不動産トピックス

クローズアップ 自動販売機編

2010.01.25 10:37

 ほんの少しのスペースに設置するだけで、収益源となってきた自動販売機。飲料を中心に、多様な企業が自動販売機を利用したスペース活用を提案している。今回は、スペース活用と同時に、オフィスビルにおけるワーカーの利便性向上のみならず、周辺への影響なども考慮された関連ビジネスを紹介する。

テンプラス 自販機設置により無償でAED普及に貢献
 法人向けコストカットのコンサルティングをおこなっているテンプラス(大阪市港区)では、飲料メーカーとの提携により、自動販売機の導入とセットでAEDの無料寄贈を行っている。
 日本国内にも自動体外式除細動器(AED)が普及し、現在では日本全国で20万台以上ものAEDが設置されている。しかし、日本では救急車が現場に到着するまで平均で約6分強を要するが、心停止後3分で死亡率はおよそ50%となる。救急車の到着以前にAEDを使用しなければならないため、AEDの設置を推めると同時に、万一の時どこに行ったらAEDを手に入れることが出来るか分かる必要が有り、設置される箇所はさらに増やしていく必要がある。
 このような認識はもはや一般的であり、AEDの設置に協力するデベロッパーやオフィスビルオーナーは少なくない。しかしながら1台あたりの価格も安くない上、使う頻度が低いこともネックとなっている。
 「地域貢献を第一に考え、店舗向けのコンサルティングを行っている当社では、AEDの普及も使命として考え、飲料メーカーとタイアップしてオーナーの負担をゼロにする仕組みとしました。より多くの方にAEDの設置にご協力頂きたいと考えています」(代表取締役 保 喜博氏)
 自動販売機の設置にあたっては、飲料メーカーの審査が必要であるが、電源以外の初期費用はゼロで導入が可能。AEDの使用方法についてもインストラクターが出張講習を行っている。

八洋 管理不要の自販機型コンビニでスペース活用
 自動販売機の管理を行う八洋(東京都江東区)では、コンビニエンスストアのam/pmジャパン(東京都千代田区)と提携し、自販機型コンビニ「オートマチック・スーパー・デリス(ASD)」を展開している。
 オフィス街では、ワーカーの数に比較して周辺の飲食店が少なく、コンビニに列をなしている姿が良くみられる。
 ASDはこうした、コンビニの取り扱いアイテムからお弁当、おにぎり、サンドウィッチ、飲料などを中心に売れ筋だけをピックアップし、自動販売機で手軽に購入することができるシステムだ。
 ワーカーにとっては時間も有効に使えると同時に、オフィスの利便性が向上するため、社員の福利厚生として食堂を持つ企業などでも利用されている。
 出店にあたって加盟金・保証金などの初期費用は必要なく、100Vコンセントと2坪ほどのスペースがあれば設置可能だ。在庫管理・発注業務・納品作業・ゴミ回収など、運用業務はすべて同社が行う。
 在庫に関してはam/pmで取り扱う商品から、POSシステムデータより売れ筋商品だけをピックアップ。毎週、新しいアイテムをいれることで、立地や客層に合わせた的確な品揃えが提供される。販売期限が切れると自動的に販売をとめることで品質管理を行っており、内蔵された携帯電話回線によって在庫状況を確認することで、人気の高い商品もすぐに補充される。
 同社はASDを首都圏、従業員300名以上のオフィスビルを中心に展開していく予定とのことだ。

グローバル・コンストラクション 防犯カメラ付き自販機を無料設置
 グローバル・コンストラクション(大阪市中央区)では、飲料会社と提携し、同社が扱う防犯カメラを付けた自動販売機を無料設置できる事業を始めた。カメラ代と設置費用は、自販機設置を条件に飲料各社が負担し、電源・電力以外の初期費用・ランニングコストゼロを実現している。
 郊外のみならず、特にオフィス街においては、人通りが少なくなる夜間には思わぬ所に暗がりができ、ともすれば犯罪に巻き込まれることがあるが、一般的なセキュリティシステムはビル内部に向けて行われるもので、ビル周辺の安全を確保するにはコストがかかる。こうしたオフィス街における「防犯エリアとして自動販売機をかつようしたのが同社の事業だ。
 同社では、複数の飲料メーカーとの提携により、自販機用スポットライト付防犯カメラを無料で設置。防犯カメラの設置効果と合わせて自販機・スポットライトの灯りにより犯罪行為を予防する。設置するカメラはSDカードを内蔵しており、ネットワークを用いていないため、プライバシーの保護や情報流出の予防をしながら、事件発生の際だけ映像を確認することができる。
 設置にあたる初期費用はゼロであるが、希望場所について飲料会社が現地の需要などを事前調査する。設置するスペースがない場合など、自販機の設置が難しい場合は防犯カメラのみの設置についても応じられるとのことだ。




週刊不動産経営編集部  YouTube