不動産トピックス

クローズアップ 空き家編

2016.05.30 11:48

 全国で820万戸以上あると言われる空き家。地方だけでなく東京にも多くの空き家がある。全国区の問題に不動産業界はどう対応していくか。

L&F 空き家ビジネスのノウハウを確立 所有者と事業者の信頼を深める新サービス
 「空き家問題」がクローズアップされるなかで、空き家に関わるビジネスが盛んになっている。だが、このビジネスがそもそも新興分野であるために仕組みやノウハウはまだ試行錯誤の段階だ。そのため空き家管理は手間がかかる一方で薄利なために、「こんなはずではなかった」という声もある。
 そのなかで、L&F(千葉市美浜区)では空き家ビジネスを営む事業者が適切に利潤を得られる空き家ビジネスを確立させようと、空き家管理の全国ネットワーク「日本空き家サポート」事業を展開している。代表取締役社長の森久純氏は現在の空き家ビジネスにおける課題について次のように指摘する。
 「現段階においては、空き家管理自体は一定数の管理を受託するまでは十分な利潤を確保するのが難しいという側面があるため、その後の売買など出口のビジネスを絡めることを念頭に取り組んでいく必要があります。しかしながら、そこまでの過程である空き家管理の方法や管理を受託するまでの流れも、これまで不動産事業を営んでいた企業でもわからないケースが少なくありません。空き家管理を増やしたはいいが、途中で挫折するケースもあります」
 ひとつのポイントとなるのは空き家管理をどこまでのレベルで行うかだ。住宅に異常がないかの確認、換気、掃除、庭の整理などは基本。しかしながら、それ以上の建物診断などを行うとなると「空き家管理の手数料を高く設定すれば元はとれますが、あまりに高い空き家管理にニーズはありません。低く設定すれば、管理受託はできますが事業者としては赤字になってしまい、事業継続に支障が生じてしまいます」(森氏)。
 「また空き家所有者の視点で言えば、果たしてそこまでのものを求めているかどうか、サービス過剰ではないのかという疑問もあります。知りたいことは、所有している空き家が何も問題はないか、そして作業員が適切に取り決めた管理業務を実施しているかどうかなのです」(森氏)
 では同社の「日本空き家サポート」加盟業者ではどのようなノウハウを実践しているのだろうか。森氏は「営業ツールをはじめとした空き家管理業立ち上げに必要な全てを提供しています」と話す。
 同社では加盟した企業には、自社ホームページ内に提供する素材を使った空き家管理専用ページ開設を促すとともに、のぼり旗・ポスターなどのあらゆる営業・販促ツールも提供していく。また「日本空き家サポート」ホームページ上から、それぞれの地域に特化した加盟業者(空き家サポーターR)に直接資料請求が行える仕組みにしている。
 「インターネットで空き家事業者を探される方が多いのが現状です。当社では加盟各社にSEO対策などの指導も行います。その効果もあり、加盟各社を利用している所有者の方はインターネットからのお申し込みも増加しています」(森氏)
 そして管理の面では点検や掃除、換気などを重点的に行うとともに、所有者にその作業風景や家の状態を知らせることができるように、クラウド型の顧客管理/空き家管理システム「COADEE(コーディー)」を運用。世界中どこにいてもあらゆる情報端末から、空き家の状態を画像や、更には動画でも確認することができ「レポート紙だけのやり取りに終わらず、所有者と空き家サポーターRの信頼関係醸成に大きく貢献します」(森氏)。また、このレポーティングシステムは所有者が読めば事業者側に既読の通知がいくため、所有者が確実にチェックしているか否かもわかる。
 このようなサービスは事業者からの評価を得ており、昨年7月に事業を開始して以来、全国で51社との提携を結んでいる。この数はさらに伸びていくことが予想される。
 「最近、空き家問題がメディアで取り上げられていくなかで、不動産知識を持たない事業者が空き家管理に参入するケースも多くなりました。が、そんなに簡単ではありません。これまで不動産事業を専らにしてきた会社でも事業継続できないことがあるのですから。また所有者にとっても、このような経験の浅い事業者に依頼することが、ずさんな管理につながるなど、不幸なケースもあります。当社では所有者と事業者の双方にとって適切な空き家管理を行っていただくためのノウハウを提供しています。そのため、加盟事業者にはある程度の実績と経験、ビジョンを持っていることを要求しております。地場の有力事業者がたしかな空き家管理のノウハウをもつことで、所有者にとっては安心して管理を任せることができると思います」(森氏)
 同社では今後も新サービスを発表していく予定だ。ピンチをチャンスに変えていけるか否か、同社の動向に注目だ。


シェアリングテクノロジー 空き家管理プランを一括比較
 シェアリングテクノロジー(名古屋市中区)では空家管理費用一括見積りサイト「空き家管理費用比較君」を展開している。
 多くの事業者が空き家管理に参入するなかで、空き家所有者にとってはサービス内容や費用の比較検討を行いたいというニーズが高い。
 同社のサービスでは独自の審査に合格した全国500社以上の登録会社のなかから、金額や管理内容などの条件に見合った事業者をマッチングすることができる。年間の依頼件数は5000件以上となっている。
 特定空き家になれば除却の対象となる可能性もある。将来的な売却や活用などの選択肢を残しておく意味でも、所有者のニーズにあった管理会社をスムーズに選びたい。 ナビット 利活用促進に向けた空き家調査サービス  ナビット(東京都千代田区)では空き家所有者や利活用を考えている法人および自治体向けに空き家調査のサービスを提供している。空き家は様々な活用方法があるものの、現状どこが空き家かを把握することはできない。そのため、同社が全国5万8100人のSOHO調査員を駆使して、空き家がどこにあるか、状況、また物件の所有者情報を収集する。  同社では全国に多くの調査員を抱えるほか、1200万件の登録がある地番/住所変換辞書や全国47万棟の分譲マンションの家屋番号などを所有している。  これらの情報を活用して迫っている空き家の活用に向けての取り組みを促進していきたい考えだ。




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