不動産トピックス
クローズアップ 工事費用削減編
2014.06.16 16:27
ビルの「建替え」と「長寿命化」。いずれの選択肢も工事は必要不可欠となる。ここで一点疑問。ビルオーナーは何を基準に工事会社を選定しているのか。元施工だから、昔からの付き合いだからと理由は様々あれど結果的に工事費用が高くなってしまったら本末転倒だ。そこで今回のクローズアップは工事費用削減を実現に向けてサポート業務を展開する企業を紹介する。
ビルやマンション、戸建住宅など、建物の所有者であれば将来的な解体作業とそれに要する費用をあらかじめ把握しておくことが望ましい。しかし、建物の規模や立地条件によって異なる解体費用の適正価格を把握している所有者は少ない。また、現状においては解体業者が提示する工事価格は千差万別であり、違法や粗悪な作業を行う業者は適正価格を提示する業者より安価な見積もりを提出し、コストを抑えたい発注者は悪質な業者だと知らずに工事を依頼するケースもあるようだ。内装や建物の解体工事には発注者の個人情報の漏えい防止といったコンプライアンスの遵守が求められる一方で、発注者側も信頼できる解体業者を選定することが重要となる。
こうした中、グエル・パラッシオ(東京都杉並区)では適法で信頼できる解体業者を無料で紹介するポータルサイト「解体サポート」を運営し、解体工事を進める上での注意喚起を行うなどのコンサルティング業務を手掛けている。
「明らかに安価な見積もりを提出する解体業者は、工事中の騒音や粉じんといった周辺への配慮を怠ったり、作業工程を簡略化して工期を短縮したりといった、適正な価格と作業を提供する業者からは考えられない業務を行っています。このような粗悪な業務を行う解体業者に工事を依頼し、仮に事故や不法投棄が起きてしまった場合、建物所有者が責任を負わなければならないケースもあるだけに、価格に惑わされず信頼できる解体業者を選定することが重要です」(平井 里司氏)
「解体サポート」には全国版・首都圏版・関西版があり、同社サポートマネージャーの池貝充隆氏によれば北海道を除く全国の主要エリアに提携を結んだ解体業者のネットワークを有し、クライアントからの相談に対応しているという。
「日本国内で解体業を営む業者は1万数千社といわれています。この中で、クライアントの立場に立って親身に相談に応じ、適正価格で信頼できる解体工事を行ってくれる業者もいれば、コストのスリム化だけを追求して作業品質に問題のある業者もいるというのが実情です。『解体サポート』は当社スタッフが直接業者側と対面して業務内容などを精査した上で、信頼性が高い解体業者のみを提携業者として登録しています。テレビや雑誌などの各メディアでも『解体サポート』を取り上げて頂く機会が増えたことで、当サイトを信頼してご利用頂くクライアントが増えている印象です」(池貝 充隆氏)
東京オリンピックの開催が決まりインフラの整備が急ピッチに進んでいる。それとともに老朽化を迎えたオフィスビルの建替え工事の案件数も増加。いま東京の不動産市場が活気づいている。しかし不動産市場が活気づくのと比例するように建築資材と作業員の人件費高で建築費も高騰。また建築費用だけでなく解体費用も同じく高騰している。
「これまで解体工事は業者以外何をやっているか把握するのが難しく、オーナーに届くのは『解体費用』と明記された請求書だけという状況でした。ですから適正な解体費用を請求されているのかオーナーは知る由もありません」(リユース・パートナー 代表取締役 宮本 純一氏)
建替えを前提とした解体工事の場合、トータルの工事費用が莫大なものとなるので「解体費用」といった一項目は見逃しがち。とはいえ請求金額を見てみると決して安い金額ではない。宮本氏はこの解体費用の内訳を可視化することを勧める。
「本来であれば解体工事費用も1円単位で管理すべきです。ただ管理できる人がいない。当社はこの点に着眼し解体工事の費用削減コンサルティング業務を始めました」(宮本氏)
同社はこれまで解体工事やオフィス移転、改修工事等で廃棄されていた設備・配管・配線・鉄骨などを有価で買い取る「リユース事業」を展開していた。オフィスビル・工場・商業施設など様々な案件に着手する中で不透明な解体費用の削減を依頼されることが増えてきた。そこで解体工事費用コンサルティング事業を思いついたという。
業務内容は至って簡単。同社がビルオーナーを代行して解体工事業者との交渉を進め、適正な工法の選定や買取可能な設備等の仕分けを行うことで解体費用を最大30%削減することも可能であるとのことだ。コンサルティング費用は物件によっても異なるが解体工事費の3~8%。
「すでに全国の大型物件含む様々な用途の建築物のコンサル業務の実績を積んでいます。見積り、業務内容の説明を無料で承っていますのでお気軽にご相談ください」と話す宮本氏は同事業の拡大に自信を見せた。
「当社に工事発注の際に取組をご依頼いただければ、工事・エリア・規模により適切な工事業者を50社選出します。その上で条件に応じる業者を約10社までに絞り込み入札と施工計画・過去実績の評価を実施します。これにより工事費用の削減と工事品質の維持を実現することが可能です」(代表取締役 山本 隆広氏)
ナックス(東京都千代田区)は、事務処理品実施しない施工業者を省き、実務を行う施工業者とビルオーナーを直接結び付けることと「リバースオークション」を活用した見積競争環境の創出で、ビル経営に欠かせない改修・修繕工事のコストを削減するサービスを展開している。同社が用意するコスト削減の報酬プランは3種類。1つ目は削減額の30%を支払う「成功報酬型」。2つ目は発注金額の1~5%を支払う「業務報酬型」。3つ目は月50万円を支払う「月額固定型」の3プランから選択することが可能となっている。
「オフィスビルの外壁シール交換工事では、工事費用を2000万円削減、削減率約60%を達成した事例もあります。過去実績500件超の平均的な削減率は23%の見直しをすることができました」(山本氏)