不動産トピックス
クローズアップ 無料相談編
2012.12.10 14:02
専門性が求められるビル経営において、弁護士や税理士、コンサルタント等、ビルオーナーの傍らには心強い味方が存在しているはずだが、そうした法律家の支援を受けていないオーナーは困難な問題にぶつかった時どうすればいいのか。法律問題、税制問題等、避けては通れない難題が次々に訪れる。今回はオーナーの頼れる味方となる「無料相談」を実施する団体・事業者を紹介する。
不動産相談協会 不動産の専門家の知見を結集し複数の解決方法を提案
不動産に関わる問題は多岐に渡り、ひとりの専門家だけで解決することは難しい。それゆえ専門家の知識を結集し、問題を解決する「総合力」が重要だ。
地主や建築物所有者のニーズを受け、複数の士業関係者が参加し、不動産関連の悩みや問題に対して無料相談を実施しているのが不動産相談協会(東京都新宿区)である。同協会の代表理事を務める杉山善昭氏は設立の経緯を次のように話す。
「私自身、神奈川県宅建業協会が主宰する無料相談所の相談員を務めており、神奈川県だけで年間4000件の相談が寄せられます。しかし、宅建業法に関わる質問にはお答えできますが、多くは弁護士や税理士、司法書士等の専門家を紹介するのが限界です。相談者の方々は『相談』したいのではなく、『解決』することが最終目的ですので、相談者が代わるたびに同じ説明をする必要もなければ、色んな場所に出向く必要がない、ワンストップで問題解決まで行える相談機関として当協会を平成22年7月に設立しました」
同協会には弁護士や一級建築士、税理士、司法書士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、宅建主任者といった不動産関連の主な士業関係者の他、不動産コンサルタントも在籍し、ひとつの相談案件に関して、複数の視点から解決方法を導き出し、クライアントに提案することが可能だ。
「ひとりの専門家が相談に乗った場合、解決方法の選択肢は限られます。さらに問題なのは、自分の仕事に結びつけるために専門家が解決方法を誘導することがあります。そこで、当協会では複数の異なる専門家の知見から、様々な解決方法の選択肢を提案しています」(同協会 副代表理事 高瀬芳明氏)
さらに、建て替えや設備導入の際、施工会社から提案された内容が適切かどうか等の問題について、セカンドオピニオンとしての立場から中立な判断を下してくれるなど、対応できる相談内容も幅広い。
「現在は相続関連の悩み等、資産家の方からの相談が多いのですが、今後は企業再生に関する相談にも乗っていこうと考えています。出張相談にも応じていますので、お気軽にご利用ください」(杉山氏)
●相談方法
相談日:随時
受付方法:同協会HPからメールにて相談内容を送信(24時間受付可)
東京都不動産鑑定士協会 中立的な立場から的確な助言を
不動産に関する専門家として、弁護士や税理士、宅建資格取得者など、多岐に渡るが、不動産鑑定士の役割は特徴がある。不動産の鑑定評価を専門業務としている関係から、あくまでも中立的な立場から判断を下せるため、悩みを抱える相談者にとっては頼りになる存在だ。
不動産鑑定士は公益性を生かし、東京都不動産鑑定士協会(東京都港区)は、不動産の様々な悩み・問題を抱える人々に向けて、無料定期相談会を実施。毎月第1・3水曜日に実施し、予約不要で対応している。
昭和48年に社団法人「日本不動産鑑定協会東京支部」として設立された同協会。当時から公益性を重視、利害関係を持ち込まず相談業務を受け付けていたが、「不動産鑑定士」は他の士業に比べて知名度が低かったため、鑑定業務の啓蒙活動を兼ねて相談会を実施していた経緯もあるという。そして、昨年、公益社団法人に組織変更したのを機に、公益活動の一環として無料相談会が実施されている。
「不動産の売買に関しては購入価格の妥当性を知りたいといった相談が多く、物件のチラシを用意して来る相談者もいます。しかし、チラシの契約内容に細かく目を通しておらず、ローンを組む際の金利が変動か固定かといった重要な点を見逃していることがあります。不動産鑑定評価の役割は、呼んで字のごとく『鑑(かがみ)』となって相談者の不安がなくなるまで、とことん相談に乗ることです」(同協会 相談事業委員長 吉田雅一氏)
フィービジネスである他の士業へ相談に行った場合、強引な手法で問題解決に導くケースも考えられる。あくまでも第三者的立場からデメリットまで指摘してくれる存在は貴重である。
●相談方法
相談日:毎月第1・3水曜日(当日が祝祭 日の場合は翌日、1月と5月の第1水曜日は休止)
時間:13時~(受付は12時30分~15時30分 予約不要)
会場:東京都不動産鑑定士協会
不動産流通近代化センター 参考となる相談内容はサイトでも公開
昭和55年設立の不動産流通近代化センター(東京都千代田区)は、円滑かつ合理的な不動産流通市場の整備や近代化、安心・安全な不動産取引を実現するための様々な支援を行っている。具体的には「調査・研究」「教育事業等」「債務保証・助成」などだが、なかでも「不動産相談」は大きな柱だ。
平成3年4月に不動産相談室を設置して以来、20年以上にわたり相談を行ってきた同センターだが、最近の内訳は約6割が住宅売買について、残り4割が賃貸についてで、さらにそのうち4割がビルの賃貸についての相談。賃貸ビルは借りる方も貸す方もプロということもあって相談は多くは無いが、なかでも目立つのは原状回復についてと定期借家について。また法制度が変更された際には相談件数も増加する傾向にあるという。相談内容のうち他の参考となる事例についてはQ&A化してサイトで公開するとともに書籍での出版も行っている。
「基本的にはオーナーやテナント、また管理会社や仲介会社などもすべて対等です。最終的に当事者同士で解決できるようなアドバイスを心がけています」(不動産相談室・東氏)
●相談方法
相談日:毎週月~金曜日(祝日・年末年始等除く)
時間:9時30分~17時
受付方法:電話
東急リバブル メールのみのコンタクトで気軽に利用できる無料相談サイト
東急リバブル(東京都渋谷区)は不動産に関する様々な相談に対応する「不動産なんでもネット相談室」を開設した。
同サイトは、個人・法人・不動産事業者を問わず、誰でも無料で利用できる相談窓口。不動産に関する内容であれば「隣地との境界がわからない」、「建物再建築ができない」、「宅地建物取引業法に解釈は?」などといった、不動産取引に直接関わらない相談も受け付けてくれる。
また、同サイトでは利用者に気軽に活用してもらうため、相談方法ならびに同社からの回答はメールのみとしているため、直接会話を交わす必要がない。さらに、同社の顧問弁護士や税理士、司法書士等にも相談・確認を行ったうえで、一般的かつ中立な立場からの回答がなされるため、オーナーが雇ったコンサルタント等の意見とすり合わせが可能だ。
利用者から寄せられた相談内容のうち、一般消費者や宅建業者に有益と思われる内容については相談者の氏名・企業名は匿名とし「相談事例集」としてQ&A形式にしてサイト内で掲載する。