不動産トピックス
クローズアップ 自動販売機編
2016.05.16 14:24
自動販売機はテナントや利用者へのサービスとしてビルにとって非常に有益な設備と言えるだろう。今回は単に飲料を販売するだけではなく、多様な商品を取り扱ったり販売以外の付加機能を持った自動販売機を紹介する。
ファミリーマート 自販機型コンビニ「ASD」コンビニと同じ商品を身近な自動販売機で購入可能に
ファミリーマート(東京都豊島区)は自販機型コンビニ「ASD(オートマチック・スーパー・デリス)」を一都三県や京阪神、愛知県、福岡県を中心に提供している。同事業は平成22年に合併したエーエム・ピーエム・ジャパンが平成17年から展開していたものを引き継いだサービス。オフィスビルや工場、商業施設のバックヤードなどに導入されており、現在の導入実績は約1300企業・約1800台となっている。設置場所の7~8割はオフィスビルであり、実際に利用する入居テナントからの要望だけではなくビルオーナーから要望を受けて設置に至ったケースもある。
「セキュリティの高度化やビルの高層化によるオフィスへの出入りが面倒になったというワーカーの声や、業務の効率化や食堂・売店の廃止による経費削減を望む経営者の要望、また災害への備蓄や帰宅困難者対応などの意見がここ10年ほどで強まってきております。それに対して通常のコンビニ店舗の出店が困難な場所に対して手軽に簡単に時間をかけずに利用できる食環境を整備するための手段として開発されたのが『ASD』です」(開発本部法人戦略部ASDグループ 太田 裕資氏)
「ASD」はおむすびや総菜パンなどの保存に適した弱冷温度帯とサンドイッチや総菜、チルド飲料類などの保存に適した冷蔵温度帯といった2温度帯を1台の自動販売機の中で保つことができ、充実した品揃えを実現している。また平成26年からは弁当やパスタなどの大型商品を陳列可能な弁当特化型も開発されている。商品は通常のファミリーマートで販売されているものと同じ商品となっており、3000種類以上ある商品から導入先ごとに最適なラインアップを考えられている。さらに新商品を積極的に投入することで、利用者に飽きさせないような工夫もなされている。商品は1日1回入れ替えが行われるようになっており、入れ替え前に賞味期限が切れてしまう商品があった場合には自動的に販売停止する機能も搭載されている。
「コストの問題で一定以上の利用が見込める場所でないと設置することができないものではありますが、設置条件を満たす場所であれば『ASD』は非常に便利なサービスとなっております」(太田氏)
ビルであれば共用部分などに設置し、テナントへのサービス向上に役立てている事例も存在している。設置に際してオーナーの負担は電気代のみであるため、テナントからの物販サービス導入希望等に手間やコストをかけずに対応ができる。設置条件を満たす物件であれば、魅力的なサービスである。
日本マシンサービス 既存の自販機の付加価値づくりに デジタルサイネージ搭載型自販機
日本マシンサービスは今年1月より自動販売機上部に大型モニターを搭載する「搭載型デジタルサイネージ自販機」の提供を行っている。これは自動販売機に搭載したモニターでコンテンツを放映し広告・広報活動を行うデジタルサイネージシステムである。同社は昨年、商品サンプルの部分をサイネージに置き換えた「デジタルサイネージ自販機」を開発したが、こちらは商品の数が少なくなるため飲料メーカーからは難色を示されていた。そうした声を受けて新たに開発されたのが、「搭載型デジタルサイネージ自販機」である。
その大きな特長としては「既設の自動販売機に搭載可能であること」、「費用負担なしでデジタルサイネージシステムが導入可能であること」の2点を挙げることができる。同サービスは既存の自動販売機の上に取り付けるものであり自動販売機の入れ替えが不要であるため手間をかけずに導入することができる。また機材費を低コストに抑えていることで導入にかかる初期費用および運営費は自動販売機の売上金で賄うことができるように設計されており、自動販売機の設置先としては費用負担なしでデジタルサイネージを導入することができる。デジタルサイネージに表示するコンテンツはSDカード方式とネットワーク方式が選択可能であり、コンテンツの作成は非常に容易であることが特長だ。
またネットワーク方式であれば一元的にスケジュール管理されたコンテンツを複数の自動販売機に配信することが可能となっている。現行モデルは屋内向けのみだが、屋外向けも現在開発中である。
同社は「搭載型デジタルサイネージ自販機」の他にも防犯カメラを搭載した「防犯自販機」、集客・販売促進等に活用できる「ワンドリンク自販機」など自動販売機に様々な付加価値を付け加える技術の開発・提供を行っている。
「以前は自動販売機の設置から飲料の販売まで行っておりましたが、今年から飲料の販売事業を縮小し技術の提供に特化した業態に方針を変換しました。現在は自動販売機を設置しているオーナーからの『技術を利用したい』という声を受けて飲料メーカーと技術導入の交渉を行うという形態で営業しております。飲料メーカーも徐々に当社のサービスの価値を認めてもらってきており、今後販売戦略に活用していこうという計画も進行中です」(代表取締役 片桐 茂夫氏)
既存の自動販売機に新たな機能を付け加えることで設置先の新たな付加価値とすることを可能としつつ、費用をかけずにそれを行うことができる。自動販売機を設置しているビルオーナーにとっては非常に魅力的なサービスだろう。