不動産トピックス

クローズアップ 備蓄対策編

2012.11.05 16:34

 来年4月に施行される東京都帰宅困難者対策条例(通称:備蓄条例)。民間企業に対して従業員向けに3日分の非常食や飲料水、毛布などの備蓄が努力義務として求められることになる。そこで、今回は条例に対応できる利便性の高い備蓄対策を紹介しよう。

ビビット・ジャパン 美味しく食べられる備蓄食糧
 東日本大震災によって注目を集めた防災備蓄食料だが、味は二の次。空腹を解消するためだけの商品が多かった。これでは実際に被災した際、不味い食事をしても元気が出るはずもない。
 そうした中、営業・販促支援サービスや災害対策ソリューションを提供するビビッド・ジャパン(東京都千代田区)は、美味しく食事ができる備蓄食料「防災丸かじりセット」の販売を開始し、高い人気を博している。
 同製品は自衛隊で実際に採用される訓練用保存食から誕生したもので、1人3食分に相当する9品目の料理と500mlの保存水をパッケージ化。ウインナーやイタリアンリゾット、3種類のチキン、コーンスープ、バランスクッキー、ドライなっとう、パンの缶詰など、日常の食卓に並んでいても違和感のないメニューを取り揃えながら、賞味期限3年を実現した。
 「断水や停電などの災害時を想定し、温めなくても美味しい食事を目指しました。子供にも美味しく食べられるように、メニューにはこだわりがあります。保存水は乳児にも安全な蒸留水なので、ミルクを作ることができます」(同社代表取締役社長 奥博史氏)
 一方、寒い冬場に被災した場合は、温かい食事を取りたくなる。同社では冬場対策として、少量の水で温められるレトルト非常食「防災あつあつセット」も販売している。
 「具材はウィンナーカレー、すき焼き風ハンバーグ、中華風カルビの3種類に、3年保存のご飯が3個、スプーン・食器が3個付きます。付属の加熱袋に加熱剤を入れ、130mlの水を入れると高温の水蒸気が発生し、20分加熱すると熱々の食事が出来上がります」(奥氏)
 味にこだわりを持ち、備蓄以外に釣りや登山などのアウトドアシーンでも活用されている同製品。パッケージは220mm×250mm×100mmとコンパクトサイズ。保管場所を取らず、取っ手があるので持ち運びも簡単だ。

阪神酒販 自販機よりも震災に強い「オフィスオアシス」
 オフィスビルに設置されている自動販売機は東日本大震災時において電力源を確保できず、緊急時のライフラインには不向きなことが判明した。そうした中、自販機に替わる備蓄対策として注目が集まったのが、阪神酒販(神戸市兵庫区)が展開するサービス「オフィスオアシス」である。
 「平成20年12月から事業展開し、現在まで5000社以上に導入されています。特に東日本大震災以降、備蓄対策として契約数も急増しています」(同社本部長 中尾氏)
 同サービスは、お菓子・アイスクリームBOXをオフィスに設置するサービス「オフィスグリコ」のドリンク版。冷蔵ケースをオフィスに無償提供し、ドリンクと即席麺やお菓子を日常的に従業員向けに販売できるサービスである。福利厚生の一環として採用するケースも多いが、東日本大震災以降、備蓄対策を目的として活用するケースが急増。特に、東京都では来年4月から施行される備蓄条例への無料でできる対応策として活用されることが多いという。
 「自動販売機は震災時に稼働しなかったですが、当サービスは手動式のため、いつでも冷蔵ケースの中の飲料水を利用できます。現在ご契約いただいているオフィスでは、常に飲料水のストックをケース単位で保管しており、賞味期限の古いものから順番に利用できるため、一般的な備蓄食料につきものの賞味期限切れの心配もありません」(中尾氏)
 冷蔵ケースに設置された集金箱にお金を投入しておけば、同社スタッフが商品の補充時に回収する仕組み。利用頻度によって補充回数は臨機応変に対応してくれる。

MOST 便利な浄水ボトル付き備蓄セット
 節水や節電対策など、オフィスの環境ソリューション事業を手がけるMOST(東京都千代田区)は、新たな事業として防災備蓄製品の販売を開始した。
 「当社が手がける節水システムは設備導入コスト不要で、削減すればするほど利益が出ます。浮いたコストを防災備蓄対策として活用してもらえるように『3DAY備蓄基本セット』の販売を開始しました」(同社代表取締役社長 武田盛幸氏)
 同製品は来年4月から施行される都条例「東京都帰宅困難者対策条例」に対応。5年間常温保存できるパン9本、圧縮毛布、浄水能力を持つ携帯ボトルを1人分として持ち出し袋にセット化した。従来型の備蓄セットとの違いはA4サイズまで毛布を圧縮しており、保管場所に困らない点が挙げられる。さらに、風呂の残り湯や雨水・プールの水をそのまま飲料水にろ過できる浄水能力付き携帯ボトルは災害時の飲料確保が容易になる優れものだ。
 「浄水能力は380lで、500mlペットボトルに換算して760本分です。金属や細菌など、70種類以上の有害物質を除去し、不味さの原因となるカビの臭い成分や鉄錆もフェルターで吸収するため、いつでも美味しい水を生産することが可能です(ただし、海水のろ過はできない)」(武田氏)
 同製品は基本セットの他に懐中電灯になるLED型電球や人体に無害の食品消毒剤、携帯トイレなど、最大18アイテムからなるセットもあり、利用者の職場環境やニーズに沿った備蓄対策が可能となる。

エフ・エー・シー 飲料備蓄と福利厚生を両立
 来年4月から施行される都条例「東京都帰宅困難者対策条例(備蓄条例)」。同条例は、東日本大震災発生時に首都圏で起こった帰宅困難者による混乱や事故を防止するため、東京都の全企業に対して、一斉帰宅の抑制と3日分の飲料水・食料の備蓄に対して努力義務を課すというもの。震災以降、備蓄食料を用意する企業は増えたが、すべての民間企業に備蓄の徹底を図るのが狙いだ。
 しかし、備蓄食料を3日分も保管するには膨大なコストと保管場所が必要になる他、賞味期限を管理する必要があり、災害時に賞味期限切れで役に立たないというケースも考えられる。そうした背景を受けて、エフ・エー・シー(東京都中央区)は今年9月から従来型の備蓄食料の弱点を克服した新たなサービス「備蓄コンビニ」を展開している。
 「当サービスは、クライアントのオフィスに冷蔵庫を無料で設置。毎月1~2回、メニューに記載された飲料水や食料などが宅配されます。飲料水等は日常から利用でき、利用分を料金箱に入れていただき、月末に使用した分だけ利用料金として当社が回収する仕組みです。備蓄条例対策だけでなく、社員の福利厚生として飲料等が50円から利用でき、賞味期限の確認作業も不要です。冷蔵庫を購入する必要がなく、従業員が利用した分だけの料金で利用でき、コスト面でもリーズナブルです」(同社代表取締役 森幸夫氏)
 通常、同サービスはテナントが直接契約して利用するが、設置コストの負担がないため、ビルオーナーがテナントサービスの一環として同サービスを活用することも可能だ。




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