不動産トピックス
クローズアップ 民泊編
2016.03.14 17:21
訪日観光客の増加に伴って空室活用のひとつのメニューとして民泊はポイントになりつつある。しかしながらまだまだ課題があることも事実であり、オーナー側の視線も半信半疑。ここではより適切な民泊に向けた取り組みを行う事業者に焦点を当てそのサービスを追った。
bnbstation 安全確保と観光案内を目的に店舗展開へ
bnbstation(東京都渋谷区)は民泊運営者に代わって対面で宿泊者の本人確認や鍵の受け渡し、宿泊者台帳整備を行う「bnbstation店舗」を渋谷、京都、博多に今月3日にオープンした。
民泊においては宿泊予約者と施設提供者が対面することなく宿泊するケースが多く、安全面での指摘がある。また、一部民泊サイトでは本人確認書類の提出も行われているが、宿泊予約者と実際の宿泊者が異なっていても判別ができない。そこで同社ではそのような安全面等を解決するため、駅徒歩5分以内の立地に「bnbstation店舗」を設置。民泊運営者に代わって宿泊者の本人確認・鍵の受け渡し・宿泊者名簿の整備を行うとともに、クロークサービスや観光案内、緊急時での宿泊者への一斉配信など、民泊利用者へ様々なサービスを提供する。
スペースエージェント 「民泊物件.com」を3月下旬にリリース
オーナーに安心を届ける取り組みも視野に
急成長している民泊業界の中で、民泊ホストになることを希望している人が多い。しかしながら、民泊許可物件は非常に少なく、需要過多の状況が続いている。
そのなかでスペースエージェント(東京都港区)では今月2日、民泊事業主が民泊可能物件を探す不動産ポータルサイト「民泊物件.com」を3月下旬にリリースすると発表した。同社代表取締役の出光宗一郎氏は「昨年にテストリリースした際に、民泊ホスト希望者から非常に多くの反響を頂きまして一時的に登録を停止しておりました。今回、正式リリースに向けた発表を通じて、民泊の更なる活性化と民泊可能物件を普及していくことでこの業界の適切な発展に寄与していきたいと考えております」と話す。
同社のサイトの仕組みは、民泊事業を行いたいホスト希望者が登録し、掲載されている物件情報を閲覧する。物件については、オーナー側が民泊利用を許可したものが不動産管理会社を介して登録される。「テストリリース時には1000人以上のホスト希望者の登録があり、物件提供者である不動産会社は24店の登録がございました」と語る出光氏。高まる民泊需要に対して、物件供給者側となるオーナーはどのような動きを示しているのだろうか。出光氏は次のように語る。
「民泊に関してはオーナー・管理会社ともに悪いイメージが先行しており、需要過多の状況にあります。しかしながら、オーナー側の利点として、築年数に応じた賃料低下がないこと、住居としては集客の難しい空室が民泊事業主であれば集客できる可能性があること等が挙げられます。民泊利用を前提に、相場よりも高い賃料で借りてもらえるケースも多いので、オーナーとしてもメリットがあるものではないでしょうか」
また同サイトでは将来的に、ホストに対するオーナー側のレビュー機能もつけていきたい考えだ。そのようにすることによって、悪質な民泊ホストから物件を守り、民泊業界全体の質を上げていくことが可能となる。同社ではオーナー側が安心して民泊・転貸可能物件を貸し出せるよう、仕組みづくりを進めている。
ITカウンティング 民泊用タブレット「Airlet(エアレット)」提供開始
業界の課題解決に貢献
ITアカウンティング(横浜市神奈川区)では先月16日、民泊事業者向けにホストとゲストをつなぐコミュニケーションツールとしてのタブレット「Airlet(エアレット)」を3月より基本料金月1万8000円(税別)~(プランによる)の定額でサービスを行うことを発表した。同社では同サービスと付随してポータブルwi―fiの期間限定無償サービスも行っている。これまで民泊ホストとゲストの間でのコミュニケーションが希薄だったのを改善して、安全安心な民泊事業と、よりゲストへのおもてなしを促していくことを同社では考えている。
代表取締役の宮嵜雄仁氏は3つの課題を指摘する。
「第一に無人運営であること。この課題を解決しないことにはセキュリティ面での懸念や、ホストの物件での使用法に対して効果のある注意喚起はできません。書類だけでなく、Airletを通じて宿泊のルールなどを伝えていくことで物件の適切な利用方法などを正確に伝えていくことができます。第二に現在の民泊が宿泊仲介サイトについて『Airbnb』に依存しているということです。これからはそれ以外への波及力も強化する必要があると思います。第三に収益が宿泊料だけしかないということです。現在でも民泊は競争が厳しくなっていますが、今後更に激しくなることが見込まれるなかでホテル旅館のような物販収益やレストラン収益などの収益源の多様化を模索する必要があり、宿泊料だけではない、収益源の確保が必要となってきます」
これらにも対応するのが「Airlet(エアレット)」だ。同タブレットではネット回線を利用して電話方式で24時間コールセンターとつなぎ、ゲストのコミュニケーションが可能。そのため、第一の課題に対して、対面までは難しくとも、より有効な意思疎通を図ることができ、さらにチェックイン時の本人確認機能も備えている。またトラブル時の対応についても、運営代行会社と連携して対応することによって、ホストが対応できない時間帯でも対処できるように他社と連携模索する。このような基本的機能に加えて同タブレットにゲストノート機能を搭載する予定だ。
「『Airbnb』以外への訴求力の強化ということで、同製品ではゲストノートに記載されたゲスト側の感想をFacebookに連携投稿することで世界中のゲストに対して民泊選択の判断となる指標を提示していきます。『おもてなし』を重要視するなかで、民泊はまだまだハコ貸しの域を出ておりません。ゲスト側の感想が民泊選択の基準となることで、よりサービスの拡充が図られていくのではないでしょうか。これは第三の課題とも関係しておりまして、収益源の多様化に対しては民泊物件の広告化です。パッケージ化された旅行ではなく、たとえば相撲部屋への見学ツアーなどは外国人観光客の方には大きな人気があります。BOJ(東京都中央区)と提携することにより、同社が主催するこのようなツアーや和食店の情報についてタブレット内に『オススメ』として表示することで、ゲストにより訪日観光を楽しんでもらえることをホストの側からアプローチすることができ、さらには実績に応じてホスト側への広告収益の配賦も予定しております。競争が激しくなる民泊事業の将来を見据え、ホストとなる外国人観光客の方のリピーターを得るためにも必要なのではないでしょうか」(宮嵜氏)
「近日中にAirletのホームページを開設予定です。詳細な製品情報を発信しておりますので是非ご覧下さい」と宮嵜氏は話す。より良い民泊を進めていくためにも見逃すことはできない。