不動産トピックス

クローズアップ 地震対策編

2010.10.11 17:07

 地震大国と言われる日本では、世界に誇ることができる優れた地震対策技術が数多く生まれている。今回のクローズアップでは、独自の視点かつ高い技術を有しているユニークな製品・工法を紹介する。

E&CS 地震の揺れを制するトグル制震構法
 E&CS(東京都千代田区)は建物施設の耐震化として有効な「トグル制震構法」を開発、施工を展開している。
 これまで躯体の地震対策の代表的であった耐震工法。この工法は、建造部材の強度を増すことで建物の揺れを抑えるというものであるが、耐震補強工事の際にテナントの退去などを招くリスクが発生する。また、建物の下層部に免震装置を設置することで地震の揺れを免れる免震工法もあるが、費用が高価であることが工事を実施する際の大きな足かせとなっていた。「トグル構法」は、制震装置の設置により地震の揺れを吸収するという、これまでの工法とは異なる仕組みを有しており、テナントが入居している状況での補強工事も可能。加えて、優れた制震性能により、補強箇所の削減も可能であり、建物が高層であるほどコストメリットが生まれる。
 このような高い制震性能を実現している要因として挙げられるのが、オイルダンパーを採用している点である。これにより、ダンパー形状のスリム化および半永久的な使用を可能にしている。
 「現在、公共施設や民間のオフィスビル、マンションなど様々な建物施設に導入しています。また、特徴ある形状と設置箇所の自由度が高い点も評価して頂いており、藤沢市の小学校では、色鉛筆をデザインしたトグルブレースでキッズデザイン賞の建築・空間デザイン部門を受賞しました」(中川氏)

E&F 天井落下とスプリンクラー破損を防止
 E&F(新潟市東区)は、内山産業(新潟県三条市)と日栄インテック(東京都荒川区)と共同開発した「SP・BCPシステム」を今月末から販売する予定である。
 同製品は地震の際、天井の落下を防止する天井落下防止金具である「BBカチット」とスプリンクラーの破損を防止する「BBクリップ」を組み合わせたシステム。これまで注目されることの無かった地震時のスプリンクラーの破損防止を同システムに加えた経緯を考案者である樋浦氏は以下のように語る。
 「当社および内山産業は新潟県の企業です。昨今、新潟では大地震による天井落下被害が多発しており、新潟に本社を構える企業として、どうにかしてこの問題を解決できないものかと考え、落下防止のワイヤークリップを開発しました。性能実験を行うため、東京工業大学の協力を得て、実証実験を重ねる中、協力していただいていた同大学の准教授の方に、地震時に問題となるのはスプリンクラーの破損であるとの話を聞き、天井落下防止に加えて、スプリンクラー防止の機能を備えた同システムの開発を進めました」(樋浦氏)
 樋浦氏が話すように、地震時に天井が揺れ、スプリンクラーが破損するケースが実は多い。2次被害として火災が発生した場合、スプリンクラーが正常に作動しないことで、さらに被害を拡大する恐れもあるだけに、地震被害が多発する地域からの高い需要が見込まれる。

東北電力 地震発生時の配電設備被害状況を推定
 東北電力(仙台市青葉区)は、大規模地震発生時における主要な配電設備(電柱、電線、柱上変圧器等)の被害推定を行う「地震被害推定システム」を、財団法人中央電力研究所と共同で開発した。
 同システムは地震発生直後に得られる地震情報、予めシステム内にデータ登録している同社管内の地盤情報および設備情報などに基づき、自動的に配電設備の被害状況を推定することができる。これにより、被害推定後に得られた詳細な地震情報や巡視情報、停電情報をデータ入力することで、被害推定を補正し、被害推定の精度を向上することが可能となっている。
 また、過去の地震や模擬的に想定した地震のデータを入力して被害推定を行うシミュレーション機能も有しており、平常時には、シミュレーション機能の活用により得られる被害推定結果に基づき、配電設備の耐震対策を先見的に実施することが可能となっている。
 同社は今後の予定として、シミュレーション機能を活用し、過去に発生した地震のデータに基づく被害推定と設備被害の実績との比較・検証等を行い、さらに予測精度の向上を図り、今年度中の実運用を目指していくとしている。

清水建設 耐震性と施工性に優れた耐震補強工法開発
 清水建設(東京都港区)は、短形トンネルの側壁などを効率的にかつ経済的に耐震補強できる「Tプレート工法」を開発、その優れた耐震性と施工性を実証。この施工性の実証試験はコンクリート構造物の補修・補強の専門会社であるケミカル工事と共同で実施し、ボックスカルバーとを模擬した壁を作成して一連の施工方法と手順を確認している。Tプレート工法は、せん断補強部材としてTプレートと呼ぶ厚さ6~9mmのT字型鋼を使用する耐震補強工法である。特徴は側壁全体にせん断補強鉄筋を挿入していた従来の耐震補強工法と異なり、補強箇所を集約した上で従来工法と同等の耐震性と優れた施工性を確保している点である。また、補強箇所は側壁に2~3m間隔で設ける縦方向の溝の部分だけで、ウォールソーで切削した幅20~30mmの溝にTプレートを挿入してアンカーで固定するとともに樹脂で接着することで側壁のせん断耐力を補強する。
 同工法は従来工法に比べて補強箇所が少なく施工性が優れていること、鋼材使用量が少なくて済むことなどから工期・工費を3割程度削減できる。篤さ600mm、高さ5m、延長100mの側壁を補強した場合のコスト試算では工期・工費ともに4割程度削減できるとしている。




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