不動産トピックス
今週の一冊
2014.08.04 14:19
ビル賃貸業にもつながる空き家問題
空き家問題 1000万戸の衝撃
著者 牧野 知弘
出版 平成26年7月1日
発行 祥伝社
価格 800円(税抜)
不動産賃貸経営者にとって人口減少問題は賃貸経営の根幹を揺るがす大きな問題である。オラガHSCの牧野知弘氏の新著である「空き家問題 ―1000万戸の衝撃」では人口減少問題を「空き家問題」として取り上げている。
牧野氏は空き家問題を日本の構造的な問題として捉え、空き家が増えている要因の一つとして固定資産税や相続税、都市開発制度の不備を指摘する。ビルオーナーにとっては固定資産税と相続税についてはうなずくところが多いだろう。本書のエピソードの一つとして紹介されている「不動産活用による相続対策を指南していた税理士が自身の相続では真っ先に不動産を売却した」という話は不動産価値の変化を象徴するものだ。
全編通して牧野氏が主張する空き家問題は空きビル問題と置き換えても違和感がない。資金力のある大手デベロッパーが再開発や建替えを積極的に進める一方、資金力のない個人ビルオーナーが所有する中小ビルはよほど工夫をしない限り、賃料水準と稼働率を維持するのが困難な状況はすでに見受けられる。
牧野氏はこれらの問題の解決手段として「日本の骨組みを変える」ことを提唱する。ただ、いつ誰が「骨組みを変える」のか皆目見当が付かない。その点最も確実かつ時間をかけずに変えられるのは自分自身の考えだ。自らの頭に汗をかくことが「空き家問題」を抱える現状を打破する突破口になるはずだ。