や設備を守る製品に着目。メンテナンス費削減に役立つアイテムを見ていく。

月星アート工業 油性インクが水だけではがれる新素材
 月星アート工業(兵庫県尼崎市)は日新鉄鋼のグループ企業である。ステンレスを用いた「ファインシリーズ」は、建材やエレベータなどの各種用途に用いられてきた。
 昨年開発に成功し今年から発売を開始した「ファインガード3」は、「ファインガード」シリーズ最新のトップコート。シリーズの中でも最高の対汚染性を持ち、ステンレス建材の問題点の1つであった指紋の付着を防ぐ高い耐指紋性を備える。
 また、汚れが簡単に水で落ちるため強い洗剤などを用いる必要がなく、硬質の皮膜は耐摩耗性に優れているため、メンテナンスにおけるコストの削減にもつながる。油性のマジックで書いたいたずら書きすら水をスプレーするだけで浮き上がって落ちていくため、清掃時に力を入れてこする必要性を省くのである。
 このコート剤は親水性被膜を表面に作り出すため、ステンレス独特の光沢は失われる。しかし、いぶしたような鈍い輝きを放つ落ち着いた意匠性は、都心で高い賃料を保つ高層ビルのエレベータ扉にもふさわしく高級感を醸し出し構造物の持つ雰囲気を妨げない。
 「このファインガード3はトップコート塗布後もさまざまな形に曲げることが可能で、曲げた角には多少のクラックが生じても目視では確認が不可能な程度です。しかも剥離しないので、安心して加工品をお使い頂けます」(徳永氏)

スマート・ブリック 留付けレールが剥離を防止 スリットによる作業効率化 高い低級性と耐候性 躯体を守るレンガ壁
 スマート・ブリック(東京都大田区)が開発した「スマート・ブリック」は、田が壁の乾式施工工法である。
 下地にスマートシートという防水シートを隙間なく貼り、その上からレンガ留付けレールを取り付ける。
 そのレールにスライスレンガをはめ込んで、最後に目地モルタルを施工していくという一連の工法は、シンプルな材料を使用することによって現場作業が簡単になるという特長を持つ。
 「レンガはオーストラリアの住宅でも長く使い続けられる非常に耐候性の高い素材です。また、温暖な場所や寒冷地などに関わらずに耐久性に優れており、しかもそのデザイン性が高いことによって、さまざまなシーンに利用されています。当社に寄せられた依頼の中には、上空を線路が通る博物館のアーチ部への施工など、レンガ剥離のリスクが高い案件においても信用を頂いています」(比戸氏)
 また、「スマート・ブリック」で使用しているレンガ留付け金具においては、従来品のガルバリウム鋼板にマグネシウムを合成して更に高い耐久性を実現した「高耐久メッキ鋼板(ZAM)」を使用。
 これらの金具とレンガによって強い太陽光やさまざまな気候、台風による雨風の打ちつけなどから躯体を保護することが可能となる。

豊興業 光沢復元しトイレ空間を復活 効果証明する1000基の実績 便器の上薬と一体化するコーティング剤
 豊興業(名古屋市中区)の「ZEROCOAT(ゼロコート)」は、撥水性の強い「ゼロコート01」、親水ガラス被膜を形成する「ゼロコート02」、床タイル部用の「ゼロコート03」と3種類の製品をラインアップするトイレ専用持続性コーティング剤。
 この製品の特長は、衛生陶器面の上薬と保護成分を完全に結合することで長期にわたる効果の持続を可能としたことである。
 「このコーディング剤は、釉薬(ゆうやく)と呼ばれる上薬と融合して新たな釉薬(ゆうやく)の代わりに表面をコーディングします。そのためはがれにくく、コーティング後には清掃時間を3割短縮することが可能となるのです」(日比野氏)
 他のコーティング剤と差別化を図った点は、この釉薬(ゆうやく)との結合にある。
 従来はコート成分が素材に乗っている形でコーティングしているものが多く、経年劣化によって効果が薄れていく。
 それと比較するとゼロコートは長期に渡って高い強度を保つため、汚れが落ちやすい状態を維持。結果として節水につながり、15%の節水を実現した。
 この特殊なコーティングによって、現在1000基以上のトイレを復元しているという。
 また、床用の「ゼロコート03」では不特定多数が利用するトイレの床にあっても、踏み込みに耐える強固な被膜を形成。高い耐久性と耐薬品性及び防汚性を実現。
 オーナーが気を取られやすい便器だけでなく、床の修復も可能とする。

パーフェクト・ウォッシュ 石材の汚れの浮き上がりを防止する 施工時と変わらぬ外観保長期保護を可能にする液剤
 パーフェクト・ウォッシュ(横浜市神奈川区)が開発した「PerfectWash&Coat」は石材の汚れを落とすのはもちろん、エフロやカビなどさまざまな汚れから石材を保護する塗布剤である。
 「『パーフェクト・ウォッシュ工法』は石材に起きるトラブルを未然に防ぎ、風化などの経年劣化に対しても長期に渡って保護を可能とする工法です。使用する液剤の『パーフェクト・コート』は石材の種類や環境によって塗布量を調整し、効果を保ちながら乾く時間の短縮に努めています」(加藤氏)
 普段、建築物や道路などに使用されている石材だが、吸水性が良いため無数に開いている穴から内部に染み込んだ汚れが浮き出て、石材の表面に濡れ色を発生させるというトラブルがしばしば見られる。
 その点、「パーフェクト・コート」は石材の吸収性を利用し、内部まで浸透。水分の蒸発を防げないため石材の通気性を保ったまま汚れの浮き上がりを防ぐ。裏面からの浸透実験でも、液剤の染み込んだ部位には汚れが浮き上がらないことが証明されている。
 かつて依頼された博物館の建造物では、汚れやすいため本来は屋内で使用するライムストーンが外壁に使用されていた。依頼を受けた時点ではカビや藻の発生に黒ずみ外観を損ねていたが、この工法によって10年経過後も施工時とほぼ変わらない状態を保っている。




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