不動産トピックス

クローズアップ 音響機器編

2014.09.15 13:53

 他物件との差異化を図るために内装や外装、床面などをきれいに仕上げるビルオーナーは多いが室内の音環境にまでこだわる経営者はまだ少数だ。室内に音を取り入れるだけで空調機器などのサウンドマスク効果やリラックス効果等を得ることが出来る。
 ボーズ(東京都渋谷区)は、米国マサチューセッツ州を拠点とする音響機器などの研究開発企業、Bose Corporationの日本法人である。
 ブランドマーケティング部の長谷洋樹氏は「ビルに求められる音響設備は主に非常用放送設備とBGM放送設備の2通りがありますが、当社は非常放送用のスピーカーの開発および製造はしていません。当社は生演奏の感動を届けるということを会社の理念として掲げており、BGM用の音響設備を幅広く展開しております」と語る。
 「当社で提供するBGM用の音響機器は音楽的な豊かさが重要となってくるため高い音から低い音まで出すことができる仕様になっています。ビルに導入するときに目立たない方が良いと考えるビルオーナーも多いと思いますので、主張しないデザインで上品さとエレガントさを演出し、内装に合わせて黒と白の2色を用意しました。配線ケーブルも露出しないようなつくりとなっているため室内にすっきりと設置することができるということが特徴です」(長谷氏)
 「他物件との差異化を図るために音にこだわる建物がいくつか出てきたなと感じています。数値的なスペックを見れば他の製品と比較して劣る部分も優れている部分もありますが、あらゆる音楽を再生したときに生演奏の臨場感を感じていただけるように設計されています。クラシックホールで聴くオーケストラのような広がりやリアリティ、真に迫った音などを流すことができると思います」と長谷氏は製品へのこだわりを見せる。
 「どこで使用していただいても一緒だというわけではなく、どういった場所に設置してどのような空間で鳴らすのかまで計算して一番よく聴こえる方法を提案しています。今後もボーズは空間の特性と目的に合わせた音響システムを提供することで居心地の良い音環境を作っていきます」(長谷氏)
 NECライティング(東京都港区)は照明器具の開発、製造および販売を手がける大手照明メーカーだ。LED照明の普及が進むなかで他製品との差異化を図るために、同社はスピーカー搭載LEDシーリングライト「CrossFeel」の製造・販売を行っている。 事業統括本部広報室の櫻井顕彦氏は「『CrossFeel』には小鳥のさえずりや小川の流れなど6種類の環境音が記憶されています。スピーカーはパイオニアが製造しているのですが音源は実際に録音したものを使用しています」と語る。
 「内蔵されている音源は6種類だけですが、ブルートゥース機能を搭載している製品も販売しているため専用アプリをダウンロードしてスマートフォンなどに入っている音楽を天井から流すこともできます。iPhoneなどで音楽を聴く層は若い方が多いと思いますが、そういう人たちが購入できる値段かというと少し高い製品となっております。ターゲットと合っていないということが社内で議論になりましたが、どうしてもつきつめるとそういう値段になってしまいました。販売するにあたって心配もありましたが予想よりも多く売れています」(櫻井氏) 
 「CrossFeel」は家庭用照明製品として販売されており設置には家庭用ローゼットが必要となる。しかし、電気工事次第ではビルや事務所の一室に設置することも可能だと櫻井氏は言う。スピーカーは照明に内蔵されているため電源ケーブルを増設する必要がなく室内の意匠性を損なうこともない。
 「実際に体感していただくためにモデルルームや展示場へのアプローチを強化しております。毎年、販売数が出ている製品となっており需要はあると思いますので販売戦略に力を入れていこうと考えています」(櫻井氏)

 白寿生科学研究所(東京都渋谷区)は、一般音声放送やBGM用にも使用できる室内非常放送兼用音響設備「CERASOUND(セラサウンド)」の製造及び販売を行っている。
 営業本部顧客開発部の松藤泰治氏は「『セラサウンド』にはセラミックの素子を使用しています。他の材料と比べ周波数帯域が狭く300~8kHzほどしかないため低音から高音までオールマイティに出すことはできないためジャズなどの響く音楽は苦手としておりますが、帯域内の音質だけにはこだわり人の声などが聞こえやすい仕様となっています」と語る。
 「当製品は見えないスピーカーというキャッチコピーで売り出しています。アルミや石膏、木材など音が出る建材であればどこにでも設置することが可能であり壁一面を振動板にしてスピーカーに変えることができます。建材の後ろに特殊な両面テープで接着させるため音響機器を露出させる必要がなく意匠性の高い建築空間を実現します。室内のどの場所から音が出ているのかわからないということで利用していただいております」(松藤氏)
 セラサウンドはオフィスビルや商業施設、ホテルや寺院など様々な場所に設置されている。「元々は非常用業務兼用スピーカーとして販売していたのですが、こういう使い方はできないかなど顧客からの提案を受けて活用の幅が広がっていきました。ビルオーナーの用途に合わせて使用することができる製品となっております」と営業本部付次長の青木基次氏は述べた。
 「当社は医療用機器などの開発を行っているため他製品と比較して強度がある音響機器であり耐衝撃性、耐塵性、耐薬性、防水性などに優れています。音を実際に聞いてみたいという方のために当社にデモスペースを用意しており、また2週間の無料貸し出しも行っています。設置を検討している方は相談いただければと思います」(青木氏)




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