不動産トピックス
クローズアップ 建材(天井・壁)編
2008.03.10 15:27
ビルの建材の中でも、壁や天井などの内装は直接利用者の目に触れるだけに、機能も外見も気をつかいたい所だ。今回紹介するのは、蓄光機能で防災の役に立ったり、低コストでの防汚が可能となったりする建材や塗料など。ビルのライフサイクルコストも考え、これらは今後長期的な視点から選んでいく必要があるだろう。
トッパン・コスモ/他 厚さ1mmで曲面にも使用できる不燃ボード 炎を通さないガスバーナーの炎通さず千度の加熱でも形状維持
トッパン・コスモ(東京都港区)は1㎜の厚さで、不燃ボードとして使用できる「グランデックス」を発売している。
グランデックスは同名のグランデックス(岐阜県関市)が開発したもので、アスベストを使わない天然鉱物ケイ酸マグネシウムを主成分とした薄型不燃ボードだ。
1㎜の厚さしかないが、火炎を貫通させず、また高い耐熱保形性能を持つ。厚紙のように適度な柔軟性もあるので、壁や天井などの平面部分だけではなく、曲線で構成される構造物や設備にも使用できる。薄型であるのと同時に、軽量でもあるので、施工場所は選ばないだろう。
切断や釘打ちなどの作業も容易で、特殊な技術などが必要ないためビルオーナーやテナント自ら施工する事もできる。
トッパン・コスモの経営企画本部、田島義教氏は「無機質であるため、ホルムアルデヒドなどの揮発性物質は含まれておりません」と語る。
実際、実験では直接ガスバーナーで至近距離から加熱しても炎は貫通せず、またボードそのものも、100〜1000度の各温度で4時間加熱し続けても形状を維持できるという。
太陽工業 デザイン性高くビルのアクセントにも有効建材 蓄光機能を持った膜材 夜間災害時にも役立つ
太陽工業(大阪市淀川区)は、膜面技術を応用した構造物や設備の、企画から施工までを行う企業。現在同社では「蓄光膜」で様々な設備や構造物を提供している。蓄光膜は、日中の太陽光エネルギーを蓄えて夜間に発光させるもので、日没後にしばらくの間、青白い透明感のある光を発する。
蓄光膜が施設の屋根として最初に使用されたのは、北海道釧路市の災害対策施設「釧路港津波漂流物対策施設」であるという。この事例では、屋外での通路の屋根として使用された。
同社広報担当の上田テツヤ氏は「夜間災害時、電力の遮断や照明施設の損害などで、避難路が分かりにくくなるという事もあります。このような場合、蓄光膜によって経路が示されていれば、少しでも安全確保に役立つと思われます」と語る・
実際、例えばオフィスビルでも駐車場からエントランスまで、通路屋根を取り付けるケースは多い。このような場所に蓄光膜を導入すれば、上田氏が言うような防災上の機能向上が可能となるだろう。
また、光の色や明るさが見た目にもやさしく、膜材なので曲線などのデザインも容易だ。これにより、ビル外観のアクセントとしても有効だろう。
日東紡 再生利用が可能なエコマーク認定天井板 不燃性など基本性能充実 オプションで抗菌機能も
日東紡(本部・東京都千代田区)の建材事業部門では、不燃天井板の「ソーラトン」を販売している。同社の発表によると、昭和13年に日本で初めてロックウールの工業化に着手したあと、天井板に活用。それが不燃天井板のソーラトンとなった。
同製品の特徴としては、まず環境に対する負荷が軽減されている事が挙げられる。材料の再生利用が可能で、エコマーク商品にも認定されている。
ホルムアルデヒドの規制対象外商品である事も重要だ。原料にホルムアルデヒドを全く使用していないので、シックハウス関連告示の規制対象外となっている。
さらに、不燃性能の他にも断熱効果や吸音性能などが優れており、様々な施設やビルに導入できる。
これらの基本性能とは別に、オプションで機能を追加する事も可能だ。例えば電磁波吸収機能。無線LANを使用するオフィスには効果がある。また抗菌・消臭機能は、大腸菌の増殖を抑えるなどの効果を発揮。他にも湿気をコントロールする機能や、マイナスイオンを発生させる機能などがある。
水谷ペイント/他 石油系の原料頼らず環境負荷を軽減 塗料では初めてとなる井上春成賞の受賞
水谷ペイント(大阪市淀川区)と京都工芸繊維大学、科学技術振興機構らが連携して開発された壁用塗料「ナノコンポジットW」は、世界初となるナノテクノロジーを活用した塗料。
この塗料の特性は、まず従来品を凌ぐ高度な対汚染機能が挙げられる。また、石油系原料に頼らない原材料構成となっているので、二酸化炭素排出などの環境への負荷が軽減されている。同時に、石油系の資源を持たない日本では、原料調達の容易性も重要な意味を持っている。
同社の小松満生氏は「これらの特長が評価されて、この塗料は『井上春成賞(井上春成賞委員会から)』と『工業技術賞(大阪工研協会から)』の2賞を受賞しました」と語る。
塗料で初めてとなる井上春成賞の受賞だが、同賞は日本の科学技術発展に貢献した業績に対して授与されるものだ。同じく工業技術賞も、工業化に寄与、もしくは将来的に寄与するものに対して送られる。
開発には高い技術力が必要だったにもかかわらず、低コストでの製造が可能となった事も、評価された理由だ。
トータルサービス 吸音効果を維持できるカラーコーティング 世界4000万㎡、国内1000万㎡の施工実績
オフィスビルのリフォーム事業を行なうトータルサービス(東京都新宿区)は、「捨てない・壊さない・取り替えない」をテーマとしたエコ技術で他社との差別化を図る。
同社が施工する「シーリングマジック」は、吸音天井材のパウダーカラーコーティング。米国が技術の発祥地で、同社が販売・施工の代理となる。昨年6月時点で施工実績は世界規模で4000万㎡、国内でも1000万㎡に達したという。
FCカウンセリング事業部の山田満氏は「オフィスビルの天井などで使われている、岩綿吸音板の質感や機能性を損なわずに、カラーコーティングができます」と語る。
テナント入替え時に、例えば天井が汚れていたとする。取替えか塗り替えを検討する事になるが、多くは施工費の安い塗り替えを実施するだろう。しかし通常の塗料では、岩綿吸音板の表面を塗り潰してしまい、吸音効果が減る。
同技術では、コーティング剤にシリカ粉微粒子を使用する事で、岩面吸音板特有の細かな穴を防がない。また、コーティング剤自体も表面被膜での吸音機能を持っている。施工も早く、一日あたり1000㎡の施工も可能との事だ。
マテリアルハウス システム導入には高度な設計技術必要 太陽光を取り入れ自然な明るさ確保
地下階などの太陽光を取り入れられない空間では、グラスファイバーなどを使って光を届ける設備が導入されているケースも多い。
マテリアルハウス(東京都大田区)では、鏡による反射を利用した太陽光導入システム「光ダクトシステム」を設計・制作・施工している。このシステムは空調ダクトなどと同じように、建物内にダクトを設置。屋外から光を取り入れ、鏡の反射を利用して必要な空間に届ける。
これにより、昼間でも照明をつけなければならなかった地下室ではその必要がなくなり、消費電力量の削減が可能となる。また、光源は太陽なので、より自然環境に近い明るさが得られる。光ダクトシステムの構造はシンプルだが、実用化には高度な設計技術が必要で、同社では様々な条件をシミュレーションし、その建物にあった最適なプランを提案する。
一定のスペースが必要なので、建物の設計段階で導入の可否を検討しなければならない。しかし光の反射を利用して壁面を光るようにするなど、天井からの照明としてだけではないユニークな発想にも対応できる。