不動産トピックス

クローズアップ リスク対策編

2010.05.03 11:07

 昨今、災害リスク管理の手段としてBCPが注目を集め、中でも「リスクファイナス」によるキャッシュフロー対策が多くの企業経営者や金融機関、企業の株主の間で重要視されている。ここでは三つのリスク対策を紹介する。一つは、「ビルオーナー向け地震保険」、一つは屋上緑化施工者用保険「Oh!みどりちゃん」、またもう一つは、テナントの保証金を半額に資事務所移転費用を抑える新サービス「保証金半額君サービス」である。

銀泉リスクソリューション 地震損害リスクにビルオーナー向け地震保険を提案
 銀泉リスクソリューション(東京都千代田区)は、ビルオーナーの保険仲介人となり、リスクファイナンスの手立てとして、「ビルオーナー向け地震保険」の活用を提案している。万が一の大地震でビルや賃貸物件の損壊等が起こればビルの「財物損害」が発生し、また、それに加えてテナント流出により賃料収入が得られなくなる「休業損害」も発生するが、同社はその「財物損害」と「休業損害」の両方を、共通限度額方式で補償できるという保険商品を提案している。これまで一般的に提供されてきた地震保険の場合は、休業損害を補償しなかったが、同保険商品「設定額に応じて1億円から100億円までの範囲で、財物損害額の100%までの保険金が支払われる。また休業損害額は最大1年間を限度に財物復旧後も収益が戻るまで支払われる。テナント流出によるキャッシュフロー悪化などのリスク対策にもなる。
 「一般的にビルの地震保険は、毎月の保険料が高いと認識されていますが、同保険商品は、独自に構築した特殊なスキームを活用しているため、利用者自らが設定した共通支払い限度額と免責額との組み合わせで収益力の限られた中小ビルオーナーであっても支払うことできる額に保険料を設定でき、多くのビルオーナーが利用可能です」
 ただし、引き受け能力には自ずと限界がある保険商品でもあるため、同保険商品を利用する場合は、なるべく早めに同社に問い合わせを行い、いち早く検討を進める必要がある。
 なお、既存の火災保険はそのままで契約でき、契約対象は昭和57年以降の新耐震基準の所有物件で、旧耐震の建物は耐震補強後に加入することができる。

RHフィナンシャル 空室対策に有効な「保証金半額くん」サービスを提案
 RHフィナンシャル(東京都港区)が提供する「保証金半額くん」は、通常、テナントが事務所移転時に、オーナーに支払う保証金の半分を、同社が保証するというサービスである。
 従来であれば、テナント入居時には賃料の10カ月~12カ月分にあたる保証金がオーナーの手元に入るものであるが、このサービスでは、預かる保証金を半分程度減額し、減額した分の金額については、同社に保証してもらうことになる。保証の範囲は、賃料、原状回復などが該当し、万一の場合にもオーナーが不利益を被らないような仕組みとなっている。
 一見、オーナーが取得できる金額は減ってしまうように思われるが、保証金を減額することは、テナントの移転に際する初期費用などのハードルを軽減し、入居促進につながるためビルの空室対策としての効果が見込まれる。
 またテナントを保証する際には、同社が財務諸表の賃料提出を受け、クレジットリスクの分析手法を用いた格付けを行うため、オーナーは入居するテナントの信用状況も把握することが可能となる。
 「折からの不況の影響もあり、実質、12カ月分もの保証金を受け取れているオーナーは減ってきています。また、空室に苦しむビルも多く見受けられるようになりましたが、このようなケースにこそ、当サービスは効果を発揮します。テナントが入居していなければ、ビルは何の利益も生み出せませんので、テナント誘致を有利にするための手法としてこのサービスを提供していきます」(代表取締役 豊岡氏)

日本金属防水工業会 「金属防水工法」実施者用の新保険「Oh!みどりちゃん」
 日本金属防水工業会(東京都調布市)は、昨年9月、日本初となる緑化保険「Oh!みどりちゃん」を発表している。
 屋上緑化に伴う「緑化工法」には様々な仕様があるが、同工業会は雨漏りや火災などへの安全性から「金属防水工法」と「緑化工法」を組み合わせた工法が有効であると提案し、金属防水工法を採用した不動産所有者に対し、万が一緑化部分が火災や自然災害で損害を受けた場合、それを無料で補償するとしている。具体的には火災や落雷、爆発、台風などの暴風雨により、緑化部分の芝生に損害を被った場合や、緑化工法に起因して雨漏りが発生した場合が対象になり、さらに強風等により近隣住宅や通行人に危害を加え損害賠償を請求されてしまった場合などにも対応する。
 従来の緑化工法屋上緑化に係る保険会社が植物に係るリスクに対して引受け条件が厳しく、住宅火災保険でも住宅に設置した植物の損壊については免責のために、なかなか開発が困難だった。
 また、取扱い業者は、販売工務店が殆どのリスクを自社で抱えて補償することとなっている。そこで、この度金属防水工法と合わせ、保険会社が懸念する様々なリスク(特に植物の根により発生する損害等)が軽減されることに着目、検討を重ね、屋上緑化防水工法実施者用の新保険「Oh!みどりちゃん」が実現している。
 同工業会は今回の保証の導入を契機に更に多くの住宅所有者が国の推奨する屋上緑化を安心して採用するようになり、温暖化問題解決の一助となることを望むとしている。




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