不動産トピックス

今週の一冊

2012.06.18 13:36

持続性ある街づくりが地域活性化を促す

最高の「商い」をデザインする方法
著者:松本 大地
出版:エクスナレッジ
発行:平成24年6月1日
価格:1500円

 日本の地方都市の疲弊に歯止めがかからない。長引く景気低迷も影響が大きいが、全国津々浦々で画一的な「街づくり」が行われた結果、没個性化したことが最大の要因ではないだろうか。例えば、大店立地法によって乱立した大規模商業施設が、地域に根付いた中小小売店や商店街を壊滅させる。このような、日本の多くの地方都市が抱える地盤沈下の問題は「サステナビリティ(持続格納性)」なき、場当たり的な街づくりによる弊害といえるだろう。
 今後、地域コミュニティの再生はありえないのか。こうした疑問に対し、本書では、サステナビリティを重視した街づくりの先端事例として、米国オレゴン州の中心都市であるポートランドで行われる取り組みを紹介する。さらに、国内で行われる環境共生型の街づくりの一例を通じて、これからの街づくりに必要なヒントを指し示している。
 本書は、閉塞感漂う国内の商業事業を打破する新しい形の「商い」と街づくりについて、気鋭の商業プロデューサーである松本大地氏の詳細なレポートと提言をまとめたものだが、魅力溢れる街は多くの人、企業、商業が集まることがよくわかる。ビル単体のスペックを向上させるただけでは、厳しい市況は勝ち抜けない。街の魅力向上こそ長期的なビル経営の根幹を担うということだ。本書を読めば、街づくりにおいてビルオーナーが果たす役割は非常に大きいことに気づかされるはずだ。




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