不動産トピックス
クローズアップ ユニバーサルデザイン編
2008.10.13 17:48
年齢や身体的ハンディキャップなどに関わらず、全ての人が快適に利用できるビルは、工夫次第で実現可能だ。ユニバーサルデザインなどとも昨今は呼ばれているが、今回はその中でも特に「ドア・扉」に焦点を当ててみる。力の弱い利用者でも簡単に開けられたり、狭い場所で車椅子に座ったままでも開け閉めできるなど、最新の製品は進化が進んでいる。
有紀 踏み板に体重をかけると扉が開く 電気代が全くかからない自動ドア
有紀(福島県会津若松市)は桐などを使い、住宅から神社仏閣まで設計施工している。同社では今年3月から、電気代が全くかからない自動扉「オートドアゼロ」を販売している。扉の前の床に踏み板を埋め込み、体重によって駆動部を動かし、開閉する仕組みだ。基本的には引き戸タイプとなる。
代表取締役、橋本保氏は実際の導入事例として次のように話す。
「既にとある町の町民センターや、一般企業の事務所にも導入されています。また、扉は吊り下げ式ですので、床部にレールを敷く必要はありません。もともと、車椅子の使用者にも快適に使ってもらおうと開発したものですので、レールなどの段差を出さないようにする目的もあったのです」
踏み圧、つまり体重は20㎏から。また踏み込んだ時の沈みは、20㎜で、ほとんど沈み込みを感じない程度だ。
施工も条件に応じて柔軟な対応が可能との事。踏み台と駆動部分の設計施工のみから、扉一式を取り付けるという場合まで対応できる。仮に全てを発注するとなると、施工費用は64万円程度。本体(稼動ユニット)が40万円で、その施工費用が10万円となる。その他、会津桐を使用した高級感ある扉と、その枠の建材と施工費用が14万円で、合計すると64万円となる。扉のデザインも複数用意されており、オフィス環境や雰囲気に合わせた選択ができる。
文化シャッター 引き戸と折れ戸を組み合わせた扉 リニアモーター内蔵 静音性に優れた開閉
文化シャッター(東京都文京区)では、ユニバーサルデザインの各種扉・ドアを製造している。代表的なものは「スライドーレ」「ヒクオス」「カームスライダー」など。スライドーレは、引き戸と折れ戸の組み合わせのようなタイプ。
「使用者が扉を横に滑らせるように引くと、扉は折れながら開きます。押入れなどを想像すれば分かりやすいですが、一般的に引き戸タイプの扉は、『戸袋』と呼ばれる部分が必要になります。扉をそのまま横に滑らせるので、その分スペースが必要なのです。しかしスライドーレの場合、引き戸の操作で折れ戸の動きをするので、こうした戸袋は必要ありません」(マーケティング部係長・伊藤宏氏)
ギア機構を採用し、少しの力で簡単に開くようになっている。また全開時にそのまま開放状態を維持するのも、自動で静かに閉めることもできる。ヒクオスは押しても引いても開くタイプ。こちらも引き戸とは違い、戸袋は必要ない。また、同製品はリニアモーター式電動タイプも用意されている。静音性に優れ、通常タイプよりもさらに軽い力加減で開閉が可能。
建物の構造上、どうしても引き戸にするしかない場合もある。カームスライダーは引き戸タイプだが、こちらは扉自体が二連引き込み(二枚の扉を重ねて収納する事)となっており、戸袋スペースは間口の約半分程度の幅があれば設置できる。
杉田エース 前後両側から「押して」開ける 特殊構造により指つめ事故防止
杉田エース(東京都墨田区)でも開閉をより楽に行える扉を販売中。文化シャッターが引いても押しても開く扉を提供しているのに対して、杉田エースからは前からでも後ろからでも「押して開ける」扉が出ている。
「ラクオス」は特に介護の視点から設計された製品。例えば車椅子の使用者などは、ドアの開閉の際、押して入れる分には楽だが、引くタイプだと手間取る可能性もある。一般的なドアは、開閉は一方向のみなので、押して入った場合は引いて出る、というケースが多くなる。「ラクオスは」はそうした不便さを解消し、両方向から「押して開く」事を可能にした。開閉時に力が分散されるのを避ける設計となっているので、軽い力で動く。また、耐久テストも100万回の開閉動作をクリアしているので、信頼できる。扉は折れ戸タイプなので、省スペース設計となっている。
また、ドアの隙間を隠す「エッジ材」というものも取り入れられているので、先の省スペースという特性と合わせるとトイレなどのドアにも適するだろう。吊り戸タイプなので床部のレールも必要はない。扉のカラーバリエーションは全5色。扉が屈折する部分には、指をつめる、引き込まれるという事故も発生しやすい。同製品は樹脂製ギアと特殊なアルミ製センターポールの構造となっているが、そのセンターポールが回転運動をしないため、こうした事故とは無縁だという。