不動産トピックス
クローズアップ 光触媒編
2013.08.12 15:30
光があたると触媒作用を発揮し、様々な有機物を分解する光触媒。汚れの分解、消臭・脱臭、抗菌・殺菌、有害物質の除去、ガラス・鏡の曇り防止など、様々な効果が得られるため、施工件数は増えているが、まだまだ誤解も多いという。今回はメーカー関係者に光触媒にありがちな誤解、使用上の注意点について聞いた。
カタライズ 施工場所や素材の違いで効果が異なる可能性大
建築物において、光触媒に期待される役割は外壁や窓面のセルフクリーニング効果だ。しかし、セルフクリーニング自体は超親水性によるもので、光触媒の本来の効果は空気洗浄や抗菌作用でだ。そのため、近年は貸室内の環境改善を目的に、光触媒を内装部に塗布するケースが増えている。 光触媒を用いた室内用の消臭・コーティング溶液を開発・販売しているカタライズ(川崎市川崎区)の代表取締役を務める早川修氏によると「不動産オーナーの中にはご自身で光触媒の効果について研究され、外壁だけでなく、内装面への施工依頼も増えています」と話す。さらに、同社の光触媒を実際に施工したユーザーから更なる改良品への要望が多数寄せられ、4種類の業務用光触媒液を開発した。 「テキスタイル製品の生地加工用に開発したヒカリアクターTシリーズをはじめ、建築分野では、ヒカリアクターG、V、Hシリーズを展開しています」(早川氏)
Gシリーズは紫外線に反応してVOCやウィルスといった有機物を酸化分解させるオーソドックスな光触媒。住宅やオフィス、医療・介護施設等、幅広い施設に用いられている。一方、Vシリーズは可視光応答型。LEDが可視光の代表例で、室内の微量な光でも高い効果を発揮する。また、昨年に開発したHシリーズは、化粧板やスチール家具、タイルなどの無機物の表面に塗布することで硬い塗膜を形成する。
「光触媒と一括りにされますが、施工場所や素材の違いによって効果が異なる場合もあり、当社は様々な製品ラインナップを用意することでユーザーの要望に対応しています」(早川氏)
同社は業務用だけでなく、一般ユーザー向けに光触媒スプレー「光ミスト」の販売も行っており、今後は光触媒の正しい効果と使用方法を周知することに注力するという。
ソウマ PIAJ認証が信頼の目安
光触媒とは酸化チタンの持つ特性で太陽光や室内照明などの光エネルギーがあたると、その表面に強力な酸化分解力が発生し、様々な汚れや臭い、有害物質を繰り返し分解し、快適環境を生み出すコーティング材である。
しかし「光触媒」と命名された商材は世の中に数多く、性能の違いがあるにもかかわらず、どの製品を選択していいのかユーザーにはわかりにくい。そうした中、光触媒の性能の指標となるのが「PIAJマーク」だ。
PIAJマークとは光触媒工業会が性能、利用方法等が適切であることを認めた光触媒製品に与える認証マーク。JIS試験方法を採用し、一定の性能基準をクリアした製品にのみ認証される。
ソウマ(東京都墨田区)が開発した光触媒「PALCCORT(パルクコート) ST」はPIAJマークの認定製品だ。原料は水溶性二酸化チタンと純水のみを用いており、人畜無害。引火性等がまったくない環境配慮型であり、さらにコーティング膜は塗布後数週間で鉛筆硬化2H以上で安定し、過酷な自然環境にも耐えられる強固な被膜で長期間効果を発揮する。また室内用の新製品「パルクコート室内用VLAG」は可視光反応ゾルの配合率を高めた上、銀イオンを加えたことで紫外線量の少ない室内においても高い効果を発揮する。
「新築の分譲マンションで行われるオプション会では、当社の光触媒の効果を評価していただき、室内全体に光触媒加工を施すケースが増えています」(環境事業部マネージャー 西山 賢治氏)
同社は外壁や室内施工用の加工液を用いたスプレー「光抗菌ナノティーミスト」も販売しており、家庭でも光触媒の効果を体感することが可能だ。
ガイア 目に見えない光触媒の効果をいかに伝えるかが課題
強力な酸化分解力で高い抗菌、消臭、シックハウス・有害化学物質対策、防汚効果などが得られることから、建築分野での活用事例が広がりつつある光触媒。しかし、その効能を発揮するメカニズムはあまり認知されておらず、エンドユーザーにとって非常に理解しにくいものだった。また、普及が進みにくい点として、光触媒「ガイアクリーン光触媒加工液」を開発・展開するガイア(東京都江東区)の代表取締役を務める田畑茂徳氏は「『見える化』しにくい点にある」と話す。
光触媒の最大の特徴である消臭や抗菌効果は目に見えず、人によって感じ方が様々。そのため、汚れの防止効果がひと目でわかる外壁に施工されてきた。しかし、光触媒の実力が最大限に発揮するのは室内環境の改善であり、最近では室内向けの光触媒も登場してきている。
同社が開発した「ガイアクリーン光触媒加工液」は元々、テキスタイル製品等の加工用に用いられてきた。光触媒は二酸化チタンによってその特性を発揮するが、二酸化チタンを繊維に固定することは技術的に非常に困難だといわれている。
「二酸化チタンを繊維に固定するバインダー技術が低く、触媒効果に耐久性がない製品もありますが、当社の光触媒は優れた特性を阻害することなく、繊維の風合いを損なわずに光触媒を固定することに成功しました」(田畑氏)
その結果、鳥インフルエンザ対策として光触媒効果を付与した「光触媒マスク」を開発。大学等の検査機関から「高い抗菌効果を持つマスク」とお墨付きを得た。また、光触媒の固定が難しいといわれる繊維用光触媒の開発に成功したことで、内装用をはじめ、造花やぬいぐるみ等の加工に用いる多目的業務用の光触媒加工液など、幅広い用途に対応した製品ラインアップを用意している。