不動産トピックス

今週の一冊

2012.07.16 10:03

建築物の歴史性を生かした再生・活用事例集

東京レスタウロ 歴史を活かす建築再生
著者:民岡 順朗
発行:平成24年6月25日
出版:ソフトバンク クリエイティブ
価格:880円(税抜き)

 タイトルから分かるように、本書は既存建造物の再生事例を収録した物件ガイドブックである。ただ、注意が必要なのは建築再生法として「リノベーション」でも「リフォーム」でもなく「レスタウロ」と定義した点にある。
 ビルド&スクラップが主流だった日本のビル業界にも、既存ストックを修繕・改修し、新たな価値を備えた上で再利用するという「リノベーション」に注目が集まっている。本紙でもビルオーナーによるリノベーション事例は数多く記事にしていきたが、本書の最大のテーマとなっている「レスタウロ」とは、リノベーションとは似て非なるものである。リノベーションは古い物件を「新品同様にする」「刷新する」行為である一方「レスタウロ」とは、地域の歴史が集積し、人々の記憶が詰まった建物を再生・活用することでオンリーワンの魅力を創出することである。
 そうしたテーマに沿って、本書では東京に存在する50の物件を紹介する。ダイナミックな用途変更を行ったコンバージョン事例をはじめ、既築物件の再生、日本的建造物の修復・活用、西洋風建造物の修復・活用、先進技術による修復・補強事例と、5つの角度から考察する。東京駅丸の内駅舎から築40~50年の古民家・ビルまで、古い建築物を統一的コンセプトで並列的に扱うのは、本書が初の試みだろう。




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