不動産トピックス

クローズアップ 駐輪システム編

2015.01.12 14:01

 都心のオフィス街に駐輪場が足りない。近年声高に叫ばれるようになってきた、この駐輪場不足問題を解決するべく、空室・空地といった未利用不動産を有効活用した駐輪システムの開発が進められている。健康志向から自転車で通勤するワーカーは今後も増加することが見込まれる。社会的貢献度の高い取り組みとして駐輪システムにスポットを当てた。

オールグリーン 東京都中小企業応援ファンドに選定
 東京都中小企業振興公社では東京都と協力し、地域の魅力向上や課題解決を目的として意欲やアイディアに溢れた事業に対して助成する「東京都地域中小企業応援ファンド」事業を行っているが、昨年12月に対象事業に選定されたのが、オールグリーン(東京都豊島区)が展開する駐輪システム「Store Bike」だ。
 「ロードバイクの価格は1台10万円以上します。一般的な駐輪場に停めておくと勝手に精算されて盗まれてしまう可能性も捨てきれません。ロードバイク愛好家にとってはセキュリティのしっかりした駐輪場を求める声が高まっていますが、いずれも月極契約で利用料金が非常に高額で気軽に利用できませんでした」(代表取締役 新谷 加生氏)
 同システムが開発されたのは、まさに自転車愛好家のニーズに応えたもの。ロッカーの素材には屋外使用に適した鋼板を使用。ガードレールと同じ素材を用いており、非常に頑丈な構造になっている。1台分のサイズは幅598mm、奥行き1069mm、高さ1880mmとコンパクトサイズで、ビルや駐車場の空スペースに設置するだけで高いセキュリティ効果を持つ駐輪スペースが誕生する。また、ロッカー内に単純に自転車を入れるだけでなく、内部のEASYフックに自転車前輪を固定するのでスムーズに出し入れが可能だ。ロッカー内部には破壊難易度の高いチェーンロック用フックを設けており、二重のセキュリティ対策を施している。また、防塵構造によりほこりの侵入を最小限に留める。
 助成事業では同社がロッカーの設置場所を借り上げる形で運営していくという。高額な自転車パーツの盗難等に遭わず安心・安全な都市づくりへの貢献を目指す。

自転車創業 駐輪場で空室活用
 遊休地を活用して駐輪場不足問題を解決するサービス「PEDALRest(ペダレスト)」を展開している自転車創業(東京都世田谷区)。昨年10月、東京エリアで初となる室内駐輪場を西新宿にオープンさせた。
 同サービスは、不動産オーナーに有効活用していない遊休スペースを提供してもらい、同社が駐輪ラック等を設置し、自転車の管理を行うというもの。利用者は「PEDALRest(ペダレスト)」サイトから申し込みをし、毎月カード引き落としで利用料を同社に支払う。スペースの借り上げではなく、管理受託する契約になるが、オーナーは設備投資が一切不要になる。
 室内駐輪場を開設したのは2020年に開催する東京五輪が背景にある。東京五輪会場となるお台場を「自転車特区」とする構想が発表され、舛添都知事も就任当初から自転車レーン整備に意欲的な姿勢を見せていた。これに加えて、従前からの健康志向で自転車を通勤手段とするビジネスマンも急増。その反面、駐輪施設は慢性的に不足しており、大勢の人々が集まる都心部では駐輪場を開設するスペースがほとんど見つからないのが現状だ。
 「私が最初に起業した際、通勤や移動に自転車を使用していましたが、オフィスの近くに駐輪場がなく、すぐに撤去されてしまいました。こうした問題を解消するために昨年1月から不動産の遊休スペースに駐輪ラックを設置し、月極駐輪場の運営を開始しました」(代表取締役 中島 大氏)
 同サービスではこれまで屋外駐輪場が主体だったが、ロードバイクをはじめとする高級自転車ユーザーから安全性を求める声が多数寄せられ、今回の室内駐輪場を開設することになった。既存の住居施設を生かしており、自転車通勤で汗をかいたユーザー用にシャワー室を完備。自転車のサイズに合わせて車輪受けの高さが異なる駐輪ラックを16台分用意。さらに定期利用者向けに大小2つのロッカーを合計13台用意するなど、自転車ユーザーのニーズに合致した設備仕様となっている。
 ただ利用料金を値上げせず収益を伸ばすには駐輪台数を増やさなくてはならないが、それだけ床面積も必要となる。空室活用の一環として室内駐輪場が1つの選択肢になりえるが都心のビルで開業できるかは未知数だ。


マーストーケンソリューション 導入効果大きい駐輪管理システム
 マーストーケンソリューション(東京都新宿区)が筑波大学に向けてUHF帯RFIDを活用した不適切駐輪管理システム「ICycle」を開発。第16回自動認識システム大賞特別賞を受賞した。
 東京ドーム約55個分という広大な敷地を持つ筑波大学キャンパスでは授業間の移動に約7割の学生が自転車を利用している。キャンパス内の自転車・バイクの数は常時2万台以上となり、十分な駐輪スペースの確保が困難。決められた駐輪エリア以外への迷惑駐輪や放置自転車も多く見られ、建物へのスムーズの出入りや緊急時の避難に対する支障が懸念されていた。そこで、UHF帯ICタグによる不適切駐輪管理システムの導入によって課題解決を目指した。
 同システムは学生番号バーコード付きUHF自転車管理タグを自転車利用の学生全員に配布し、自転車へ貼り付けるように義務化。学生課の職員がUHF対応ハンディターミナルを携帯しながら構内を巡回し、自転車情報を収集。不適切駐輪の該当自転車や卒業生等による放置自転車、盗難届が提出されている自転車等を管理パソコンが自動分類し、該当する学生に自動メールを配信する。これにより、駐輪マナーの向上に繋がる等、多くの導入効果が得られ、受賞に繋がった。




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