不動産トピックス
今週の一冊
2012.12.10 14:05
高度成長期のビルの魅力とは
いいビルの写真集
著者:BMC(ビルマニアカフェ)
出版:パイ インターナショナル
発行:平成24年7月14日
定価:2000円(税込)
スクラップ&ビルドが基本の日本のオフィスビル業界にあって、時に古い建物が持つ独特の風情を生かした趣きのあるビルに遭遇する。弊紙でも不定期連載中の「歴史的ビル」も、そのような趣旨で始まったのだが、重要文化財や登録文化財といった大正時代から昭和初期にかけて建造された近代建築が中心だ。今回紹介する本書も古い建物の魅力を存分に紹介する内容だが、1950年代半ばから70年代にかけて高度経済成長期に建造された大阪のビルが主役だ。文化財ではないが、市井の名もなきビルの中にも素晴らしい物件が多数存在することを証明してくれ、いわゆるビル愛好家(?)だけでなく、築年の古いビルオーナーにも参考となる一冊だ。
著者のBMC(ビルマニアカフェ)は脚光を浴びる近代建築の日陰のような存在である高度経済成長期のビルの格好よさを広く知らしめようと活動する男女5人組。大阪版の産経新聞夕刊では「ビルマニア」なる連載を持ち、大阪ビル業界では知られた存在である。
ビジュアル中心の構成だが、百聞は一見にしかず、古いビルの魅力に言葉は必要ない。眺めるだけでも楽しめる。一方、ページ数は少ないものの、オーナーがビルにかける愛情や管理者のたゆまぬ努力にも言及しており、ビルに対する深い愛情を感じずにはいられない。