不動産トピックス

クローズアップ 耐震補強編

2009.07.27 16:24

 日本でビルを経営する上で避けて通れない地震発生リスク。ここ最近は毎年のように大地震が日本のあちこちで発生し、人々の心胆を寒からしめている。特に古いビルの場合、現行の建築基準法における耐震性を満たしていないビルでは早急な対策が求められる。今回は耐震に関連した技術を紹介する。

松本鉄工所 合成デッキ用いた耐震補強壁 コスト・工期を大幅短縮可能
 松本鉄工所(福井県敦賀市)は、耐震補強壁の「M・T耐力壁」を開発している。
 この製品は合成デッキを使用した耐震補強壁で、仮枠鉄筋の設置をせずとも耐力壁を設けることができる。
 「M・T耐力壁には補強に必要な部分以外の仮枠など余分なものを用いないため廃材が極度に少なく、環境に配慮した補強壁であるといえます」(代表取締役 松本嘉玉氏)
 鉄筋とコンクリートで組む補強壁と異なり必要な人員も作業工程も大幅に削減されるため、工期は約7日、最短で3日程度で完了するという。
 期間が短い上に関わる人員も少人数であり、さらに補強に使われる素材も汎用材のみで構成されるため、コスト面でもメリットは大きい点も従来の耐震補強に比べ魅力的であるといえる。
 また、施工時の騒音や振動もやや低減されるそうだ。
 「建物の耐震化はオーナーにとって最重要課題のひとつですが、工事期間の長さやコストが障壁となって多くの建物で対策を遅らせてしまっています。M・T耐力壁は耐震補強における施工の迅速性と経済性に優れており、今までの耐震補強をしたくてもできなかった人に喜ばれています。また、当社では鉄骨・鉄筋建築物以外に木造建築用の耐力壁も用意しています。こちらはさらに工期が短く、条件次第では即日完了も可能なので住宅などの耐震化にもお役に立てると思います」(松本氏)

アークリエイト 安・強・短の耐震鉄骨技術 構造の無駄を削減し無柱の大空間を確保
 アークリエイト(高知県高知市)は安価で強度に優れ工期も短い耐震鉄骨技術「WAWO構法」を開発、施工している。
 鉄骨建築において、強度を高めるためには柱や梁を大きくすることが一般的であるとされる。しかし、柱や梁が大きくなればその分、鉄骨の重量が増加し地震時にかかる負荷が大きくなる。
 これに対しWAWO構法は鉄骨のスカラップや裏当金、エンドタブなどを省くことで余分な負荷を減らしている。これにより支柱の数も削減することができ、無柱の大空間構築が容易になっている。
 また、構造をシンプルにすることで溶接箇所も従来工法の40%に削減されており、これにより工期とコストの削減につながっているのである。
 さらに溶接時の鉄骨に与えるダメージも削減されることが建築の強度確保にも役立っている。
 「WAWO構法はすでに全国の大小さまざまな建物で施工実績を重ねています。この構法は構造がシンプルであるために欠陥ができにくく地震発生時の耐力も高いため、発声が懸念されている東海・東南海・南海地震や直下型大地震の被害を最小限に抑える上で貢献するでしょう」(代表取締役 内田昌克氏)

飯田製作所 座屈止め不要の耐震補強工法 角コラム採用で強度を確保 施工期間短縮し安全性向上
 飯田製作所(東京都江東区)は、短い工期で安定性を確保した耐震補強ブレース「IS耐震工法」を開発・提案している。
 従来、多くの現場で使われてきた耐震補強ブレースは強度確保のため、座屈止めを設けて補強を行っていた。
 しかし、座屈止めを設けることによるデメリットは少なからず存在する。窓枠付近に取り付ける場合、開口部が制限され採光率が下がる上、見栄えも悪くなり工期も延びる可能性がある。
 また、学習塾や病院のように子供が利用する可能性のある建物では、施工後に座屈止めをとブレースの間に上ることで落下事故を招くことも懸念される。
 IS耐震はこうした耐震補強ブレースにH型鋼ではなく角コラムを用いることで鋼材自体の強度を高め、座屈止めなしでも十分な強度を持たせている。これにより、開口部を大きくし室内の明るさを確保できるのである。
 また、H型鋼ではなく角コラムを用いることで、鋭角部を処理するための小口仕上げも不要となり工程の短縮化につながっている。
 さらに重量面での違いはほとんどなく、設置場所が制限されることもない。
 「従来の耐震補強ブレースの場合、現地で実測を行ってブレースの角度を確定する必要がありましたが、IS耐震はブレース角度の自由度が大きいため、造り置きによる製作期間の短縮も可能となり工期を大幅に削減します」(営業部部長付 飯田茂氏)




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