不動産トピックス
クローズアップ 外壁編
2013.11.04 16:40
入居テナントや内見に訪れた企業にとって外壁はまず目に付く箇所であり、汚れが目立っているとそれだけでリーシング力が大幅に下がる。今回は外壁について改修・メンテナンスなど多角的に聞いてみた。
東京が移送メンテナンス協同組合 日常定期管理で長寿命実現
東京外装メンテナンス協同組合(東京都千代田区)は、建物外装の不具合の調査・予防メンテナンス・大規模改修工事を一括で受ける「トータル外装メンテナンス」というサービスを新たに開始した。
同協同組合は、行政案件の受注及びガラス外装クリーニングの分離発注の受注を目的に、複数のビルメンテナンス会社によって平成3年に設立された。現在、加盟する組合企業の数は10社となっており、各企業がこれまで蓄積してきた外装メンテナンスのノウハウを提供できることが同協同組合の最大の特徴となっている。
「加盟企業には、高所作業車を所有している企業、光触媒塗装工事を行っている企業、シーリング補修に関する高い技術を有する企業などがいますので、ビルオーナーの方のご要望に沿った外装メンテナンス及び改修工事をご提案することができます」(代表理事 日吉 俊行氏)
ビルオーナーにとって、外壁改修工事は多額の費用が必要となることから、出来る限り工事を実施する回数を少なくしたいというのが本音ではないか。日吉氏によると、実は日常定期管理の中で簡易的な外壁メンテナンスを実施することで、大規模な改修工事を実施するタイミングを引き延ばすことができるという。
「外壁に使用されている建材の特徴をしっかりと把握し、都度適切な対処を施せば、建物の寿命をのばすことは可能です。とはいえ、当協同組合に加盟しているような外装クリーニング業を行っている企業と直接契約しているビルオーナーの絶対数は少なく、不具合が発生してから外壁改修工事を実施するといったように後手に回っているケースが多く見受けられます。その点、『トータル外装メンテナンス』は清掃業務の範疇で経年管理を行い、欠陥箇所の早期発見・早期修復によって建物トラブルを事前に予防し、また発生してしまったトラブル対応においても早期対応が可能です。建物の外装が気になるというオーナーや、大規模改修工事を実施する資金は用意できないが部分補修を実施したいと考えているオーナーに最適なサービスとなっています」(日吉氏)
渡辺物産 難易度の高い繁華街での工事で多数実績有り
マンション・ビルなどの民間建築物や官公庁を中心とした改修工事の専門会社として、昭和39年の創業以来、多くの実績を積み重ねてきた渡辺物産(東京都大田区)。同社は改修工事の中でも特に外装工事を得意とし、一般社団法人マンション計画修繕施工協会が主催する「第3回マンション・クリエイティブリフォーム賞」において、「マンション・クリエイティブリフォーム賞」を受賞するなど、業界内外に問わず高い評価を得ている。
同社が提案する複数の外壁工法のうち、「GNSピンネット工法」は2000物件、100万m2の施工実績を有し、国土交通大臣認定を受けた高い信頼性を誇る外壁工法。既存の外壁仕上げ面に対して、ネット補強下地層を構築することで、タイルやモルタルなどの既存仕上げ材の落下を防止する。その他にも、天然石材の風合いをもつ加工シート状天然砕石装飾材を活用した「MAストーン 鎧貼り工法」や、特殊なアンカーピンを使用して、浮きの発生している外壁タイルをコンクリート躯体に固定するという「MGアンカーピン工法」など、オーナーの要望に合わせた外壁改修工事を実施することが可能である。
「一般的に工事の難易度が高いと言われている繁華街に立地する建築物への外壁改修工事について、数多くの実績を持っている点も当社の特徴です。また、オーナーの方に安心して工事をお任せしていただくために、『GNSピンネット工法』については10年間の保証もご用意しています」(営業部 部長 天田 裕之氏)
大林組/清水建設/菊水化学工業/日本化成 特殊繊維シート活用した壁タイル張り工法
大林組(東京都港区)、清水建設(東京都中央区)、菊水化学工業(名古屋市中区)、日本化成(東京都新宿区)の4社は共同で、日本建築センターから、型枠先付け特殊繊維シート(ウェブフォーム)を用いて外壁タイル張りのはく離・はく落を防止する「ウェブフォーム工法」に対し建設技術審査証明を取得し、事務所ビルや商業施設、集合住宅などのRC造建物の外壁タイル張りに向けて積極的に提案している。
同工法は、特殊繊維シートをあらかじめ型枠に取り付け、コンクリート打設により躯体表面にそのシートを定着させ、脱型後、毛羽立った繊維面にモルタルを塗り付け、直接タイル張りを行う。これにより、コンクリートとタイル張り付け用モルタルの双方が、ウェブフォーム(繊維)の毛羽立ちによって連結され、はく離・はく落を防止することができるという外壁タイル張り工法となっている。
既に、平成24年度末までの「ウェブフォーム工法」の全施工実績は、205物件(延べ22万m2)に上っている。日本建築センターから建設技術審査証明を取得したことで、施工体制の確立や施工情報の一元管理を図ることを可能とし、より安心して採用することができるようになった。
朝日リビング リーシング力を高めるソリューション提案
改修工事の専門会社である朝日リビング(東京都千代田区)は、オフィスビル・マンションを所有するオーナーに対して、独自の「提案力」を生かしたソリューション提案を行っている。
「一般的な外壁改修工事はあくまでも原状回復工事に過ぎません。当社では外壁改修工事の実施に併せて、ビルの付加価値を上げることでリーシング力を高めるためのエントランスや共用部の改修工事も提案しています」(東京本社 課長 熊澤 剛太氏)
ビルオーナーの一番の悩みといえば、やはり空室をいかに埋めていくかという点である。外壁改修工事はビルの管理上必要不可欠な工事とはいえ、それを実施したからといってビルの付加価値が上がるわけではない。同社では、付加価値向上につながる改修工事とするため、まず建物診断を行い、その問題点を把握した上で、最適なソリューションプランを提示している。
「改修工事を実施する際の注意点は、過剰投資あるいは過少投資とならない最適な着地点を見出すことです」(熊澤氏)
熊澤氏が話す最適な「着地点」とは、費用対効果が高く、不動産経営の改善につながる改修工事であるということ。最適な「着地点」に落とし込むために、同社では女性目線を採り入れたソリューションプランを提示している。
「稼働率の高い建物を実現する上でキーワードとなるのが『女性目線』。外壁はもちろん、エントランスや共用部などのカラーリングや建材も、女性に好まれるデザインの建物が人気です。当社には多数の女性スタッフが在籍しており、その女性スタッフが『女性目線』でカラーリングや建材などを選定しイメージプランを作成しますので、テナント・入居者のニーズに合った建物に改修することが可能となります。当社の女性スタッフとオーナーが打ち合わせを重ね、改修工事を実施した施工事例では、工事後半年も経たないうちに満室稼働を実現したというケースもありました」(熊澤氏)