不動産トピックス
クローズアップ 遮熱工法編
2009.10.19 15:07
建物であるビルには日中つねに日光が当たり続けている。これにより、建物の外壁部分はもちろんのこと、浸透して内側の気温も上昇してしまい、屋内の空調効果を落とすこととなる。こうした屋外からの熱を遮断し、空調効果を高め、ヒートアイランド現象の発生を防ぐのが遮熱の効果である。
桑本総合設計 既存建物を魔法ビンにする 「省エネ熱反射シート工法」
桑本総合設計(鳥取県米子市)では、中空の熱反射シートを使った「省エネ熱反射シート工法」を提案している。通常、熱移動は輻射・対流・伝導の三通りで移動するが、これまでの断熱材では、特に輻射熱で伝わる熱エネルギーに対応することはできなかった。
同社の「省エネ熱反射シート工法」では厚さ8mmの熱反射シートを用い、建物の屋根や壁に施工することで、輻射熱についても97%を反射することができる。
「特に金属屋根やスレート、瓦屋根では、このような輻射熱の影響が大きく、また、断熱材ではそれに対応することはできませんでした。中空のシートによって熱を完全に遮断することで、あたかも建物全体が魔法ビンのような状態となります」(桑本氏)
同時に、「省エネ熱反射シート工法」では建物からの放熱も防ぐことができることから、遮熱材と異なり、冬場の断熱にも高い効果を発揮する。
「また、熱反射シートは両面にアルミ合金が貼られており、強度と耐熱にもすぐれているため、建物内部で高温・低温となる設備等に施工することも可能です。蒸気ボイラーや冷凍配管の放熱についても、熱反射シートを使用することで建物内部への放熱を防ぎ、結露等も防ぐことができます」(桑本氏)
日本テレニクス 中空セラミックバルーンを塗布 場所を選ばず簡便に高い効果
日本テレニクス(神奈川県相模原市)では、極小の中空セラミックバルーンを塗布することで、簡便な施工によって遮熱効果が得られる遮熱工法「セラミックコートSE40」を開発、提案している。
「セラミックコートSE40」は水性塗料を媒介として、直径40ミクロンの中空セラミックを屋根や外壁に塗布、これによって白色の場合99%以上の日射や赤外線を反射する。色を選ばないのも同工法の特徴で、グレーであっても90%以上を反射することが可能だ。
また、媒介となるシリコン樹脂は広範囲の素材に適合性があり、金属素材からセメントまで様々な場所に塗布することができる。
「優れた遮熱効果に加えて、施工の簡便性が同工法の特徴です。通常の塗料とほぼ同様に、ハケ、ローラー、スプレーなどを使って作業することが可能です。集合住宅の保温や結露防止のため、住人自身で施工した例もあるほどです」
と同社代表の長友氏は語る。同時に、セラミックを利用していることで高い耐久性を有していることも「セラミックコートSE40」の特徴だ。通常の建物の遮熱以外にも設備に塗布することで熱による劣化や放熱、やけどを防止することが可能だ。
Mpro 業界初の再帰反射塗料 乱反射がなくヒートアイランド対策にも
土木設計を行うMpro(名古屋市千種区)では、太陽熱再帰反射塗料「ロードクーラー」を提案している。シーエムテクノ(岐阜県大垣市)が開発した「ロードクーラー」の特徴は業界初の再帰反射作用だ。これは、これまでの遮熱塗料においては反射光を鏡のように反射していたのに対して、入射光を光源に向けて反射することができるというものだ。
「これまでの遮熱塗料では、反射した光が周辺の壁面や地表面に照射されていたため、複雑な形状の建物や低層部分に施工すると、かえって周辺の建物を暖めてしまい、十分な効果が得られない場合がありました。これに対して『ロードクーラー』では光源に対してまっすぐに反射するため、このようなことがありません」と同社代表の鶴阪氏は語る。
「ロードクーラー」のこのような特長を生み出しているのは直径0・1~0・5mmほどの光反射ビーズだ。球体のビーズを遮光塗料上に均一に散布することで、入射光が乱反射しない効果が得られる。
「施工した建物への遮熱効果はもちろん、地面や周辺の建物への乱反射を避けられることで、周辺地域のヒートアイランド対策にも有効です。また、比較的低コストでの施工が可能であることから、既に通常の遮熱塗料を施工していながら、十分な効果が得られていない企業への導入が進んでいます」(鶴阪氏)