不動産トピックス
今週の一冊
2011.12.12 11:54
都会の高層ビルを植物工場に
垂直農場 明日の都市・環境・食料
著者:ディクソン・デポミエ
訳者:依田卓巳
発行:NTT出版
発行:平成23年9月16日
価格:2600円(税別)
タイトルである「垂直農場」とは、都市部の高層ビル全体を使った巨大植物工場のことだ。では、なぜ、都会の高層ビルを農場化しなくてはならないのか。こうした疑問に明確に答えるのが本書の意義だ。
2050年までに地球の総人口が100億人近くまで増えると予想される中、食糧問題は避けては通れない。新たに農場を開拓すれば、地球規模での環境悪化が懸念される。まさに、目の前に迫った2つの問題に対する解決策が「垂直農場」だと説く。農業がもたらした環境破壊を考察し、環境修復を図りながら健康的な食事を取ることが可能な方法として、農地が不要な植物工場のメリットを解説している。植物工場は年間を通して安定した収穫ができ、農業排水や農薬は不要。フードマイレージの大幅な減少に繋がるなど、そのメリットははかり知れないという。
しかし、環境悪化を防ぐという理想像としては素晴らしいが、より切実な問題として、設備導入コストや維持管理コストが一体どれほどかかるのか。または、収益性はあるのかといった、現実的な視点に触れていないことに物足りなさを感じる。だが、植物工場の将来性を広く理解する上で役に立つだろう。