不動産トピックス

クローズアップ 緑化編

2010.02.08 17:06

 人工物で覆われた都市では植物の蒸散作用や輻射熱の低減などによるヒートアイランド現象や温暖化を緩和する効果が期待され、緑化へ助成を行う自治体も多い。また、建物を植物で覆うことで夏季の温度上昇を抑制し、冷房効率を高めることにもつながるとあって、昨今はオフィスビルでも緑化が進む。どのような工法が適しているか一度、検討してみるのはいかがだろう。
サントリーミドリエ さらに軽く薄く低コストに改良
 サントリーグループの緑化事業会社サントリーミドリエ(東京都港区)は1月25日、同社が従来より提供してきた屋上緑化システム「ミドリの屋根」に大幅な改良を加えた新製品「ミドリの屋根ライト」を発表した。
 「当社の緑化システムの特長は土を用いず保水性のある軽量のウレタンを使用する点にあり、軽く薄い点が強みでしたが、リニューアルで同システムはさらに軽く薄く進化しました。従来40kg/㎡だった重量を33kg/㎡に軽量化、140mmあった厚さは75mmになっています。『さらに軽く、薄く、お求めやすく』をひとつのキャッチフレーズに、より導入していただきやすい環境が整いました」(春日原氏)
 まず、使用植物の見直しとしてヘデラ・セダム類から、水蒸散機能がありヒートアイランド防止効果が高くメンテナンスも楽といわれるハツユキカズラに変更。年1500円/㎡程度かかっていたメンテナンス費用が年800円/㎡程度に低減され、これまで毎月行っていたメンテナンスも年に4回程度の手入れで済むように抑えられている。
 また、セーフティー機能付きの高機能な自動潅水装置が付いており、水トラブル時にも対応可能である。
 なお、同製品の工事費用は平米当たり1万7000円程度から従来品と比較して工事費用の3割程度に抑えた。低価格、ローメンテナンスを武器に需要を創出し、3年後に今期5倍の売上高20億円を見込んでいるという。

東鉄工業 コケの精算から施工まで行い経済化
 鉄道関連施設の工事を中心に実績を持つ中堅ゼネコンの東鉄工業(東京都新宿区)は、千葉県と山形県に1万㎡の圃場で自社生産する苔を利用した苔緑化を提案している。
 苔緑化の特長は、「超軽量」「メンテナンスフリー」「低コスト」の3点。
 苔そのもの自体が非常に軽い植物であり、育成のための土壌をほとんど使用しないため超軽量であらゆる箇所への緑化が可能である。ビルや工場の屋上のようなフラット面はもちろん、工場や屋外駐車場などに使用されている折半屋根やビルの壁面への設置も短期で行える。
 また苔植物は根を持たず、空気中から水分や養分を自動的に吸収し生育する。壁面に施工した場合を除き灌水設備や施肥、刈り込み等の管理を必要としていない生命力の強い植物なので日常の維持管理が不要である。
 施工が容易で長寿命素材である苔は、既存の建物への負担もかからずランニングコストが不要である。資材を自社生産しているが、生産から施工まで一貫して行うことで優れたコストパフォーマンスを実現している。また、施工が容易で簡単なため「初期投資費用が少ない」経済的な緑化工法と言える。

倭芝園 もみがらにようバイオマス緑化システム
 倭芝園(三重県鈴鹿市)では、もみがらを利用した緑化「チャーフ・グリーン・システム」を提案している。同社ではもみがらが難腐植性かつバイオマス(未利用有機質資源)である事に着目して芝などを植え、環境に配慮した緑化植生基盤として利用する方法を開発した。プラスチックや金属の仕様が少ないため、将来的に廃棄する際にも環境負荷が軽減される仕組みだ。
 同システムでは、もみ殻を特殊形状性成型により、排水機能・灌水設置機能を持たせたパネルとして、精度の高い施工を可能とした。また、これまでの人工土壌による同様の工法と比べると渥美はわずか25ミリと約4分の1、重量は1㎡あたり20kgと約5分の1に抑えられ、薄型軽量の緑化基盤である点でも優れている。湿潤時も1㎡あたり約40kgと軽量で緑化による荷重を抑え、建築費の軽減や耐荷重制限の厳しい既存屋上でも在来工法より広い面積を緑化できる。
 また、メンテナンスについても人工土壌による在来工法と比べて植生基盤が安定しているため、施工直後から重量のある機械を使った通常の管理を行うことができる。

みどりの産業 ペットボトル利用で低コストと環境配慮
 みどりの産業(東京都江戸川区)では使用済みのペットボトルを植物の容器に利用した独自の壁面緑化を提案している。同社の開発した方法はペットボトルを用いた植栽基盤を壁面に取り付けるというもので、デザイン性が高く取り付け直後から全面が緑化できる特徴がある。
 同社ではペットボトルを加工してリサイクルし植木鉢として利用する方法を研究し、2リットルペットボトルあたり2株の植栽を配置する仕組みを開発した。この方法は植栽を縦にスリットを入れたペットボトルに配置し、これを縦に連結することで一番上のペットボトルに灌水すれば全ての植栽に水をやることができる。植栽は1本1本が仕切られているため雑草が生えにくく、病気も移り難いため植物の十分な育成が可能となった。パネルの表面はココヤシファイバーでカバーリングできるため、ペットボトルを目につかないようにすることもできる。
 この方法でペットボトルを使うことにより軽量・低コスト化を図ると同時に、パネルごと取り外し可能なので簡単に季節の植物を交換することができる。また、灌水には太陽電池を用いてタンクに貯めた雨水利用するシステムも提案しており、エコロジーをアピールする緑化には好適だ。  




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