不動産トピックス
クローズアップ ITシステム編
2014.11.17 17:16
他業界と比較してIT化の進行が遅いと言われている不動産業界であるが、システム会社も様々な角度から業務効率化を促す新サービスを開発し、不動産業界に提案を進めている。ITの知識はさっぱりというあなたにもぴったりな新サービスはあるはずだ。今週のクローズアップでは「ITシステム」の最新トレンドをご紹介する。
キヤノンシステムアンドサポート(東京都品川区)は、リングアンドリンク(埼玉県所沢市)の不動産営業支援システム「@dream―proge」とヤフー(東京都港区)が運営する不動産ポータルサイト「Yahoo!不動産」が連携する物件データ連動サービスを10月16日から提供開始した。
「@dream―proge」は不動産業者が自社の物件データや顧客情報の管理が可能とし、ホームページやポータルサイト、SNSへ物件情報を簡単に投稿でき、メンテナンスも一括で行えることを特徴とする不動産営業支援システムである。
10月から開始した新サービスはワンクリックで物件データが「@dream―proge」から「Yahoo!不動産」へ連動でき、集客力拡大と物件情報の露出増加が期待できる。また月額1万円で上限無く物件の投稿が可能で、画像も36枚まで掲載することができ、不動産業者は安価に効率よく集客することができる。
オービック(東京都中央区)は会計を中心としたトータルソリューションを実現するソフトウェア「OBIC7」を開発・提案している。平成9年から「OBIC7」を発売して以来、数多くの企業で導入されてきた。同ソフトウェアは小売業やサービス業向け、卸・物流向けなど幅広い業種に対し、会計業務、人事業務、生産情報など幅広い業務を支援するソリューションシステムとなっている。
不動産向けの「OBIC7」も賃貸借管理から、ビルメンテナンス、デベロッパー向けソリューションなどといった、オフィスビルから商業施設、賃貸住宅までの不動産関連事業全般に向けたトータルなソリューションシステムだ。
同社のソリューション推進本部マーケティング推進部課長の天満徹氏はこのような総合的なソリューションシステムが提案できる企業は少ないという。「たとえば、賃貸管理だけに特化した、あるいは、施設の予約だけに特化したソフトを販売している企業は多数ありますが、当社のように全てを網羅している企業というのは少ないのではないでしょうか」と同氏は話す。この点が同社の強みともなっている。
また、同ソフトウェアはクラウドで利用することも可能だ。天満氏は「新規導入のうち、半分はクラウドでのご利用になっています」と言う。同社は今後も同ソフトウェアを通じて、日常業務の効率化と経営判断の適正化を支援していく。
インフォマート(東京都港区)は、企業間電子商取引(BtoB)プラットフォームサービスの新サービス「ASP請求書システム」を10月末にリリース。同社の取引先約3万6000社の11月分の請求書から稼働を始めた。
同社はこれまで飲食業界を対象に食品食材や備品等の発注と受注をウェブ上で行う「ASP受発注システム」を平成15年から提供してきた。同サービスは電子データを基に月間の請求金額が確定するため、紙による請求書の発行と受取が不要となり、平成26年9月末時点で外食チェーンを中心とした1663社と卸企業2万5718社が利用している。「ASP請求書システム」の開発経緯も、外食産業からの要望がきっかけだという。
「『ASP受発注システム』を利用する外食企業と卸企業の双方からの『食品食材以外の請求業務を電子化したい』との要望があったことがきっかけです。食品食材以外の請求業務の中には賃料も含まれていました」(グローバル事業本部 メディア事業課 課長 齋藤 文彦氏)
企業間電子商取引をすでに実施している企業は同一フォーマットで請求書の発行・受取・管理できる電子化するメリットをよく理解しているだろう。しかしIT化が遅々として進まない不動産業界に対して「ASP請求書システム」を認知していくためには「一度利用してもらってそのメリットを感じてもらうことと啓蒙活動が必要」と齋藤氏は話す。
「不動産会社やPM会社は請求書などの書類についてペーパーレスにしたいという認識を持っているようですが、不動産業界全体でみると紙ベースでの取引が中心であるのが現状です。当サービスをご利用いただければ請求書の発行・管理業務の効率化、環境にも優しいペーパーレス化を簡単に実現することを実感していただけると思います。また電子帳簿保存法にも対応しているため紙による保管も不要です」(齋藤氏)
不動産業界は請求書の発行・管理に限らず書類は紙が中心。取引先の数が少ない小規模ビルであれば問題ないかもしれないが、ビルを複数棟所有しているオーナーや複数棟管理している管理会社などは請求書の発行業務だけでも多大な労力が必要となる。その点、「ASP請求システム」は請求書発行業務に関する労力を軽減するだけでなく、請求書の郵送に伴うコストの削減・書類の保管にかかるコスト等の削減が可能と多くのメリットを享受することができる。
システム利用における契約モデルは「発行モデル」と「受取モデル」の2種類。それぞれ取引先のシステム利用については無料。同社が発行するIDでシステムにログインし請求書の発行・受取を行う。現在、同システムの契約者数は213社。そのうち121社は11月から稼働が開始されている。同社は今後の目標として2年後までに100万社へのID発行を掲げている。