不動産トピックス

クローズアップ キュービクル編

2014.10.27 13:36

 ビルに電気を供給するためには変電設備の設置が必要不可欠だ。しかしどのような設備を選択すればよいのか迷うビルオーナーは多いだろう。製品での差別化を図ることが困難なキュービクル業界はサービスで違いを出す傾向がある。各企業がどのようなビジネスを展開しているのか紹介する。

 創業から10期目を迎えるエスコ(東京都新宿区)。同社は創業当初から事業の柱の1つとしてキュービクルの保安点検サービスを展開している。
 保安事業部部長の落合直樹氏は「現在は約3500件の保安点検を受注しています。太陽光設備の保安点検の依頼が増えてきていることが最近の傾向です」と語る。
 エスコではキュービクルの24時間監視システムを提供しており、異常があった場合にはコールセンターに緊急通報が自動発信され、必要に応じて技術者が現場に派遣される。約9割の顧客が監視装置を設置しているという。
 「多くのお客様は電気設備に関して詳しい知識を持っていないのが実情です。月次点検と年次点検が法令で義務付けられているため点検報告書を上げるということは他の企業でも行っていますが、それにとどまらず顧客目線で分かりやすい内容で、異常がどこにあり、どのような事故につながるかということを詳しく説明し改修・改善を促しています」(落合氏)
 電気管理技術者は点検業務を行う技術者でありながら顧客との接点でもある。対応の良し悪しで契約継続してもらえるかどうかが決まる場合も多い。エスコは技術者に対して社員教育や研修を通して、通常の点検業務だけで完結ではなく、より質の高いサービスを提供することを意識させている。
 キュービクルは機器毎に更新の目安が異なる。エスコは各機器がどのような機能を果たしどのような役割があるのか個々に説明する高圧設備診断サービスを昨年から開始した。落合氏は同社のサービスについて次のように語る。
 「お客様に改修しなければいけないという納得感を持ってもらうことが狙いです。電気設備の事故を未然に防ぐということが目的ですので、当社は問題がある部分のみならず将来的に問題となり得る事象も含め改修を提案していくことに重点を置いています。他の企業でここまできめ細かいフォローを行っているところは少ないのではないでしょうか」
 差別化を図ることが難しいことがキュービクル点検の特徴であるが、エスコは点検以外のサービスを充実させることで顧客拡大を目指している。

 日本テクノ(東京都新宿区)が提供するキュービクルの保守管理サービスは、24時間監視は当然のことながら同社の強みである電力コンサルティングを駆使した「電力改善」サポートを特徴としている。
 保安部部長の中村拓氏は「デマンドの『見える化』から『解かる(わかる)化』を実現したモニター『SMARTMETER ERIA』は、設定した目標値に対してニコちゃんの表情の変化とアラームにより省エネ行動のタイミングがリアルタイムで解かるシステムとなっています。文字盤の周りに電力使用量を表示するLED照明の目盛りを配置し使用状況に応じて点灯する電波時計『SMART CLOCK』をオプションで設置することができ、その時点でどの程度の電力を使っているか遠くからでもひと目で分かるシステムを導入することができます」と語る。
 日本テクノはキュービクルの保守管理サービスだけでなくシステム導入後のアフターフォローにも力を入れており、電力の利用状況分析シートをもとに、削減効果を診断し、定期的に電話や訪問で説明を行っている。また事業場ごとに省エネ・運用改善マニュアルの作成を行い99業種に分類することで様々な顧客に対応できる体制を整え継続したアフターフォローにより効果的な省エネを行うことができる。
 「経営者に向けてはテナントビルのオフィスの電気料金を公平化・明確化しテナントビルのオーナー・管理会社の検針・請求・回収業務の負担を解消する電気料金自動検針システム「ECO-TENANT」も提供しています。電気設備は保守管理のみならず、ビルの電気環境をトータルに見て改善していく必要があります。当社では電力小売からコンサルティング、省エネ設備改善まで、電気に関するあらゆるサポートを可能としています」(中村氏)

 白川電機製作所(東京都目黒区)は、大正2年に創業し100年以上の歴史を持つ配電盤システムメーカーだ。約40年以上前からキュービクル式高圧受変電設備の製造・販売を開始し、現在も主力製品の1つとしてビジネスを展開している。
 専務取締役の高橋弘政氏は「基本的にはビルは変電設備がないと電気を供給することはできません。キュービクルは特別なものではなく、無くてはならない設備です。規格に則って安全に電気を供給することができる製品を作るということが全てではないでしょうか」と述べた。
 建物の用途や目的により設置されるキュービクルは異なる。家電製品のようにカタログにあるものを販売するわけではなく顧客のニーズに合わせた製品をいかに提供できるかが重要になってくる。白川電機製作所は他社との差別化を図るために受注から製造・検査、出荷、アフターメンテナンスまでトータルで管理し顧客との信頼関係を維持してきた。
 「顧客の要望に応えながら評価を積み重ねてきました。この会社に依頼すれば配慮に欠けたような製品を納入されることはないと信用していただいていることが受注に結びついていると思います」(高橋氏)
 コンピュータの普及等で電気の重要性は高まってきている。「電気設備に配慮されたビルは増えてきていると思いますが絶縁事故が起こる可能性があります。壊れた後に直せばよいというわけではなく健全な状態で設備を維持して欲しいです。そのためにもメンテナンスはしっかりと行っていただきたいと考えています」と高橋氏はメンテナンスの重要性を語る。




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