不動産トピックス

クローズアップ 防滑編

2008.09.08 10:56

 9月に入り、そろそろ台風が日本本土に近づくシーズンがやってきた。そこで大量の雨と共に気にかかるのが、スリップによるケガである。ビルのオーナー側の管理義務違反という判例も出るほど、足元の管理は重要なもの。今回は、各種防滑工法に取り組む企業を紹介する。新しいサービスも登場する、現在の防滑事情とは。

メンテックカンザイ 床材を選ばない新工法 素材の持ち味を妨げない透明アクリルシリコン樹脂
 ノンスリップマスターは、メンテックカンザイ(静岡市駿河区)が施工する滑り止めコーティング工法である。この工法に、新たに加わったのがノンスリップマスター「コートプロ」だ。
 従来のノンスリップマスター施工で防滑対象となっていた部材は石材のみだった。ガラスや金属、木材の滑り止めは素材の性質上難しかったのである。
 石材にミクロレベルの穴を空け、そこに溜まった水の表面張力を利用した従来工法とは異なり、新たにラインアップされた「コートプロ」は、特殊骨材が入った凹凸のあるコーティングで足元に「引っかかり」感を生み出し、防滑を実現する。同社はこの方法の導入によって、今まで不可能とされた素材の滑り止めを可能とした。
 「『コートプロ』は特別な骨材パウダーを含んだ透明な特殊樹脂を用いた工法です。従来品では難しかった石材以外の床材にも使用することができますので、エントランスや浴室、通路などさまざまな場所でご利用頂けます」
 この工法には特殊アクリルシリコン樹脂が用いられている。密着性が高く、また含まれている滑り止め用骨材も剥がれにくいため、高耐久性を維持しているとのこと。また、コーティング剤に使用されている樹脂が透明のため、素材の持つ風合いや色合いを邪魔しないのである。

アイティーオー 障害者に無償で施工技術を提供 カルシウム分を溶かし出す特殊溶剤利用で吸着力向上
 アイティーオー(京都市下京区)の防滑部では、水の表面張力を活用した「ファイブディフェンス工法」を提供している。この工法はフッ化アンモニウムを用いた溶剤で石材に含まれるカルシウム分を溶かし、床面のタイル及び石材にミクロレベルの穴を空けるものだ。ごく小さな穴に溜まった水が表面張力によって靴裏を吸着するのである。歩行頻度にもよるが同社が施工するファイブディフェンス防滑施工は、約3年〜5年の間効果が保たれるとのこと。施工した場合にも床及び路面自体の磨耗度がほぼ変化しないため、安心して導入することができる。
 同社では、この防滑施工技術を、京都市を中心に全国的に展開すると共に、全国の福祉関連施設に対して無償で技術指導を行っている。
 「もともと、前身のファイブディフェンス(京都市下京区)において、京都府知事賞を頂くなど、障害者雇用に力を入れてきました。当社は簡単に施工可能なオリジナルの工法を開発し、清掃が可能ならば体に障害があっても問題なく施工できるように配慮しています。このような取り組みによって、安価な賃金で働いている障害者の労働条件の向上につながるのではないかと考えています」
 セルフ防滑キットの販売等も行っており、やる気さえあればセルフ施工でも十分可能なのだという。しかし防滑は、一般的には敷居の高いもの。まずはプロに任せた方が良いだろう。

ステップ 約7ミクロの穴に溜まった水が吸着力生む 環境負荷を最小限に留める中性溶剤を使用
 ステップ(東京都中央区)は「BOUKATU防滑工事」と呼ばれる滑り止め工法を提供している。
 この工法は中性溶剤を使用して床面に使用されている石材に直径約7ミクロメートルの小さな穴を空け、そこに溜まった水の表面張力によって靴の裏との間に吸着力を生み出すというもの。従来は酸性の溶剤を用いることが多いが、同社の施工は、「スーパーΛ」と呼ばれる中性溶剤を使用する点が特徴的だ。
 「溶剤によって表面張力を生み出す工法は、酸性溶剤を採用している場合が多いのですが、当社では、中性の溶剤を用いることで床材に与える影響を最小限に留めています。それが評価され、銀座の老舗デパートでこの工法が採用されております。該当するフロアにはスーパーブランドも店舗を構えており、高級感のあるフロアですが、『BOUKATU防滑工法』ならば外観を損ねませんので、その点も評価して頂いているようです」
 基本的には酸で溶かすタイプの施工となるため、酸やアルカリの性質が強いものもあるといわれているが、同社では環境への配慮や施工時の安全を考慮して、より安全性の高い溶剤を用いているのだという。
 広さにもよるが、一般的には1フロアならば半日〜1日で施工が終了するため、テナントが入居中の物件でも慌てることなく安心して依頼することができる。




週刊不動産経営編集部  YouTube