不動産トピックス

今週の一冊

2015.05.11 11:06

「建築と不動産」が連携してこそ顧客利益が獲得できる

建築と不動産のあいだ そこにある価値を見つける不動産思考術
著者:高橋 寿太郎
出版:学芸出版社
発行:平成27年5月1日
価格:2200円(税別)

 土地を取得し、戸建住宅やビルを建築する。日常的に行われている不動産取引の現場においてクライアントの利益を最大限確保できているかといえば、実はそうでもない。本書のタイトル「建築と不動産のあいだ」が指摘するように、建物を設計する建築分野と土地取得をサポートする不動産(仲介分野)に存在する深くて大きな「溝」が存在し、これによりクライアントに最大限の利益を還元できていないのが現状だと喝破する。著者である高橋寿太郎氏は不動産コンサル会社「創造系不動産」の代表として不動産分野に精通しながら、元々は一級建築士として建築分野で活躍した異色の人物。2つの業界を知る高橋氏だからこそ気付けたのが「建築と不動産のあいだの世界」ともいえるだろう。
 この近くて遠い「建築と不動産」の問題をいかに解決するのか。高橋氏が提唱するのは「建築と不動産のあいだを追究する」こと。これまでの商慣習にならい、不動産仲介と建築を縦割りで捉えるのではなく、両社とクライアントが密接に繋がることで顧客利益の最大化を実現することに繋がると説く。高橋氏が実践しているのはごく単純。建築家に土地案内の同行を依頼するというもの。土地案内に際して建築家に協力を仰ぎ、自分が気付かない部分も現地で考えてもらい、自分は権利関係や相場感や不動産に関わる部分に集中するという適材適所なフォーメーションを構築する。高橋氏が実際に手掛けた6つのケーススタディをご覧いただけば、その効果は一目瞭然だ。




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