不動産トピックス

クローズアップ 消火設備編

2013.09.02 12:11

 ビルの安心安全をより確実にするための消火設備。消防法の規定は、ビルの用途や規模によりさまざまで、各々のビルに合った消火設備の適切な設置が必要となる。一方で、ビルの火災発生をまれなケースと思い、防火対策は重視されづらい一面もある。今回は、さまざまな性能で、ビルを火災から守る製品を紹介する。

モリタ防災テック スプリンクラーの代替消火設備
 大手消火器メーカーのモリタ防災テック(東京都港区)では、スプリンクラーの設備と同等の防火安全性能を持つ、コンパクト型高性能消火ユニット「スプリネックス」の製造販売を展開している。
 スプリンクラーを設置するには大きな消火用貯水槽や消火ポンプユニット、自家発電設備などをそろえる必要がある。新築時にスプリンクラーを設置していない建物に、新たに設置することはなかなか難しいのが現状である。
 「スプリネックス」は、216リットルという少量の水に、水の約4倍の消火性能を持つ無害な薬剤(pH6・9の中性)を使用して消火する仕組みだ。そのため大きな消火用貯水槽を設置する必要もなく、配管径も34mmとスリムなため、設置する場所を選ぶことが少ない。薬剤は、冷却効果や浸透性、再燃防止効果にも優れているものを採用している。
 また、維持管理(点検)が非常に簡単であることも特徴のひとつ。スプリンクラーと同様で年に2回の法定点検は課せられ、感知器の維持管理が必要だが、システムの維持管理はボタン操作でも行える。
その他、地震に強く凍結の心配がない、スプリンクラーと比較して、誤放射が発生する可能性が非常に低い、感知するスピードが速いなど、さまざまなメリットがそろっている。
 「『スプリネックス』は、元々病院向けに開発された消火設備ですが、現在では大きな商業施設などでも導入されています。また、法律でスプリンクラー設置を義務付けられていない施設だったとしても、火の元に特に注意しなければならない場所に設置されているケースもあります。万一の際の安心を提供できることも、建物の付加価値のひとつになると思います」(鈴木氏)

ボネックス 投げて消化する「サット」シリーズ 消火器との併設するケース増える
 消火機器のメーカーであるボネックス(東京都千代田区)では、投げ込むだけで消火することができる「投げ消すサット119エコ」など簡単に消火できる製品を開発・製造・販売している。
 「投げ消すサット119エコ」は、火災が発生した際に、火元に近づかなくても投げ込むだけで消火することができるため、避難経路の確保が可能になる。
 「火災時に、誰でも簡単に初期消火活動が出来る次世代消火器具」が製品のコンセプトで、総重量が620gと、子供や高齢者などでも簡単に取り扱えるのが特徴だ。容器は投げ落ちると割れるが、強く握っても割れないような特殊樹脂を採用している。
 火元に投げ込むと容器が割れ消火薬剤が飛散し、炭酸ガスとアンモニアガスが発生して酸素を遮断し、消火する仕組みになっている。
 「従来、消火器は目立たない場所に設置されがちでしたが、よりわかりやすい場所に設置してもらうため、インテリアのデザインにも調和するよう、保存するショルダーの色を赤のほかパステル系の3色を追加しました。また、最近は、介護や医療に関する施設などに限らず、一般の事業所などでも消火器と併設しているケースが増えました。万一出火の際いったん『サット』で初期消火活動を行ってから、落ち着いて消火器を使うという二段構え態勢を敷いているのです。ビル内で火災が発生してしまうと、物件の資産価値が非常に落ちてしまいます。ビルであっても火の用心に注力する際は、しすぎるということはないと思います」(代表取締役社長 苅谷 公司氏)

ニチボウ 自動消火システム「トマホークⅢ」
 防災設備の開発・設計・施工及びメンテナンス事業を展開するニチボウ(東京都品川区)では、ガス消火剤の高速噴射で火を消す、自動消火システム「トマホーク3.」を販売展開している。
 火災発生時、ガス消火剤を高速噴射する。よりすばやく消火するため、貴重な機器やデータの破損などが起こらないように、「HFC―23」というガス消火剤を採用した。
 「HFC―23」はオゾン層を破壊しないガス消火剤でもあり、人体に対して高い安全性を誇る。
 煙センサーと熱センサーによって、火災の発生を感知する。自動と手動を切り替えることで、無人の際には火災を感知してから消火剤の放射までを自動で運用する。しかも、消火剤を10秒間高速噴射することで、早期の消火を実現できる。有人時には、消火剤を手動スイッチで放射することが可能。
 また、「HFC―23」は、絶縁性が高いため、電気火災に対しても効果を発揮するため、消火後の復旧も容易だ。コンピューター室やデータ保管室などの火災対策として、とりわけ適している。
 「トマホーク3.」は、幅34cm×奥行35・4cm×高さ215cmのスリムな製品である。設置の際は、センサーと本体を接続するのみと簡単な工事のみ、配管工事はなし。既存のコンピューター室などに設置する際も、コンピューターを停止させるえことなく設置できる。

能美防災 地球にやさしい消火器を展開
 国内最大手の総合防災メーカー・能美防災(東京都千代田区)では、「地球に優しい消火器」と銘打ち、加圧ガスに窒素(N2)、蓄圧ガスにヘリウム(He)を採用し、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の発生を抑制する消火器を販売展開している。
 なかでも、高圧ガスで粉末消火して、木材、紙などが原因の普通火災から、灯油やガソリンや電気による火災までに適応するABC粉末消火器「MEDJ009―10」は、蓄圧式消火器で、放射とストップが自由になることが特徴だ。蓄圧式消火器は、本体容器内に消火薬剤とともに、常時0・70~0・98MPaの蓄圧ガス(N2とHeの混合ガス)が蓄えられており、消火薬剤は、蓄圧ガスの圧力によって、吐出管とホースを通ってノズルから放出される。
 また、ゲージの目盛の状態で蓄圧状態がひと目でわかる、圧力ゲージを採用している。
 いずれも気温20℃の状態で、放射時間は約15秒、放射距離は約3~5m(使用温度範囲は―30~+40℃)。




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