不動産トピックス
クローズアップ 木材編
2013.12.09 17:38
ビルの安定稼働を維持するために、昨今差別化や価値向上が求められている。様々な癒やし効果がある木材を、ビルに取り入れることで、差別化が実現するのではないか。
ムサシパーティション工業 木材を取り入れたパーティション
パーティションの設計・製造・施工・販売を展開するムサシパーティション工業(東京都新宿区)では、今月16日より木製のウォールシステム「MOKUWALL(モクウォール)」の販売を開始する。「モクウォール」は、建物内装の木質化を促進していた東京木材市場(東京都江東区)との共同事業により開発されたものだ。
パーティションは本来オフィスビルの貸室内で、テナントがレイアウトするために用いられるが、一方で近年長引く空室に悩む大規模フロアなどを、あらかじめ分轄してより小さい面積でテナントを募集するビルも増えてきた。従来のパーティションはアルミやスチールなど金属素材が多かったが、「モクウォール」は天然素材の木材を取り込んだ新しいタイプのパーティションだ。今回はトイレタイプ(トイレブース)、Highタイプ(床と天井が固定される)とLowタイプ(応接ブースなどに用いられる)の3種類が発売される。とりわけ衛生面での高い品質が求められるトイレタイプでは、ブースの内側や頻繁に手を触れる部分はメラミン化粧板を採用し、木質の部分には液体ガラスの含浸塗装を施して耐水性を向上させている。
「木目調ではなく本物の木材がパーティションに取り入れられた、新しいタイプのパーティションです。節目や風合いなどで個体差がある木材が、パーティションの形として製品化されているため、設計の現場などでも導入しやすくなると思います」(間野目氏)
製品の木質部分に一部破損などが生じても、パネル化された木質部分を交換することで修繕が可能になるため、長期使用が見込める製品だ。
駿河屋 自然の温かみある癒しの空間を
駿河屋(東京都墨田区)は、老舗の材木商としての歴史が350年あまり、現在は木材や自然素材に特化した総合建築事業などを展開している。
同社では、長年材木商として培ってきた実績をもとに、非常に良質かつ値ごろ感のある価格で、産地から直接材木を仕入れることなどが可能だ。代表取締役社長の一桝靖人氏は良質な材木について「本来の木の風合いを保つために自然乾燥を施しています。また、同じ個体でも伐採した時の月齢によって木のツヤや香り、さらには強さなどが異なるため、より品質の高いものとして新月伐材をご提案しています」と説明する。
駿河屋では昨年5月に、同社がある建物の2階をリノベーションして「宿泊型モデルルーム」としてオープンした。実際に木材や自然素材によって作られた空間を体験してもらい、その良さを多くの人に知ってもらうことが目的だ。このモデルルームの見学者のなかから、ビルの空室をレンタルスペースにする際に、「ほかにはない空間をつくりたい」との意向で、良質な木材をふんだんに活用したリノベーションを行うことを決めたオーナーもいた。自然志向・健康志向が高まっている昨今には、良質な木材を活用することも、物件の差別化・価値向上のための一案となる好例だ。
「市場には流通しない天然乾燥の本物の木を使うことで、木が本来持っている美しい艶や香り、空気を感じることが出来ます。そこには石油から作られた環境とは全く違う、自然の温かみとぬくもりのある魅力溢れる癒やしの空間となります」(一桝氏)
九州木材工業 新しい保存処理木材「エコアコールウッド」
九州木材工業(福岡県筑後市)では、従来木材の短所とされていた割れや腐れを抑制した、新しい保存処理木材「エコアコールウッド」を製造・販売している。
「エコアコールウッド」は、従来の保存処理木材と比較して、非常に高い耐久性を持っている。水中でも「エコアコールウッド」は腐りにくいため、フナクイムシによる被害などを最小限に抑えることが可能だ。そのため、世界文化遺産・厳島神社の補修工事にも採用された実績を持つ。木材にエコアコールを注入すると、腐朽菌による木材成分の分解を困難にするため、木材そのものが腐りにくくなる。シロアリに対しての栄養源ともならないため、食害されることはない。
また、木材の劣化は「割れ」から生じる可能性が最も高いと言われているが、「エコアコールウッド」は、非常に割れにくいという特徴もあり、木材の劣化を防ぐとともに、長年にわたり木の本来の美しさを維持し続けることができる。
形状が変わりにくい寸法安定性も持っているため、汎用性の高い木材である。そのため、日本固有の建築物や文化財から、大型ビルのカーテンウォールやルーバーなどの木質建材としてなど、用途は非常に幅広い。
「エコアコールウッド」は無毒性で、焼却しても有毒ガスを発生せず、灰中にも有毒物質は残存しない。