不動産トピックス
クローズアップ 太陽光発電編
2009.11.09 14:35
電力取引の自由化、省エネルギー法改正等によって、注目をあびる太陽光発電。施工することだけではなく、その後、いかに電力を運用するかという点に焦点も移ってきている。そこで当欄では、改めて様々な太陽電池の特徴を紹介するとともに、電力の運用まで見据えた商品を紹介していこう。
カネカ 薄膜シリコン電池の特性を活かし遮熱効果も 設置面積を増やしスペース有効活用が可能
化成品等の製造販売を行っているカネカ(大阪市北区)では薄膜シリコンによる太陽光創電システムを提案している。
同社の製造している薄膜シリコン太陽電池は結晶系シリコンに対して、約100分の1のシリコンの厚みで発電能力が得られるという特徴があり、また、ガラスなどの基板上に直接シリコン層を形成して生産するため、大量生産による低コストが特長となっている。
これまで従来の薄膜シリコン太陽電池は結晶系シリコンよりも電力への変換効率が低いというデメリットがあったが、これに関しても、同社では、電気に変換できる光の波長が異なる2つのシリコン層を備えた「薄膜シリコンハイブリッド太陽電池」により変換効率の高い薄膜シリコン太陽電池を開発している。
加えて、低コストのメリットを活かして、設置面積を増やし高密度設置による発電を可能としている。同社の薄膜シリコン太陽電池は、太陽電池モジュールに配置されたセルが影の影響を受けにくく、発電能力の低下が生じにくい形状に配置されている。
これにより、通常、モジュールの設置に当たっては、モジュールを傾斜させ、高さの2倍程度の間隔をあけなければならないが、同社では5度という低角度でのフラット設置により、屋根の隅々まで高密度での設置が可能だ。同時に太陽電池モジュールによって屋根面をほぼ覆うことができるため、これによって屋根面への直射日光を遮る事ができ、遮熱効果を得ることも可能となっている。
太陽工業 窓ガラス一体のシースルー太陽電池
大型建築の膜構造などを開発している太陽工業(大阪市淀川区)ではシースルー太陽電池ガラス「太陽スカイライトソーラー(TSS)」を国内外に販売しており、太陽光発電ニーズの高まりを受けて、今夏からは主要部材だけの商品供給を始めている。
TSSは薄膜の太陽電池を2枚のガラスで挟み込んだ構造で、太陽電池に1mm間隔でレーザー加工を施すことで、透明性を保ちながらも太陽光発電機能も併せ持つ、建材一体型の太陽電池。
主にガラス張りの屋根や壁面などに使用されており、すでに学校や病院、商業施設などをはじめ、国内で約70施設に導入されている。
太陽光を電気に変える変換効率は4~5%と通常の薄膜太陽電池の半分程度だが、1㎡あたり最大出力約50Wを確保する上、採光により照明コストを節約し、日射を遮ることで空調負荷の低減も可能だ。
商品企画はサイズが980mm×950mm、光透過率が約10%・最大出力42Wの「KN-42」と光透過率が約5%・最大出力50W「KN-50」の2種類を発売中である。
京セミ あらゆる方向の光を取り込める球状の太陽電池
京セミ(東京都新宿区)では、独自製法によって球場のシリコン「スフェラー」を製造、これを用いた様々な形状の太陽電池を提案している。
従来の平面型太陽電池は、結晶シリコンの塊をスライスして作るため、製造過程で多量の削りくずが生じ、原料の無駄が発生していた。これに対してスフェラーは溶解したシリコンを自由落下させ、無重力状態で自然に真球化させる製法のため原料ロスがほとんどなく、コストダウンと有限資源の活用を実現している。
こうして生成されたスフェラーは、あらゆる方向の光を取り込めるという特徴をもつ。
従来の平面型太陽電池では、直射光以外の光は利用できず、太陽が季節や時刻に応じて様々な位置をとるため、安定した電力を得るには太陽を追跡してその向きを変える必要があった。
スフェラーは受光面が球状であるため、反射光・散乱光も余さずキャッチし、太陽を追跡する必要がなく、高い発電効率を実現している。
また、スフェラーは直径約1・8ミリで直列、並列の接続が自由であるため、たとえば柔らかなフィルム基板上に並べた曲がる太陽電池やドーム型モジュールなど、多様な形状の製品をつくる事が可能。
現在、市場に投入しているのは小型のモジュールのみだが、今後、大量生産によってドーム型モジュールや、モジュールを配置した「発電する窓ガラス」といった展開を予定している。
ナショナルセミコンダクタージャパン 日陰による発電効率低下を回避
ICの製造などを行っているナショナルセミコンダクタージャパン(東京都江東区)では、50年にわたる太陽光発電分野での蓄積により、太陽光発電の高効率化を行う技術「SolarMagicパワーオプティマイザ」を開発、販売している。
太陽電池パネルを架台上に配置した状態を太陽電池アレイと呼ぶが、この状態で太陽電池アレイの発電量を決定するのは、最も発電効率の低いパネルである。
このため、太陽電池の実際の動作環境では、樹木や建物の影など、様々な要因によって太陽電池アレイの一部への日商が遮られ、大幅に発電効率が下がってしまうことが頻繁にある。実際、太陽電池アレイに10%の日影があるだけで50%もの電力が損失するという。
同製品は、こうした太陽電池上の日影などによる電力損失を、個々のパネルの発電電力を最大限に回収可能とすることで効率化させるもの。
これによって、日照条件が十分でない環境でも太陽光発電システムを施工可能とするとともに、太陽電池の敷設スペースを拡大する事ができる。現状では、太陽電池を施工する際にはほとんどの場合で日陰などを回避して配置しなければならず、敷設場所や方向、傾斜などについても多くの制限があった。
同製品の施工については、太陽光発電システムのメーカー保証外となるケースがあるため、太陽電池を新規に施工する際に同社がコンサルテーションを行い、日照シミュレーションなどから適切な導入方法を提案しているとのことだ。