不動産トピックス

不動産ソリューションフェア人気セミナー紙上再現

2015.11.30 17:29

 2日間で70を超えるセミナー・パネルディスカッションをお届けした「第17回不動産ソリューションフェア」。今号も特に注目度の高いセミナーから、当日の様子を再現記事としてお伝えする。紙面を通じ、熱気に包まれたセミナー会場の雰囲気を体感して頂きたい。

記録した映像を分析・活用し新しい価値を与える監視カメラシステム
テーマ・新時代の施設運営に求められるセキュリティについて~クラウド型映像監視ソリューションのご紹介~

分散型クラウド技術の活用で低コスト・セキュリティ向上を両立
 「セキュリティ」は単に各施設の運営に留まる問題ではなく、社会全体の「安心・安全」のために何をすべきか、我々はここにも自らが果たすべき社会的責任があるものと考えています。本日はこの、セキュリティ向上に貢献する監視カメラシステムの在り方と我々が提供するソリューションについてお話しさせて頂きます。
 三井不動産でも監視カメラを約3万台使用しており、年間の運営コスト・新設コストとして億単位の投資を行っているように、監視カメラ自体は世の中で一般的なものになっています。しかし、多くの場合、監視カメラが記録する監視映像はほとんど使われていないというのが実情です。
 三井不動産は、自社で取り組んでいるベンチャー企業育成支援を通じて知り合ったクリューシステムズ社が非常に優秀な技術を有していることに着目し、同社に対して出資するとともに、人材を派遣して同社のセキュリティシステムを広める活動を展開しています。
 もちろん、導入するのは三井不動産の施設だけではありません。この革新的なセキュリティシステムを広く多くの皆様に使用していただくことを通じて、「安心・安全」の更なる向上という社会全体の課題を解決することを目指しているのです。
 クリューシステムズは平成20年(2008年)に設立し、現在の社員数は12名。実績としては、自動車などの移動体に通信システムを組み合わせてリアルタイムに情報サービスを提供する動画テレマティクスと、鉄道の踏切や高速道路、三井不動産のオフィスビル・商業施設・住宅・物流施設などで導入されている監視カメラです。三井不動産が霞が関ビルで運営するベンチャーインキュベーション施設「LIAISON-STAGE霞が関」に平成25年(2013年)に入居した後、翌年から三井不動産による出資が開始されました。代表の平山勝彦は大手電子部品メーカーを経て、12年ほど米国・シリコンバレーでアップル社の動画配信技術の開発に携わり、平成21年(2009年)にクリューシステムズの代表取締役社長に就任しました。
 ここからは監視カメラの現状についてお話し致します。監視カメラの多くは、30万画素レベルの画質が粗いアナログカメラで、中には故障したまま威嚇用として放置されているカメラもあります。つまり、事件や事故が起きた後の確認用に使用するのみで、監視映像を有効活用するという発想がほぼないというのが現状なのです。今回のセミナーでは、監視カメラで記録した映像を、いかに有効に活用していくかを主なテーマとさせて頂きたいと思います。
 「映像に新しい価値を与える」として、記録して消去するだけのこれまでの監視カメラの利用から、記録した映像の分析・活用をクリューシステムズでは考えています。
従来の監視カメラの機能は、人間に例えると「目」の役割しか担っておりませんでした。
 そこに、覚える・考える・判断するといった役割を持つ「脳」の機能を付加し、犯罪や事故を未然に防いで社会に貢献する監視カメラの開発に取り組んでいます。
 監視カメラの市場は、矢野経済研究所の公表データによれば3年後の平成30年(2018年)には世界で年間4000万台もの監視カメラが販売されると予測されています。日本では平成27年(2015年)から平成30年(2018年)にかけて、監視カメラは137万台から235万台に年間の販売台数が増加するものと見られています。デジタルカメラ(IPカメラ)に限定しますと、平成27年(2015年)で95万台だった国内の販売台数が平成30年(2018年)には200万台にのぼると予測されています。ある企業の発表によりますと、世界の監視カメラの市場規模は周辺機器も含めますと1兆6000億円で、今後4年間でこの市場規模は約2倍の3兆円になるといわれています。
 施設内で構築された監視カメラシステムは、映像を施設の外で利用したり、他の施設の情報を照らし合わせて分析するといった活用が行われておりません。遠隔地からの確認が必要な場合においては、ウェブカメラが主に用いられています。しかし、ウェブカメラはセキュリティの脆弱性という問題があります。家庭に安価なウェブカメラを設置した場合に、ハッキングの被害を受け世界中に室内の様子が配信されてしまうということも考えられます。また、ウェブカメラで撮影した映像は安定性にも不安があります。ウェブカメラの映像は通信環境に大きく左右されるためです。そして、ウェブカメラの多くは録画機能が搭載されておりません。つまり、業務用の監視カメラとしてはウェブカメラの活用は適当とは言い難い状況なのです。
 従来の監視カメラは、撮影するだけの機能しかなく、映像分析の機能を持った高性能な監視カメラシステムには高額な投資が必要であり、決められた場所でしか撮影ができず記録した映像を活用しにくいといった課題がありました。これに対してクリューシステムズでは、新しい映像監視システムを提案したいと考えています。そこでポイントとなるのが、「分散型クラウド技術」です。新しいクラウド技術と高性能カメラを組み合わせ、精度の高い映像分析の実現が可能となりました。監視映像をクラウド化することのメリットとして、まず遠隔監視に適しているという点が挙げられます。遠隔地の映像を複数箇所から同時にアクセスしても、スムーズに映像を見ることができます。また、本社や防災センターでの一括監視でコストを大きく抑えることが可能です。そして複数箇所から得られる映像データを統合・蓄積し、分析することができます。このデータを活用して、業務品質の向上やサービスの改善につなげることもできるのです。
 ところが、クラウドカメラは現状ではほとんど普及しておりません。現状のクラウドカメラは現場にハードディスクを設置する必要がないこというメリットはあるものの、画質は低くサービス料金も非常に高額であるというのが実態です。これに対してクリューシステムズが開発した新型クラウド「SeeIT(シーイット)」は、高画質映像データをインターネット上で扱うコストを大幅に削減できる技術です。従来のクラウドは撮影した映像をそのまま全てクラウドに送信していました。分散型の新型クラウド「SeeIT」は、クラウドをデータセンターだけではなく、現場までクラウドとしてしまうという考え方に基づいています。データを現場に蓄積しながら、必要な時だけデータセンターに送信することで通信コスト等を大幅に削減することが可能です。従来のクラウドでは100万画素で毎秒1コマ程度の映像データしか送信できないサービスでもカメラ1台あたり月5000円程度していましたが、「SeeIT」では100万画素で毎秒5コマ程度の映像データを送信するサービスをカメラ1台あたり月1000円程度で提供しており、他社と比較して大幅なコスト削減に寄与します。映像のセキュリティ体制につきましては、従来の暗号化技術に加えて独自の暗号技術を使用し、一般回線でも高いセキュリティを保つことができます。
 クラウドを利用しての映像分析の事例としては、ナンバープレートの判別など様々な場面で存在します。オフィスビルや商業施設で導入される従来システムの多くは専用のシステム構築をすることから、導入するだけでも数百万、工事費も含めれば1000万円を超えてしまうこともあります。クラウドを利用すれば、これらの映像分析システムを「所有」から「利用」に形態を変えることができます。クラウドを利用しての監視カメラシステムは、インフラ監視に活用される事例が増えています。例えば、ある吊り橋に監視カメラシステムを用いて損耗状況の把握に努めたところ、これまで確認ができなかった箇所にもカメラを移動させ映像を記録することができ、吊り橋の損耗状況を正確に把握することができました。こうしてきめ細かい監視で小さな傷などを発見できることから、将来の重大な欠陥に発展する前の段階で対策を立てることが可能となりました。また、鉄道の踏切には一般的に障害物検知装置が設置されているのですが、障害物を検知してもその多くは事故ではなく、係員が現場に駆け付けても何も起こっていないというのが実態です。この検知装置と監視カメラを一体的に運用し、障害物を検知した際に映像も監視者に送信することで、より正確に現場の状況を知らせることができるのです。この他にも、地滑りやがけ崩れなどの自然災害を未然に察知するための定点観測、農作物の育成状況をセンサーで温度・湿度を確認するだけでなく、異常があれば映像を伴ったデータを遠隔地でも確認できる活用法もあります。
 クリューシステムズでは、従来は非常に高額で導入に大きな負担が必要となっていたクラウドカメラを、安価に導入して頂くという考えのもと、商品の提供を行っています。様々なメーカーの監視カメラとも組み合せることが可能なクラウドシステムを当社では開発し、柔軟な対応でクラウド型の映像監視システムを皆様にご提案致します。
 我々は自社関連施設にこのシステムを導入するに留まらず、広く多くの皆様にこれを利用していただくこと目指しています。このシステムの普及を通じて新時代に即した社会全体の「安心・安全」を実現していくことが、社会的に大きな意義があることだと考えているのです。
 今回ご紹介したクリューシステムズのサービスや商品について詳しくご紹介しているプレゼンテーションルームを、東京・霞が関の「東京倶楽部ビルディング」内に設けておりますので、是非足をお運び頂ければと思います。 




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