不動産トピックス

クローズアップ 空調システム編

2013.09.09 16:39

 室内環境を快適に保つ空調設備は、まさにビルの中核をなす設備といえるだろう。しかし、空調が一般化した現在、単純に室内を冷やす・暖めるだけでは利用者は満足しなくなっている。高効率の省エネ性能、体に優しい環境確保など、付加価値の高い空調に注目が集まりつつある。今回は独自の技術を活用した空調設備を紹介する。

プロトテック 「風と音がでない」身体に優しい輻射熱空間
 一般的な空調は冷風や温風を室内に放出することで強制的に対流を起こして温度を下げるため、温度ムラが大きいのが問題だった。一方、物質を介さず温度の高い方から低い方へ熱が伝わる性質を利用した輻射熱空調は冷風を放出しないので、いわゆる「冷房病」を防ぐことができ、さらに温度がほぼ均一になるため、温度ムラがなくなり快適な居室空間を生み出すことができる。また、送風音がないので静かな環境を維持することも可能。端的にいえば「風と音が出ない快適指数の高い」のが輻射熱空調なのである。
 プロトテック(東京都港区)が開発・販売・施工を行う空調システム「ラジアン暖冷」は、この輻射熱空調に当たる。 「輻射効率が極めて高いアルミニウム素材を用いて、壁面に設置できるパネル型輻射冷暖房システムです。ヒートポンプで作り出した冷温不凍液をパネル内に循環させることで、パネル表面から放射して冷暖房を行っています」(代表取締役社長 木香 次朗氏)
 一般的な空調と比べて、省エネ効率が高いのは暖房使用時だが、夏場はパネル表面を結露させることで湿度調整が可能になる。さらに、結露水が室内の臭い分子を吸着・除去するため、室内の空気環境を清潔に保つ副次的な機能も魅力だ。
 「また、フロンガスをヒートポンプに密閉しているため、一切外部に漏れず地球温暖化対策にも寄与します」(木香氏)  これらの特長が評価され、快適な室内環境の構築に役立つ「ラジアン暖冷」だが、現在は一般家庭よりも、より厳密な温度・湿度管理が求められる精密機械を扱う研究室などに採用されるケースが多いという。

ロゴスシステムズ 太陽熱を利用した暖房「空気交換保温システム」
 太陽熱を利用して高効率で空気を加熱。暖められた空気を室内に循環させ、電力不要で暖房効果が得られる。空気交換保温システム「ソーラーこはるび」の特長である。
 アメリカで開発された同システムをロゴスシステムズ(東京都港区)が日本に輸入し、ビルや工場、商業施設、官公庁、戸建住宅・マンションなど、約3500カ所以上の導入実績を誇る。
 同システムの仕組みは次の通り。フッ素樹脂系黒色塗装が施されたアルミ製の多孔パネルを外壁に設置。建物とは40mm~100mmほどの空間を確保し、屋内に設置したファンを回転させることで外気を屋内に取り込む。その際、太陽光でパネル表面が温められ、小孔通過時に外気を加熱。パネルと壁の間を外気が流れる際に更に加熱され、十分に暖められた空気はファンで室内に送り込まれ、暖房効果を発揮する。
 「フッ素樹脂系の黒色塗装は集熱効果が高まるほか、アルミの劣化を防ぐことで、50年のメンテナンスフリーを実現しました。また、軽量なため、建物躯体を傷めることなく簡単に設置できます。運転コストは給気ファンの電気代のみで、追加設備は一切不要ですので、電気代だけでなく、メンテナンスコストも大幅に削減可能です」(代表取締役社長 藤井 浩一氏)
 防風用のガラスフレームを設置すればより効率よく集熱でき、仮に外気温が0度の場合でも十分な日射量があれば出口温度は40度~50度に保つことができる。また、給気ファンには温度センサーが備わっており、室内に取り込む気温が30度以下になるとシステムが自動的に稼働停止するため、冷たい外気を室内に取り込むことはない。

日プレ 足元に無限に眠る地中熱による冷暖房システム
 再生可能エネルギーを空調システムに利用する。電気への変換効率が低い太陽光や風力の発電システムでは難しいが、足元に眠る膨大な地中熱がそれを可能にした。
 日プレ(広島県福山市)が開発した「Geo―Tacs」は、地中熱を活用した低コスト型の空調システムである。地下に埋める送風用の配管の表面に水を通す細い管を取り付けることで、土と地下水の両方の熱を効率よく利用し、冷暖房効果が得られる画期的な空調システムだ。
 地中の温度は地下5m付近になると年間を通じて15度前後の温度に保たれる。さらに地下水はより安定した温度となり、この部分の温度を有効活用するのが同システムの特長だ。さらに、同システムでは、GA800のダブルプレス管を使用し、管の外周に地下水を通すことにより埋設深度を抑えることが可能。深く地中を掘る必要がなく、工事コストの圧縮にも寄与する。
 配管を横位置に埋設するため、縦型の地中熱利用空調システムに比べて風量が多く、深度が5m以下でも十分な冷暖房効果を得ることが可能。熱効率も大幅に向上し、地下水の温度が16度の場合、35度の外気は28度まで下がり、外気温度が0度なら5度まで暖めることができる。
 基本的にあらゆる建物に設置ができる。工場、公共施設・集会場、集合住宅、一般住宅をはじめ、ビニールハウスや植物工場、畜産施設などの農業用としても活用できる。ランニングコストは化石燃料を使用する空調に比べて、約3割削減できるという。




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