不動産トピックス

クローズアップ 備蓄食品編

2009.02.09 15:02

 大震災の危機が日に日に高まる昨今、「あの時防災対策を行っていれば良かった」という後悔の念を抱く前に、何か一つでも防災対策を講じておきたいところである。災害時、まず必要となるのが水と食料であるが、その備蓄食品も近年では省スペース・味重視のラインナップが増え始めている。危機意識の高まりと共に進化し続けている備蓄食品の今を追う。

ホリカフーズ 日常の暖かい食事を楽しめる技術 野菜不足も解消する栄養豊富な食事提供
 ホリカフーズ(新潟県魚沼市)は、暖かいご飯が食べられるという、災害時用備蓄食品を打ち出した。ライフラインの寸断した被災地でも、日常と同様に暖かくて美味しい食事が楽しめる「レスキューフーズ」である。
 阪神・淡路大震災が発生したとき、被災者への食事は勿論のこと、現場で救急活動を行う消防士への食事も確保が困難となり、特に暖かい食事がないことと、野菜不足に悩まされていた。同社は、この問題の解決策として新しい防災食品を開発。甲南女子大学教授の奥田和子氏監修の下で、栗五目御飯とつくねと野菜のスープ、そして発熱セットがパッケージングされた初代レスキューフードが誕生した。パックの中に発熱剤と食品を入れ、発熱溶液を注ぐと高熱の蒸気が発生し、それが食品を温めるという仕組みだ。また、約1年前からはビーフカレー、牛丼、ビーフシチューなどにもラインナップを広げており、味のバリエーションも増えつつある。
 同社が本社を置く魚沼市も、かつて2度の大震災に見舞われているが、その時「レスキューフーズ」を地元に配布したところ好評を博したという。
 「非常食も一食、二食までなら我慢できますが、三食以上同じ食事が続くと飽きがきてしまいます。被災地においても、日常の食卓で食べている様々な味を暖かくご提供できることが、この『レスキューフーズ』の最大の特徴です」

日本味紀行 おいしい防災食で被災地のストレスを緩和 食品メーカーのノウハウで味と保存性両立
 日本味紀行(大阪市中央区)では、「おいしさ」を追求した備蓄食品を開発しており、シーズンメール(大阪市中央区)を通して販売を行っている。これまでの備蓄食品は乾パン、缶詰など、第一に飢えを凌ぐためにあった。しかし、実際に被災した人は「普段の食事が食べたかった」「味気のない食事で元気が出なかった」との体験を話す。
 元々食品メーカーである日本味紀行は、これまでの食品作りのノウハウを防災用備蓄食品に活かし、5年間保存が可能な「美味しい防災食」を開発した。さば味噌煮から筑前煮、肉じゃが、鶏スモーク、さつまいものレモン煮など、メニューは和総菜を主体としたバラエティ豊かな品揃えとなっている。アルミパウチ袋で保存しているため、缶詰と比較してかさばらず、缶が歪んで開封できなくなるということもない。アルミパウチ袋に保存している利点は、手で開封でき、またお湯や水などを使用しなくとも、すぐに食べられることだ。
 「当社では、防災食を『保存できればそれで良い』とは考えず、保存性に加えて美味しさも追及しています。被災地はストレスがたまりやすいので、美味しい食事は必需品です」
 同製品は加熱することでより美味しく食べることもできる。消費期限が切れたら通常の食事としても食べられる、美味しい防災食である。

ミドリ安全 1人が3日生きる最小限の防災食品 スリムパッケージで省スペース備蓄可能
 ミドリ安全(東京都渋谷区)では、各種の防災用備蓄品を提供しているが、その中で必要最小限の水と食品を用意し、コンパクト化をはかった商品「サバイバルスリー」を提案している。
 これは3年間保存可能の「カロリーメイトロングライフ」を6個、1パック125㎖の耐久性に優れたパッケージを使用した飲みきりタイプの飲料水「ミドリサバイバルウォーター」を6個、そして保温・断熱性に優れた緊急用両面シート「エマージェンシーブランケット」が1セットとなっているもので、一人が3日間生きるために必要な最小限のものをまとめたものだ。パッケージタイプの飲料水はペットボトルと比較して破損しにくいと同時にかさばらない配慮がなされている。外箱寸法は300×150×60mmのコンパクトサイズで、最小限のスペースで備蓄できる。
 「社内に一括保管しても良いのですが、この『サバイバルスリー』はコンパクトサイズで個人のロッカーやデスクにも保存可能です。また、セットにある『カロリーメイトロングライフ』は乾パンに比べて5台栄養素と食物繊維が豊富で、また少ないスペースで効率の良い備蓄を行うのに最適です」
 同社ではこの他にも多岐に渡る備蓄商品を提供しており、建物の規模に応じて商品を選択したい。

備蓄Pick Up
 テナントビルで防災用品を備蓄する場合、館内ワーカー分の飲料・食料を確保するためには広い倉庫等が必要となる。だが地震等が発生すると、備蓄されているスペースまでの移動が困難となるライフラインが寸断されればエレベーターは停止する。また、安全が確保されるまで、館内ワーカーは今いるフロアから上下に移動できないのが通常であるからだ。これらの理由から、防災用品は各フロアに用意しておきたい。
 しかし防災用品を備蓄するスペースがあるなら、むしろ賃料を取ってテナントに賃貸したいと考えるのが一般的で、防災用品の備蓄は各々のテナントに任せているケースが大多数である。そこで、防災用品の省スペース化は重要な課題となるのである。
 1日以内に救援活動が開始されるのであれば、防災用品は必要最小限のアイテムで事足りるが、長期にわたり救援を待たざるを得ない場合は、防災用品に「おいしさ」「暖かさ」など一工夫あるとストレス緩和に繋がる。
 備蓄スペースがない場合は、テナントのワーカーに必要最小限の飲料・食料を確保してもらい、オーナーは素早い救援活動を援護するアイテムと対策(ラジオや避難誘導等)を用意しておくことが望ましいだろう。




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