不動産トピックス
今週の一冊
2012.11.26 15:59
日本経済復活の鍵握る「都市構築」の可能性を追う
山手線に新駅ができる本当の理由
著者:市川 宏雄
出版:メディアファクトリー
発行:平成24年8月31日
価格:740円(税別)
今年1月、全国紙が一斉に報じた「JR山手線新駅」誕生のニュースを覚えているだろうか。新聞発表当初は新駅につけられる名称予想が行われるなど、一定の話題にはなったが、一般社会では情報は消化された感がある。しかし、この開発計画の本質は新駅誕生に留まらず、いわば都市構築の物語であり、日本の経済の停滞を破り得る壮大なプロジェクトであることは意外に知られていない。新駅の開発予定地はJR「田町」駅~「品川」駅の間に位置する品川車両基地だ。山手線沿いの一等地で、総面積約20haという超巨大な再開発事業が行われるのは最後ともいわれている。さらに、新駅の誕生地である品川は交通インフラを含めた立地性を武器に、東京が一丸となって取り組む「アジアヘッドクォーター特区」に指定されていわば東京の将来を担う重要拠点に位置づけられている。
本書では、新駅開発の背後に存在する「真の意味」を解説すると共に、都市開発の観点から日本の悲観的な未来を打開する「希望」として同プロジェクトを捉えている。オフィスエリアとして、香港・シンガポールだけでなく、上海やニューデリーといった新興オフィス街の台頭により、東京都の存在感は薄らぎつつあるが、同開発はまさに起死回生の秘策といえるだろう。停滞感漂う日本経済に希望を見出せる内容だ。