不動産トピックス

クローズアップ 悪臭対策編

2009.10.12 17:05

 悪臭の発生はビルの利用者のに大変不快感を与えるのみならず、外部に排出するにおいに関しては地域社会においてもトラブルを誘因するきっかけとなりかねないやっかいな問題である。現在はさまざまな技術を応用した脱臭製品が登場しており、ビルの環境快適化に貢献している。

北炭化成工業 メンテナンスの労力も大幅削減 円筒形カートリッジで高効率化
 北炭化成工業(埼玉県戸田市)は活性炭を利用した脱臭装置の開発・販売を行っている。
 活性炭は悪臭の原因となる物質を吸着させることで脱臭を行うが、使い続けることで吸着量が一定を超えると、脱臭能力を失い、効果が得られなくなってしまう。
 通常、この状態になった活性炭は廃棄して新たな活性炭に交換することで、再度脱臭を行うことになるが、同社はこの活性炭をリサイクルすることで、買い替えよりも低価格で脱臭能力を回復させることを可能にしている。
 同社取締役本部長の中津山憲氏は「買い替えに比べ約2割コストを削減できます。また、廃棄物を出さずにリサイクルすることで地球環境にも優しいというメリットがあります」と述べる。
 また、同社の製品は活性炭の使い方にも工夫が凝らされている。活性炭はさまざまなメーカーの脱臭装置で使用されているが、同社では活性炭を詰めるカートリッジを円筒型にすることで空気と触れる面積を増やし、脱臭効率の向上を図っている。
 構造としては、円筒型カートリッジの外周にドーナツ状に活性炭を詰め、その内側に脱臭する空気を通すことで、空気と活性炭が触れる表面積を拡大。より多くの悪臭の原因物質を短時間の内に吸着させる。
 カートリッジが円筒形である利点はほかにも存在する。脱臭効率が高いことに加え、設置・交換が簡単であることが挙げられるのだ。
 従来の活性炭型脱臭装置の多くは、活性炭の取り扱いが煩雑であるため、交換する際にはメーカーに依頼する必要があり、出張コストが発生していたのに対し、同社の機器はカートリッジを装置の中に積み重ねるだけなので、専門知識や技術を持たない人でも、簡単に設置・交換ができる。そうした余分なコストがかからない点も同社製品の強みである。

富士通ゼネラル 室内のにおいを強力に脱臭 フィルターは自動的に清掃
 富士通ゼネラル(川崎市高津区)は、新たに「ルーム脱臭機」を発売している。
 同社は、建物の高気密化やペットの室内飼育数の増加などによる建物内のニオイの多様化に伴う消費者の悩みに対応すべく、平成17年からにおいの除去に特化した脱臭機を開発・販売してきた。今回発売した「ルーム脱臭機」は、同社独自の3段階の脱臭方式「3WAYデオドラント」の構造を見直し、脱臭力を一層強化することにより、脱臭スピードを従来機種比3倍に高め、タバコ、ペット臭などのニオイを素早く除去し、不快なニオイのない快適な室内環境を実現させる。
 また、脱臭フィルターの性能を自動再生する「脱臭フィルターオートクリーン」機能を搭載し、フィルターに付着して残存しやすい油成分を分解・除去するとともに、フィルター交換なしに10年間使用しても脱臭性能を90%以上維持することが可能である。さらに、インフルエンザの流行等によりニーズが高まっている除菌機能についても、従来の吸い込んだ空気を「UVランプ」で除菌する機能に加え、「プラズマイオン」の放出により室内で浮遊するウィルスなどの菌や壁・机などに付着した菌を除去する機能を搭載している。

三菱樹脂 悪臭を分解するパーテーション
 三菱樹脂(東京都中央区)は、パーテーションの表面材に光触媒機能を有する酸化チタンを塗布した光触媒コートの可動間仕切「ダイアパーティション」を開発、10月から受注を開始している。
 光触媒コートの可動間仕切「ダイアパーティション」は、室内の蛍光灯や太陽光に含まれる紫外線により有機物を酸化分解するため、付着した油やニコチン等の汚れを分解する防汚効果やタバコやアンモニアの悪臭を分解する防臭効果、菌の増殖を防ぐ抗菌効果、シックハウス症候群の原因物質とされているホルムアルデヒドの分解効果があるという特徴を持つ。
 また、一般に光触媒機能付きの建材の多くは外装材を中心に開発されているが、同社のパーテーションは、光量(紫外線量)の少ない室内でも十分に効果を発揮するように、より分解活性を高くすることを目的に開発された同社製の樹脂フィルム積層鋼板「ヒシメタル」を表面材に使用しており、紫外線量の少ない室内でも蛍光灯の明るさ(500~1500ルクス程度)で各種の分解性能を発揮することができる。また、耐久性の面では、汚れの付着と洗剤での雑巾拭きを交互に1000回繰り返しても、分解性能を維持することができるという実験結果が出ている。さらに、「帯電防止層」を付加したことにより、塵やホコリが付着しにくい性能も備えている。ほかにも、防汚(セルフクリーニング)効果を有しており、壁に付着した油やニコチンなどの落ちにくい汚れが酸化分解されて、簡単に拭き取れるといったメリットもある。

荏原実業 自然素材のローコスト脱臭剤 使用後は肥料への転用も可能
 荏原実業(東京都中央区)は、脱臭剤として広く利用されている活性炭に代わる新たな脱臭剤として、土を原材料にした独自の腐植質脱臭剤「ボエフ」を開発した。
 ボエフの長所はローコストかつ環境負荷が低い点にある。
 原材料が土であるため活性炭の弱点である湿気に強い。そのため、活性炭に比べて長期間に渡って脱臭効果が得られる。また、脱臭剤として利用した後は肥料へのリサイクルが可能である。
 さらに、生成時に発生するCO2の量が活性炭の約7分の1と少ないなど、地球環境に優しい脱臭剤であるといえる。
 ボエフは対象となる臭気の種類に応じて4種類の製品が用意されている。その中でも主力となるのが、硫化水素に代表される酸性の悪臭に対応する「EPSR1」である。
 また、同社ではさまざまな脱臭装置で使用される脱臭フィルター「EKOフィルター」を開発販売している。このフィルターは慶應義塾大学との共同研究によって平成17年に開発されたもの。
 フィルター内部は臭気成分を逃しにくいハニカム構造となっている。このフィルターに塗布された高性能触媒が吸着した悪臭の原因物質を分解する。




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