不動産トピックス

クローズアップ 緑化編

2016.04.11 12:50

 都市のヒートアイランド現象の抑制効果はもちろんのこと、建物への付加価値も期待できる緑化。一方イニシャルコストの問題やメンテナンスの問題から導入には二の足を踏んでいるオーナーも多いのではないだろうか。今回は最新の緑化に取り組んでいる企業を紹介していく。

東邦レオ デザイン性の高い緑化を低コストで展開
 屋上緑化・壁面緑化資材の開発を行う東邦レオ(大阪市中央区)が展開する既存建築物の壁面の緑化工法「グリーンファサードシリーズ」はデザインからメンテナンスまでを一括で提案しているため、低コストで緑化を行うことが可能。
 同社の壁面緑化の特徴は省スペースでも高密度の壁面緑化を表現でき、目立つビルを表現することができる。予算や意匠に合わせた壁面緑化をポット式、プランター式、ワイヤー式などから選ぶことができるため、自由にデザインを設定でき、従来よりも軽量かつ低コストで緑化をすることを可能としている。またメンテナンスまでを一括で行っているため、壁面緑化に関する豊富なノウハウを蓄積していることで、オーナーの要望に合った緑化を提案できる。
 工法には専用のフレームを組み立てて、植物と土壌が入っている「ピクセルポット」を横向けにはめ込むことで壁面の緑化を行う「ピクセル」。季節ごとに植物の種類やレイアウトを変更することができるほか、ロゴなどをデザインに取り入れることも可能な自由度の高い壁面緑化を演出することが可能。「ピクセル」よりも間隔を空けてポットを配置する「ピクセルライト」は初期費用を2割程度削減可能。隙間によって植物が成長する余地がある。植物とプランター、ワイヤーを組み合わせることで多様なグリーンアレンジが行える「モコ」の3種類がある。
 タイマーによる自動灌水により毎日決められた時間に植物に水を与えるため、水撒きの必要もなく、毎月点検作業から、年4回ほどの剪定作業や施肥、消毒、補植作業まで提供しているためオーナー自身が特別なメンテナンスを行う必要はない。  緑化関連事業部の小松春奈氏は「当社の壁面緑化事業はデザインも含めた設置工事からメンテナンスといったアフターフォローまで展開しています。壁面緑化と聞くと、ビルの壁面全体を緑化するイメージがありますが、初期投資や管理コストの面で難しいところがあります。当社の壁面緑化は保有しているビルに合わせた壁面緑化を提案することで、中小のオーナーが導入しやすいようにしました。壁面緑化のメリットとしては、緑化することによって目につきやすくなるため、商業ビルにおいては集客効果を期待できます。テナントビルでは注目を集めるステイタスになるほか、名刺代わりにもなります。当社の『東邦レオ支社ビル』でも壁面緑化を施していますが、社外や地域の人から緑化について聞かれることもあります。緑化のメリットは知名度の向上や入居率の上昇につながることだと思います」と語る。
 緑化することによるシンボル化のほか、照り返しの防止や二酸化炭素の減少といった環境対策の部分やリラックス効果をもたらすといったメリットもある。
 「1つのビルだけではなく、ネットワークを組んで緑化を行っていきたいと考えています。オーナーが保有している建築物はもちろんのこと、エリア全体を彩ることによって都市全体の価値を向上させる提案をこれからも行っていきたいと考えています」(小松氏)
 「グリーンファサードシリーズ」はビルの入り口などの小規模な場合だと、1㎡あたり20万から。要望に合う植物デザインを行う費用も含まれている。


大和ハウス工業/大和リース コンパクトな壁面緑化システムを開発
 大和ハウス工業(大阪市北区)と大和リース(大阪市中央区)は共同で「大気浄化壁面緑化システム」を開発した。
 同システムは壁面に土壌層を設け、汚染された空気をファンで吸い込み、汚染物質を土壌層に吸着させ植物や土壌の微生物により二酸化窒素やPM2・5などを分解・浄化させる。
 これまでの土壌層を利用した浄化システムは広い敷地を必要としていたが、必要建築面積を従来の約5分の1にコンパクトにした。都市部の幹線道路沿いの立体駐車場や物流施設、工場、商業施設、オフィスビルへの設置が容易となった。
 電気代・灌水代・メンテナンスコストなどでm2あたり年間4000円。


屋上開発研究会 従来よりも一歩進んだ緑化を提案
 NPO法人屋上開発研究会(東京都千代田区)では屋上を活用した建物の付加価値の向上のための調査研究や情報の提供を行っている。最近では屋上の緑化だけではなく、壁面緑化など建物全体や都市の緑化についても調査研究を行っている。  副運営委員長事業企画部会長の松本薫氏は屋上緑化について「当研究会では建物の付加価値の向上や都市景観の改善、環境貢献などを主な目的としてさまざまな調査研究・開発や啓発情報発信などを行っています。最近は屋上緑化や壁面緑化など建築緑化に重点を置いて活動してきました。平成21年に都市の空間を利用して菜園をつくるという農水省の事業に注目して、屋上等を利用した農園や菜園について研究しています。屋上は荷重の問題や空調機が置かれていることから、あまり広く活用することは難しいですが、これからも注目していくつもりです。屋上緑化のメリットですが、ビルの屋上のスペース貸しは難しいので、付加価値向上としてはリラックスやコミュニケーションをとれる福利施設やコミュニティスペースにすることによって、働いている社員間の風通しを良くすることができます。一方で、風対策や重量の問題もほかにオーナー目線からすると屋上に投資するメリットを感じないということがあります。近年ではビルの中に不特定多数の人が入ってくると、セキュリティの問題が起こります。ICカードによるロックといった出入り口の工夫も屋上を活用するためには必要となってくるのではないでしょうか。以前はただ緑化するというケースが多かったのですが、最近では休憩スペース等をプラスした導入が見られるようになってきています。その他には貸し菜園を設置しているビルもあります。ただ緑化するのではなく、コミュニティスペースやリフレッシュスペースと併用することによってより効果的な屋上活用が可能となります。これからの屋上活用ですが、緑化だけではなく、農園やバーベキューといったコミュニティスペース、商業施設ではフットサルだけでなくさまざまなスポーツや話題性のある集客の場として活用する企業やオーナーもでてくると予想しています」と語ってくれた。




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