不動産トピックス
不動産ソリューションフェア人気セミナー紙上再現
2015.12.21 12:49
今回のセミナー再現は公認会計士による不動産投資における税務面でのポイントとマイナンバー制度についての詳細な内容と不動産取引における注意点と対策。さらにはやり手の不動産投資家たちのパネルディスカッションと内容の濃い講演内容を紙上で再現する。
テーマ・海外投資家が国内不動産を購入する際の税務面でのメリット
個人・法人で異なる損益通算の概念に注意
株式・リート・現物不動産それぞれが持つ一長一短
日本国内の不動産への投資について、国内投資家・海外投資家それぞれの目的からお話しします。国内投資家の主な目的としてまず挙げられるのがキャピタルゲインです。東京五輪に向け不動産価格の上昇が見込めるとお考えの方が多いかと思います。また、相続対策として不動産を購入されるケースも特に近年は増えています。一方、海外投資家のニーズとして多いのが、まずは安全資産への振り替えです。特にアジア圏が当てはまるのではないかと思いますが、本国より日本の方が安全と考え資産を移すという目的が挙げられます。2点目は実需として、投資家自身が購入した不動産を活用するケースもよく見られます。そして3点目はインカムゲインです。現状では国内投資家と海外投資家で不動産投資の目的が異なっているのです。利回りはエリアや築年数によって前後しますが、現状では東京のある程度の好立地で築浅物件の場合、3~4%程度で推移しています。築年数が経過してくると、更に利回りが低下するような相場観にあるといえます。そもそも利回りを考える際に、新築で購入した物件がそのままの利回りを維持し続けるかといえば、そうではありません。各種データをもとに分析しますと、ここ20年間の平均では新築物件は年1%ずつ賃料が低下していきます。これを考慮した上で、将来的な利回りの見通しを分析する必要があるのです。実需目的で利回り3%の新築マンションを購入した場合、利回り5%の投資用マンションを購入した場合、築10年ですが利回り7%の物件を購入した場合、この3つのケースを例にそれぞれの収入の違いを比較したいと思います。購入から40年後、利回り3%の物件は概ね投資した金額分の収入しか得ることができません。利回り5%の物件と7%の物件については、ある程度賃料が低下したとしても、投資金額に対してそれぞれ170%・190%という収入が期待できます。また、長期保有を行う際には大規模修繕がいずれかのタイミングで必要となり、これに伴って利回りも下がってしまいます。これらのポイントを踏まえた上での投資が大前提となります。次に、海外投資家から見た場合の資産としての不動産の特徴についてご説明します。上場企業の株式の場合であれば、値上がりした際のキャピタルゲイン狙いが投資の主な目的となります。現状で上場企業の配当収入として期待できる利回りは3%程度であり、時価の変動によっては資産が大きく増減することになります。一方、不動産投資におけるインカムゲインの水準は3~5%で取引が行われています。時価の変動は以前に比べ穏やかに推移していることから、不動産の時価が急激に乱高下するような市場環境ではありません。流動性・処分性については、不動産の場合ある程度の時間を要します。一方、上場企業の株式は即時売却も可能で、この点においては株式が優れているといえます。次に、東証の上場銘柄の平均値とリートの株式、そして不動産の価格指数の推移を比較して見てみます。平成20年(2008年)4月の数値を100とした場合のそれぞれの数値の変遷を見ると、株価はリーマンショック後に大きく下落しています。しかし、不動産価格についてはリーマンショックの前後でも株価程の大きな変化は起きていません。特に、実需で購入するタイプの不動産については、ほとんど動きがありません。実物不動産への投資とリートを比較してみると、どちらもキャピタルゲインを考慮しなければ安定的な賃料収入や配当収入が期待できます。現状の不動産投資市場は新築物件であれば利回りは3~5%、高くても7%前後の状況にあります。かたやリート市場は利回りが2%後半から5%の間で推移しています。このことから、現物の新築物件への投資とリートへの投資は利回りがほぼ変わらない状況であることが分かります。時価の変動という点では、リートは上場していますので株式相場の影響を受ける一方、現物不動産はその影響が軽微であることが、異なる点といえます。処分性は株式との比較と同様、リートの方が処分性において勝っています。海外投資家から見た場合、現物不動産への投資のニーズがあるものの、利回りはリートとほぼ変わらず、しかもリートは処分性に優れている点を考慮した上で、現物不動産への投資を検討しなければなりません。海外投資家が日本国内の不動産を購入するにあたっては、自国の不動産との比較を必ず行います。日本と日本以外のアジアの先進国、その他のアジア諸国をそれぞれ比較すると、日本を含む先進国はカントリーリスクが低いという特徴があります。利回りで比較すると、日本は決して高いといえる環境ではなく、日本以外の先進国、例えばシンガポールは日本よりも不動産価格が高く利回りが低い状況です。他のアジア諸国は概ね日本よりも高い利回りで推移しています。日本よりも利回りが低いシンガポールや香港といった、早くから経済発展を遂げてきたエリアの投資家から見れば、日本の不動産はカントリーリスクが少なく、自国よりも高い利回りが見込めると魅力的に映るのです。税金という観点から話を進めますと、日本の税制上、法人はいかなる所得でも合算して申告することから、損益通算という概念が存在します。一方、個人では不動産から発生する所得も含め損益通算ができる範囲・できない範囲が存在します。基本的に個人は株式の譲渡所得の損益通算ができません。不動産の譲渡所得についても損益通算ができず、注意が必要です。仮に個人で事業所得がプラス、株式の売却損が出た場合、損益通算の対象とならないことから税金がかかってしまうのです。こうした考え方は日本での居住・非居住に関わらず当てはまるため、この概念を十分に理解する必要があるでしょう。
テーマ・不動産・建築取引に関わるマイナンバー対策 不動産オーナー・不動産事業者が注意するポイント
マイナンバーの目的は「公平・公平な社会の実現」、「行政の効率化」、「国民の利便性の向上」v
番号を適切に管理し情報漏洩に努める必要がある
今回のセミナーはマイナンバー制度と不動産取引について説明したいと思います。そもそもマイナンバー制度とはどういうものか。一言でいうと「インフラ」ということになります。その中で大きく分けると3つの目的があります。まず1つ目は「公平・公正な社会の実現」、2つ目が「行政の効率化」、3つ目が「国民の利便性の向上」、という3つを目的に設計されています。まず、「公平・公正な社会の実現」というのは税金や社会保障などの問題になっている不正受給を防止するというものです。本当に必要な人に必要な資源がきちんと分配、配布される必要があるということです。これを行うために個人でやるのは限界があります。同姓同名の方などに対して需給する場合、行政側で非常に混乱が起きやすいです。例えば、税金などにおいて正しく納税されているにも関わらず差し押さえしてしまうという例もあります。それに付随して「行政の効率化」という点でも関わることです。1人1番号という形で管理されるため、間違いなどが起こりにくく、効率化が図れるということになります。では、国民にとってどういった点で便利になるかというと、給付金などを受給する際に書類を税務署や社会保険事務所などにいき、数多く揃える必要があったのですが、マイナンバーのカードと免許証などの身分を証明できるものと必要書類に記入するだけで給付してもらえるようになるなど、書類を揃える手間が大幅に削減できるのがマイナンバー制度のメリットといえます。仕組みとしては3つの仕組みからできています。1つ目は付番、2つ目は情報連携、3つ目は本人確認からなっています。付番は個人の基本情報となる「氏名、住所、性別、生年月日」の4つと新たに与えられる番号が連動することによってマイナンバー制度が機能していきます。この付番によって連携されることが情報連携となります。それにより役所などでの横の連携ができます。しかし、その際に付番だけではわからなくなってしまう可能性やなりすましを防止するために本人確認をすることで整合性をとります。ただ、現状において3年の間は社会保障、税、災害対策。この3つでしかマイナンバーを活用することはできません。それ以降は口座の開設などができる予定です。次に個人番号の説明をします。個人番号というのは1人1番号12桁を付番されることをいいます。原則として、一度付番されたら変更はできません。しかし、悪用される恐れがある場合には変更することができます。番号はどのようにして通知されるのかという点は、今年の10月5日に住所を有する人に簡易書留で送付されています。その後、通知カードというものが発行されます。そこに先に述べた「氏名、住所、性別、生年月日」の4つの情報と個人番号が記載されています。この通知カードだけでは使うことができません。免許証などの本人確認がとれるものと一緒に使わないとマイナンバーを使ったサービスを活用することはできません。来年1月1日より「個人番号カード」というものを無償で交付する予定になっています。こちらは任意なものです。「個人番号カード」は顔写真がつき、ICチップも搭載されます。住基カードと似たようなものとなります。それにより住基カードは今後10年間あるいは有効期限がくるまで使うことができますが平成28年1月1日以降は発行されません。カードの受け取りに関しては非常に重要なものなので取りに行く必要があります。その際、通知カードと引き換えに「個人番号カード」を取得するという流れになります。では、そもそもマイナンバー制度とはどのようなものかという点です。個人情報保護法に特別法の中に番号法というものがあります。それがマイナンバー制度の法律になります。この番号法に違反すると重い罰則があります。また、マイナポータルというサービスも実施されます。これは自身の番号がいつどこで使われたかを記録され、閲覧できるシステムです。では、このマイナンバー制度が不動産にどのような形で影響がでてくるかということを説明します。例えば不動産取引を行う場合です。売主や貸主は支払調書などにマイナンバーを記入する必要がでてくると思われます。個人事業主の方には影響がある部分だと思います。次にマイナンバーを適切に管理するためにはどうしたらよいのか。買主などの相手側からマイナンバーを預かった場合、きちんと管理する必要があります。また、マイナンバーと本人がきちんと合致しているかという点も相手から確認を取ることが必要となります。それに加えて不要になったら適切に廃棄処理するなど安全管理の措置をきちんと行う必要があります。漏えいしないためにも各事業体においてルールを作る必要もあります。また、施錠やデータ管理にはパスワードを導入するなど、物理的な安全措置もそれらに含まれます。最後に番号の保管ですが、「最終的に廃棄をする」という前提で保管をする必要があります。このような部分に注意してマイナンバーを今後活用していただければと思います。ご清聴ありがとうございました。